国連スピーチ~トランプ大統領にとって批判は成果になる?

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月27日放送)国際政治学者の高橋和夫が出演。国連総会でのトランプ大統領のスピーチについて解説した。

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25日、国連総会の一般討論で演説するトランプ米大統領=2018年9月25日 ニューヨーク(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

国連総会~トランプ大統領のアメリカ第一主義に批判相次ぐ

国連総会で各国の首脳らによる、一般討論演説が行われた。アメリカのトランプ大統領が「グローバリズムの思想は拒否する」と述べ、アメリカ第一主義を鮮明にしたことに批判が相次いだ。

飯田)ニューヨークの国連本部で開かれている国連総会。アメリカのトランプ大統領は自らの成果を、内政の成果も含めてかなりアピールしたようです。

高橋)ちょっと不思議なスピーチでした。今後、あんなスピーチはないでしょうね。選挙キャンペーンをしているみたいで、みんな「え?」と失笑してしまったし、笑われたトランプ大統領の方も顔がひきつるかと思いきや、「予想外の反応だったけれど、まあいいさ」と笑い返しました。そういう部分は、テレビの人間というか、運動神経がいいですよね。あそこで怒ったりしたら、本当に大変ですけれど。
それから、トランプさんのスピーチはすごく易しい表現で、オバマさんのように格調高い感じではなかった。英語の勉強で例えると初級レベルのスピーチです。トランプさんは国民に向かう場合も易しい表現を使いますが、全然「よそ行き」という感じではありませんでしたね。

飯田)確かに、英語が苦手な僕にも何となく分かりました。人によっては「小中学生の英語」と言う人もいますね。

高橋)難しい単語を使わないと言う意味ではそうですね。オバマさんは本当に教養もあったし、英語も上手かったです。ブッシュさんの場合は「難しい単語を使おうとすると、ちゃんと発音できない」とからかわれていました。トランプさんの場合は、そういう難しい表現をしようともしません。開き直っている感じですね。

トランプ大統領にとって批判は「自分が仕事をしている証拠」

飯田)今回は「アメリカ第一主義で、グローバリズムな思想は拒否する」ということで、また「内向きの保護主義だ!」と言われていますね。

高橋)トランプさん自身が「グローバリズムで勝てなかったブルーカラー(肉体労働者)がみんな失業してしまった。私はそんな人たちを代表する」と大統領になったわけですから、その意味では一貫して予想通りの、内向きのスピーチが出てきた印象です。ただ、国際的にそれではよくないと、みなさんが批判しました。
しかし、トランプさんにしてみれば、批判されるほど「みんなに嫌われるくらいに私は仕事をしている!」とアピールになる。不思議なサイクルですね。

飯田)みんなはトランプさんを少しでも変えようと思うから批判するけれど、むしろ頑なになってしまう?

高橋)そうですね。「仕事をしているから、これだけ言われる。他の連中は仕事をしなかったから上手くやってきたけど、私は違う。嫌われても言いたいことは言う」です。それが好きな人は好きなのですよ。

飯田)北朝鮮問題についても言及しています。「ミサイル発射や核実験も行われず、関連施設破壊も始まった」と自らの外交成果を強調しています。実際のところ、北朝鮮の非核化は進んでいるのでしょうか?

高橋)実際のところは何も進んでいません。しかし、「何も進んでいない」と言えば仕事をしていないということになりますから、そこは嘘でも「進んでいる」と言わなければいけない。
そして、何を言うかというと、「ミサイル発射や核実験も行われていない~」です。「去年のいま頃は戦争の話もあったけど、それがないだけいいじゃないか」という理論です。

ポンペオ氏を含め誰もやりたくない“北朝鮮担当”

飯田)トランプ政権の内幕を暴く本がいろいろと出ています。それこそ「在韓米軍の家族を退避させる」とツイートしようとして、「そんなことをしたら本当に戦争になってしまう!」と周囲に止められたとか、けっこう危ないところまで行っていたのですね。

高橋)そのようですね。辞任したマクマスター補佐官は、「戦争するなら北朝鮮の準備が整う前に早くやった方がいい」と言っていて、日本側も「始まるかもしれない」とかなり危機感がありました。
しかし、マクマスター解任などで雰囲気が変わってきました。私はちょうど去年の国連総会のときワシントンにいました。アメリカの宣伝放送局の「ボイス・オブ・アメリカ」でトランプ大統領のスピーチを聴いていたスタッフたちは、「こんなことを言ったら戦争じゃないか!」という雰囲気がとても強かった。それに比べると今年は「やれやれ」という感じです。

飯田)あのときの空気感からすると、かなり緩んだ感じですか?

高橋)いまもそうですが、トランプさんが何を考えているのか、あのときはもっと分からなかったですから。「本当に始めるんじゃないか?」という危機感は、日本政府の一部にも、かなりありました。おそらく日本政府がつながっていたのはマクマスター補佐官だと思いますが、彼からかなりのことを言われていたと思います。

飯田)そのマクマスターさんが辞めてしまった。日本政府としては、「今度はどこをパイプにするのか」という話もある。ボルトンさんなど、もっと強硬と言われていますが、いまのところ朝鮮半島情勢に関してはあまり発言がないですね。

高橋)ボルトンさんと仕事をしていた某国大使が言っていたのですが、彼は朝鮮半島問題について、口で言うほど過激ではないそうです。ただし、イラン問題については本当に過激だそうです。

飯田)朝鮮半島問題は、ポンペオさんに任せている。これは役割分担ですか?

高橋)朝鮮半島情勢は動かないでしょう。実は誰もやりたくないのですよ。ポンペオさんに「やると言っていたのだから、お前がやれよ」とみんなで押しつけていて。ポンペオさんも困ってしまったけれど、言った手前仕方なくやっているというところでしょう。

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