報道部畑中デスクの独り言

宇宙開発で気になるニュース相次ぐ

「報道部畑中デスクの独り言」(第90回)では、ニッポン放送報道部畑中デスクが、相次ぐ宇宙開発に関連するニュースについて解説する。

JAXAの記者会見はやや重苦しい雰囲気となった(2018年10月11日撮影)

10月11日は宇宙開発に関するニュースが2本相次いで入ってきました。ともにちょっと心配なニュースです。

まずは日本の探査機「はやぶさ2」、今月下旬に予定されていた小惑星「リュウグウ」の最初の着陸が、来年1月後半以降に延期されました。この日は東京・御茶ノ水にあるJAXA=宇宙航空研究開発機構の東京事務所で記者会見がありました。

前から予定されていたはやぶさ2の途中経過に関する会見で、小欄でもお伝えした探査ロボット「ミネルバ2」、ドイツ・フランスによる着陸機「マスコット」ともに着陸に成功し、いよいよ本体の着陸かという期待感があったのですが…当初予定されていなかった計画責任者の津田雄一プロジェクトマネージャ(以下プロマネ)も出席した会見は、やや重苦しい雰囲気になりました。

着陸機「MASCOT」が撮影したリュウグウの様子(2018年10月3日撮影 MASCOT・DLR・JAXA提供)

「はやぶさ2の実力をもう少し知る必要があるということで、プロジェクトチームとしては立ち止まろうと思う」
小惑星の表面を解析したところ、当初は砂地の上にぼこぼこと岩があると思われていた地面は、実は大小の岩の塊の集合体であることがわかったということです。
「全域にわたってデコボコ。徹底的にデコボコ。歯が立たない」と津田プロマネは話します。

もう少し細かく言えば、100m四方の広さで見た場合、平らな場所がありません。着陸する場所の候補地は大体決まりつつあるのですが、その地点に正確に降りるには…相当に的を絞らないと着陸できないというわけです。
今後、リハーサルを2回行い、どれぐらいの精度ならば着陸地点の的を絞れるか、検討する時間が必要になりました。

探査ロボット「ミネルバ2」が撮影したリュウグウ表面 岩のデコボコが顕著だ(2018年9月23日撮影 JAXA提供)

また、来月11月から12月までは太陽との位置関係から、いったん、はやぶさの通信が途絶えます(「合運用」の期間と呼ばれます)ので、その後のタイミングを測ると、早くとも年明け、1月後半以降ということになるということです。
「いよいよリュウグウが牙をむいてきた。どうやって立ち向かっていくか…意気は上がっている。手ぶらで帰るわけにはいかない」
津田プロマネは改めて着陸・サンプル採取に決意を示し、会見はお開きとなりました。

一方、こちらはもっと衝撃的かもしれません。現地時間の11日、国際宇宙ステーションに向けて打ち上げられたロシアの宇宙船「ソユーズ」で異常が起きました。
中央アジア・カザフスタン、いつもの地点から打ち上げられたおよそ2分後、切り離された1段目のロケットが本体に接触してしまったというのです。幸い、ロシア人とアメリカ人の宇宙飛行士2人は緊急脱出し、けがはありませんでした。ただ、事故原因が究明されるまでソユーズの打ち上げは凍結されることが、ロシアの国営宇宙開発企業「ロスコスモス」から明らかにされています。

これまでソユーズは「枯れた技術」と言われ、安定した飛行実績がありました。成功率は97%以上、すでに引退しているアメリカのスペースシャトルと違い、打ち上げ前後に宇宙飛行士が緊急脱出できる手段があり、安全性・信頼性も高いとされてきました。
実際、今回もトラブルはありましたが、宇宙飛行士は無事脱出して事なきを得ました。過去にもこういった脱出劇は過去およそ50年の間に2回だけということです。

国際宇宙ステーションから離脱したソユーズ宇宙船 金井宣茂宇宙飛行士が搭乗した(2018年6月3日撮影 JAXA・NASA提供)

ただ、現状では国際宇宙ステーションに人を運べるのはこのソユーズだけですから、打ち上げ凍結により、有人飛行の手段が一時的にせよ、失われることになります。いま宇宙ステーションにいる飛行士は、ステーションにドッキングしているソユーズで帰ることができますが、その後どうなるのか…最悪、ステーションが無人状態になる可能性も否定できません。

日本でも野口聡一さんが来年暮れに長期滞在を予定しています。野口さんはアメリカの民間企業「スペースX」などが開発中の新型宇宙船に乗る見込みですが、有人宇宙飛行の計画はソユーズも含めてカリキュラムが組まれています。今後のスケジュールなど有人飛行計画全体への影響が懸念されます。

このところ、ロシアの宇宙技術はトラブルが続いています。今年8月にはステーションにドッキングしているソユーズから空気が漏れたケースが発覚しています。その背景として、20年以上前のソ連崩壊、ロシアの混乱のなかで、技術の継承が行われていなかったり、ひっ迫する財政で宇宙開発部門にお金をかけられなかったこと…そのツケが回ってきたのではないかという指摘もあるのです。

だとすれば、科学技術の成果・結果は、20年、30年の長期的なスパンで形になるという典型ということになります。宇宙開発については各国厳しい財政状況が伝わっていますが、今回の出来事はある意味、科学技術に対して目に見える成果を性急に求める風潮への警鐘と言えるのかもしれません。(了)

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