なぜ「9回とんで、4回まわる」? 円広志の名曲『夢想花』のストーリー

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きょうは、「このサビ大好き! あなたの名曲リクエスト」にちなみまして、サビが印象的な、円広志さんの曲『夢想花(むそうばな)』の「サビ誕生秘話」をご紹介します。なぜ、サビで「9回とんで、4回まわる」のか? 円さんご本人に伺いました。

なぜ「9回とんで、4回まわる」? 円広志の名曲『夢想花』のストーリー
1978年11月に発売された、円広志さんの代表曲『夢想花』。とくにサビの部分の歌詞「♪とんでとんで……まわってまわって……」というフレーズが印象的で、当時80万枚を売り上げるヒット曲になりました。『夢想花』はポップス調の曲ですが、円さんによると「僕の原点は、ロックなんです」

円さんは大阪の大学で、4人組ロックバンドを結成。自分で曲を書き、リードボーカルを担当。地元のロック音楽祭でも入賞し、アマチュアバンドながら、プロ並みの人気を誇っていました。

「その頃ライヴハウスにもよく出ていたんですが、当時そこでアルバイトをしていたのが、まだ高校生だった世良公則くんです。マイクの調整なんかをやってましたね」

大学卒業後もバンド活動を続けていた円さんですが、次第に「もうこのバンドから得るものは何もない」と思うようになり、メンバーの就職などを機に、77年に解散。ソロ活動を始めます。

「卒業してすぐ、航空会社に勤める嫁と結婚したんですが、その頃は嫁さんに食わせてもらってましたね。ヒマなんで、嫁さんの弁当も作ってました」と言う円さん。

奥さんが働きに行っている間、部屋で1人ギターをかき鳴らす日々が続きましたが、ある日ふと、こう思いました。

「オレ、いつまでこんな生活してるんやろ……さすがに、働かないとあかんよな」

当時24歳。経済的に働かざるを得ない状況に追い込まれて、「もう大好きな音楽ができなくなる!」そう思い、無性にさみしくなった円さんは、ギターを叩きつけるように弾いて、曲を作りました。そのとき浮かんだフレーズが「とんで、とんで……」。円さんは言います。

「『とんで、とんで』は、僕にとっては歌ではなく、音楽との訣別の辛さを一気に吐き出した “心の叫び”だったんです」

曲をデモテープにしてみたら、けっこういい出来になり「これで勝負できる!」と思った円さん。でも、レコード会社にデモテープを送っても、レコード化には至りませんでした。

その頃、ライヴ会場で警備のアルバイトを始めましたが、そのライヴは、当時爆発的な人気を誇っていた「世良公則&ツイスト」の公演でした。「すっかり、立場逆転やな」と思ったとき、後ろから声が。「お前、こんなところで何してるんや?」振り向くと、ツイストを観に来た、知人のヤマハ関係者でした。

「お前、バンドやめて、曲はもう書いてないんか?」「いや、実はいい曲が書けたんです! ぜひ聴いてください!」……円さんはさっそく、デモテープをその関係者に送りました。

すると、こんな反応が……「ええ曲やないか! お前、これでポプコンに出えへんか?」
プロへの登竜門「ヤマハ・ポピュラーソングコンテスト」、通称「ポプコン」。78年秋に出場した円さんは、『夢想花』でグランプリに輝きデビュー。曲は大ヒットとなったのです。

……ところでなぜ、サビで「9回とんで、4回まわる」のか、円さんに伺いました。

「『まわって』が4回なのは、単純に2小節で、キリがいいからです。『とんで』が9回なのは、モヤモヤした心の叫びを息が切れるまで『♪とんでとんで』とひと息で吐き出したときの回数です。僕の肺活量に合わせた数字ですわ(笑)」

八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50

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