弟犬を救った兄犬! 西日本豪雨の実話を絵本に残す活動の輪が拡大中

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【ペットと一緒に vol.111】

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岡山県に暮らす元アナウンサー6名が、西日本豪雨で被災したチワワの兄弟犬の実話を、絵本にして残すために立ち上がりました。今回は、そのプロジェクトの代表である江草聡美さんと、チワワの兄弟犬のストーリーをたどります。


必要だから、自分たちで作ろう!

絵本を通して後世の子どもたちに継承していくことの大切さを感じているという、元アナウンサーで、高校生の息子の母親でもある江草聡美さん。同じ志を持つ元アナウンサー仲間とともに、おはなしのWA♪というグループを結成して、これまでに東日本大震災復興支援の朗読会を継続して行ってきました。

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おはなしのWA♪の、2018年3月11日の東日本大震災復興支援の朗読会

「そんななか、私が30年以上暮らしている岡山で、西日本豪雨災害が起きたのです。
私たちの朗読会では、実話をもとにした作品を多く扱ってきました。だからこそ、西日本豪雨災害についても、次世代を担う子どもたちに語り継ぎたいという思いを抱きました。でも、西日本豪雨を題材にした絵本はまだありません」。

どのように朗読会で伝承しようかと悩んでいた矢先、江草さんは行きつけの美容院のオーナーから思わぬ話を聞いたと言います。
「愛犬のチワワが倉敷市真備町の自宅で被災したときの体験談でした。我が家にはペットがいないので、ペットとの被災と避難の大変さを思い知りました」。

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美容院オーナーの愛犬、12歳のミルクくん

ちょうど同じ頃、江草さんのもとに、東京に暮らす愛犬家の友人から「故郷の岡山県の被災ペットの支援をしたい」という相談が寄せられたそうです。
「こうして、偶然のきっかけがそろい、チワワの兄弟犬の実話を絵本にするための、おはなしのWA♪によるクラウドファンディング“Brothers Dog Project”がスタートしたのです。クラウドファンディングに初挑戦したのは、県内にとどまらず、全国の方に西日本豪雨のことを知ってもらえる機会になると考えたからです」と、江草さんは語ります。

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ケージで眠るチョコくんとミルクくん


弟犬を救った兄犬

絵本の主人公となるロングコート・チワワの兄弟犬は、倉敷市真備町で暮らしていました。
2018年7月7日の未明、普段はめったに吠えないチョコくんのただならぬ鳴き声で、おばあちゃんは目が覚めたとか。
「『なんだろう?』と思って、2階から愛犬が寝ている1階に向かおうとすると、階段が数段分、水に浸かっているではありませんか! 私も膝まで水に浸かりながらチョコとミルクのもとへ急ぐと、上下に並べたケージの下段にいたミルクの鼻先だけが、水から出ていました。あと数分遅かったら、ミルクの命はなかったかもしれません。慌てて、2頭をそれぞれトートバッグに入れて2階へ。それでもどんどん水かさが増してくるので、屋根の上に出ました。胸に抱いたチョコのバッグから伝わってきた、心臓のバクバクという鼓動音は今も忘れられません」と、おばあちゃんは江草さんに語ったそうです。

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家正面右上の白いシーツがかかっている場所に避難。落ちないようシーツを握りしめていたそうです

屋根瓦もどんどん水で隠れていくなか、3人と2頭は救助を待ち続けました。
「明け方、『ペットは置いて救助用ボートに乗ってください』というアナウンスが聞こえました。チョコとミルクを置いていくくらいなら、自分だけはここに残ろうと思いましたね。けれども、到着したボートに載っていた消防隊の方が『どうぞ、一緒に』と言ってくれて。屋根に上がってから7時間後、ようやく助かったとほっとしました」(おばあちゃん)。

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屋根の上からの光景。右は一夜明けて


チョコくんが永眠

ところがその後、避難所から移って身を寄せていた親戚宅で、チョコくんは亡くなってしまいました。旅立つ日の朝、いつもは載ろうとしないおばあちゃんの膝の上で、これまでにないくらいチョコくんは甘えたそうです。
「14歳と老齢だったこともありますが、被災生活による極度のストレスも原因になったのではないかと、愛犬家の友人は推測しています。チョコくんはもともと怖がりで、水も苦手だったようですから」と、江草さん。

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水が引いた数日後、1階のケージがあった部屋

兄に命を救ってもらった弟犬のミルクくんは数日間、部屋をぐるぐるとまわってチョコくんを探しているような様子だったと言います。
そんなミルクくんはいま、すこし落ち着いてきて、みなし仮設住宅で新たな生活を始めているそうです。

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9月24日のミルクくん。被災後に少し逆だってしまった毛並みは、洗っても洗ってももとに戻らないそうです

「真備の子どもたちを、気分転換ができる場所に連れて行って一緒に遊ぶというボランティアも、私は、おはなしのWA♪とは違う活動として行っています。そこで感じたのは、目の前にいる子どもたちにはもちろん、さらにその子どもたちにも末永く伝えられるよう、希望を感じさせる絵本に仕上げたいということです」。

今回のプロジェクトで絵本が完成し売上が出た場合は、被災地域のペットを支援している団体などにも寄付されるそうです。

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現在進行中の絵本プロジェクト(※イラストは素材集等から引用した暫定的なもの)

自然災害の大きさや教訓が風化されず継承されていくこと、そしてペットも含めた命の尊さが多くの人に伝わることを、きっと空の上から見守るチョコくんも願っていることでしょう。


■Brothers Dog Projectクラウドファンディング;

https://readyfor.jp/projects/bdp20180707

Facebook: https://www.facebook.com/bdp20180707/

連載情報

ペットと一緒に

ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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