30年前の今日KUWATA BAND「スキップ・ビート」がオリコンチャート1位獲得! 【大人のMusic Calendar】

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今から30年前の1986年8月18日は、KUWATA BANDの「スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)」が、オリコンチャートにおいて1位を記録した日だった。

KUWATA BANDは、サザンオールスターズの桑田佳祐を中心に、河内淳一(ギター)、琢磨仁(ベース)、今野多久郎(パーカッション)、小島良喜(キーボード)、そしてサザンの松田弘(ドラム)で結成され、同86年4月にシングル「BAN BAN BAN」でデビューを飾った。
原由子の産休期間に際し、かねてから英詞によるロックの可能性を追求してみたいと考えていた桑田が発起人となり結成されたバンドだった。

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アルバム『NIPPON NO ROCK BAND』は全曲英詞で、一方シングルの言わばA面曲は全て日本語詞で統一されていた。サザンのエンジンである松田と、高い演奏力を誇るスタジオミュージシャンたちの融合という布陣による演奏は、フュージョンの緻密さでロックの性感帯を攻めまくるというスタイル。そこに桑田一流のメロディとボーカルが乗ることで、KUWATA BANDはサザンとも当時の周辺のバンドとも異なる、無二のグルーヴを生み出したのだった。

近年の取材で、桑田はアーケイディアやパワー・ステーションのスタイルがKUWATA BANDのアイデアに繋がったと回想している。ロックの様式美をどう解体し、日本人として英詞のメロディやグルーヴとどう向き合い、どのような新たなロックのフォーマットを構築することが出来るか?という実験的かつ挑戦的な精神が生み出した楽曲群は(多用されたゲートリバーブに若干の時代性が感じられるものの)いま聴いてもとことんハイプでモダンだ。

こうしたマインドはライブでもエネルギッシュに反映された。ディープパープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」はラテン風味のお祭りロックとなり、またボブ・ディランの「風に吹かれて」はソウルフルなピークを迎えるハードなロックンロールに様変わり。さらにこうした洋楽ナンバーと並べてザ・テンプターズの「神様お願い」をプレイするという、独創的なキュレーションによるカバー曲も楽しかった。ライブアルバムや映像作品もまだ入手可能なので、未聴の向きは、ぜひとも圧巻のライブパフォーマンスを体験してほしい。

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「スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)」は彼らのセカンドシングル(『MERRY X’MAS IN SUMMER』と同発)だった。いま聴くとやや意外だが、当時サザンはまだオリコンでシングルチャート1位を獲得していなかった(!)ため、これが桑田にとって初めて1位を獲得したシングル曲となった。レコーディングにはコーラスにEPO、ホーンに新田一郎など、メンバー以外のゲストミュージシャンもクレジットされている。ファンキーなホーン、スイングするリズムに、河内による爽快さすら感じさせるバカテクなギターソロ。快楽主義のカタマリのようなアレンジである。

歌詞に関してはいまさら説明の必要もないだろう。“割れたパーツのマニア”に“純生ジュニア”。サビの「スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)」はどう聴いても“スケベ〜”と、こちらも快楽主義のカタマリ。当時30歳だった桑田のエロティックなセンスとスキルが炸裂している。「ザ・ベストテン」や「夜のヒットスタジオDELUXE」など、歌番組で“スケベ〜”と聴く度に痛快な気持ちにさせられたものだった。
“LENNONが流れるRock Cafe”や“ムラサキの煙”といった、洋楽リスナーをニヤリとさせるロックカルチャーのセンテンスを織り込む目配せもニクい。後半で聴ける“Rock and Roll,we like it!! 俺の大好きなPower”は、当時の桑田でありKUWATA BANDのアイデンティティをシンプルに歌い表したフレーズと言えるだろう。

ディスコ。カフェ。プールバー。ナイトスポットがギンギンに活気付いていた80年代の空気を含んでいながら、やはりこの曲もまた、いま聴いても全く古さを感じさせないという不思議な魅力を備えている。そのせいか桑田は近年のソロライブでも度々この曲を披露しており、オーディエンスを大いに盛り上げるキラーチューンとして機能している。

ちなみにカップリングの「PAY ME」は桑田が当時のマネージメントへの鬱憤を歌詞に詰め込んだ曲で、同じ事務所の三宅祐司や富田靖子など、遊び心から実在のタレントの名前も登場している。

実質1年弱だった短い活動期間のなかで1枚のオリジナルアルバムと4枚のシングルをリリースしたKUWATA BAND。桑田が座長的な立ち位置を務め、KUWATA BANDがハウスバンドを務めた伝説のテレビ特番『メリー・クリスマス・ショー』の功績も含め、いまなおファンの多いバンドである。

【執筆者】内田正樹

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