1時間50分の絶景レストラン列車!~TOHOKU EMOTION「ランチコース」(7,900円) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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今をときめく「レストラン列車」。
どの列車も人気ですが、運行開始から3年も経ってもなお「予約が取れない列車」があります。
その列車は・・・JR東日本が北三陸で走らせている「TOHOKU EMOTION(東北エモーション)」。
「びゅう」のツアーで2人以上からと乗車へのハードルは高いのに、売り出すと程なく完売。
そんな超難関の列車に「空きが出た!」という一報をいただき、急きょ遠征してまいりました。

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週末の朝10時半過ぎ、JR八戸駅・1番線ホームで発車を待つ白亜の列車「東北エモーション」。
外観デザインは、今やJR東日本御用達、元フェラーリのデザイナー・奥山清行氏によるもの。
列車は三陸の復興支援や地域活性化を目的に、平成25(2013)年10月から八戸線の八戸~久慈(くじ)間で運行を開始しました。
八戸11:05発⇒久慈12:52着の往路は「ランチコース」、久慈14:20発⇒八戸16:07着の復路は「デザートブッフェコース」で運行されています。
「三陸の美しい海を眺めながら、東北の食材を使った美味しいご飯が食べられる」のが最大のウリです。

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程なく、2号車の乗降口に可愛い庇とランプが取りつけられ、遊び心ある演出。
列車の総合プロデュースを務めているのは「TRANSIT GENERAL OFFICE INC.」の中村貞裕氏と岡田 光氏です。
程なく赤じゅうたんが敷かれ、訪れた日は、八戸公共交通アテンダント“はちこ”のお2人も歓迎幕と共にスタンバイして下さいました。
発車10分前の10:55頃、東北エモーションの支配人の方が現れ「close」の札を「open」に裏返し「お待たせしました!」となって乗車します。
イイですねぇ、この「本気の」レストランっぷり!!

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「東北エモーション」は3両編成で、乗車口のある2号車がオープンキッチン。
八戸発では最後尾となる1号車がコンパートメント個室となっています。
コチラの個室は7室あり、壁の模様は福島の「刺子織」がモチーフとのこと。

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そして私が乗車したのは、八戸発では先頭車両となる3号車のオープンダイニング車両。
久慈行で海側となる進行左側に4人がけが3席、山側となる進行右側は2人がけが4席設けられています。
床は青森の「こぎん刺し」、照明は岩手の「琥珀」、什器の仕上げ材は宮城の「雄勝硯」をモチーフとのこと。
しかも、椅子の座り心地がイイ!
普通の列車やコンパートメントのようにシートが固定されていない分、体の自由度が高くて窮屈さがないんです。

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3号車の車端部はドリンクの準備スペースとなっており、発車前からウェルカムドリンクの準備が始まっていました。
どうやら青森ではおなじみ、シャイニーの「スパークリングアップル(スタンダード)」の様子。
実はこれ、青森に行くと必ず飲んでしまうくらいメチャメチャ美味しいりんごジュースなのです。
私自身、一時は青森に行くたび箱買いしていたくらい。
このりんごジュースで始まるなら、私も一気にテンションが上がります!

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「東北エモーション」は11:05、”はちこ”のお2人や駅員さんに見送られ、八戸駅を定刻通り出発。
青森県から県境を越えて、岩手県の久慈までは「1時間45分」あまり。
途中、八戸の中心部・本八戸、種差海岸、種市などを経由していきます。
「種市」といえば、岩手県立種市高等学校の海洋開発科で歌い継がれてきた、南部もぐりの愛称歌「南部ダイバー」で有名。
ちなみに種市高校の最寄り駅は、種市の1つ隣・平内駅です。

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発車から程なくウェルカムドリンクが運ばれてきました。
座席には乗車時から、布のナプキンとハードカバーのメニュー表が・・・。
もちろん中のメニューは差し替え式になっており、下車時に持ち帰ることが出来ます。
このほか3号車では、テーブルに引き出しがあり、中にナイフ・フォーク一式などが入っています。
コレ、車窓が移り変わらなければ、ホントに普通のレストランに来たような気分です。

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ドリンクはアルコールを含め、フリードリンクとなっています。
今回は八戸発の列車ですので、青森らしく「あおもりシードル」から・・・。

【DRINK・・・お好きなだけ】
~アルコール~
りんごの発泡酒「あおもりシードル」(小瓶)
山形「高畠ワイン」赤(グラス)
山形「高畠ワイン」白(グラス)
ビール(小瓶)
ノンアルコールビール(小瓶)

~冷たいお飲み物~
オレンジジュース
青森りんごジュース
アイスコーヒー
アイスティー(アールグレイ)
アイス烏龍茶
岩手「龍泉洞の水」(ミネラルウォーター)

~温かいお飲み物~
コーヒー
紅茶(ダージリン)
烏龍茶

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「あおもりシードル」はJR青森駅そばの「A-FACTORY」で作られています。
スタンダードは、厳選した青森県産ふじとジョナゴールドだけを贅沢に使用。
低温でじっくり発酵させたシードルで、東北新幹線のグランクラスでも提供されています。
ちなみにこの「A-FACTORY」、青森駅近隣では、最強の土産スポットと言ってもいい場所。
シードルの試飲なども出来るので、青森市内を訪れたらぜひ立ち寄りたいものです。

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~前菜のアソート~
フォアグラと青森シャモロックレバーのムース
ソプレッサータ
ほたてのガスパチョ
シードルとエディブルフラワーのジュレ
自家製モッツアレラとトマトのブルスケッタ

会津桐の器にガラスの小皿に小分けされた「前菜のアソート」。
鉄道に興味のない奥さんを連れて来ても、コレなら文句は言わないでしょう。

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鮫(さめ)駅を過ぎると、進行左手に海と共に見えてきたのが「蕪島(かぶしま)」。
蕪島は天然記念物「うみねこ」の繁殖地として有名で、毎年3月頃に南から数万羽のうみねこがやって来て産卵します。
「うみねこ」たちが旅立つ直前、7月中旬~8月中旬にかけては手前の浜に「蕪島海水浴場」も開設。
島のてっぺんには「蕪島神社」があり、東日本大震災の津波も免れたのですが、去年秋に火事で全焼してしまいました。
現在は全国から集まった寄付をもとに、平成30(2018)年12月までの再建を目指すことが発表されています。

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鮫から次の陸奥白浜(むつ・しらはま)にかけては、八戸線有数の絶景区間。
「東北エモーション」も速度を落として運行、特に美しいスポットでは停車して「景色を味わう」時間が設けられています。
乗客が景色を愉しむ傍ら、2号車のオープンキッチンでは、次のメニューの準備が大詰めを迎えていました。
どうやら次は「パスタ」のようですね。

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~パスタ~
あわびの冷製スパゲッティ

三陸の海を眺めながらのあわびパスタ、なんとも贅沢なひと時。
パスタも小麦の味がしっかり。
列車の中で、こんなちゃんとしたイタリアンが食べられる時代になったのです。

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パンも温かい状態で提供されますよ。
やっぱりきちんとキッチンのある列車は食事がイイ!

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~メイン料理~
青森鴨のコンフィ 赤玉ねぎとアップルヴィネガーのソース

ナイフとフォークで気取って食べるもよし。
でも、ガブリとかぶりつきたい欲求が抑えられなくなりそうな青森鴨・・・。
口のまわりを肉汁で一杯よごして食べるのも、また一興かも!?

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八戸線随一の絶景区間では、地元の方が大漁旗を振って熱烈に歓迎してくれました。
「あまちゃん」由来なのでしょうが、北三陸らしくてとても気持ちが高まります。

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しかも、ちびっ子たちが大漁旗を振りながら一生懸命追いかけてくる!
この子たちだって、まだ小さい時に震災でつらい思いをした筈・・・。
でも、頑張って一生懸命生きてる!!
なんだか嬉しくて、思わず涙がこぼれそうになりました。

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サーファーの方も海の中から手を振ってくれました!
最近は各地で地元の方が手を振って歓迎してくれる観光列車が増えました。
でも、海の中から手を振ってる人は「東北エモーション」が初めて!!

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そんな興奮冷めやらぬ中、アテンダントさんが「BITOWA」の箱を持ってきてくださいました。
「BITOWA」とは、福島・会津の伝統工芸「会津塗」の新ブランドのこと。
いわゆる「新しい会津塗」として大きな注目を集めています。

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~プティフール~
トローネ
りんごのギモーヴ
バーチ
ココ
田子産熟成黒にんにく

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コーヒーを味わいながらじっくりと余韻に浸ります。
「東北エモーション」は半年ごとにシェフが交代するシステム。
今年度上半期(4月~9月)は青森・弘前のイタリアンレストラン「オステリアエノテカ ダ・サスィーノ」のオーナーシェフ・笹森通彰さんの監修です。
笹森シェフはイタリア車とサッカー好きが高じてイタリアンの道を目指し、イタリアの2つ星レストランまで行って修行した団塊ジュニア世代の方。
メニュー自体は1クール(3か月)ごとに変わり、今回提供されたものは、今年7~9月のものです。

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「東北エモーション」は12:52、定刻通り岩手県の久慈駅に到着。
素晴らしい食事をいただきながら、あっという間の1時間50分でした。
ランチコースは乗車券まで込みで「7,900円」!
「北斗星・グランシャリオ」のフランス料理コース相当のお値段で、一流シェフの料理と絶景を一度に味わえるのは、ものすごくお値打ち!
これはいくら経っても予約が取れないわけです。

加えて「東北エモーション」は「レストラン」一点勝負で、作り置きの弁当ではなく車内調理の出来立てを提供。
昔、映画の井筒監督に映画はTV放映とお客さんがダレないように「1時間50分」で作ると聞いたことがありますが、「東北エモーション」はまさにこの時間尺!
「1時間50分」で、アテンダントさんの笑顔あり、沿線住民の方の熱意に涙あり。
さらに人間の三大欲求の1つ「食欲」にダイレクトに刺さる「選択と集中」が行われているので「満足度」がとても高いのです。

また季節を変えて、行くぜ!「東北エモーション」!!

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)

【ごあいさつ】
はじめまして、放送作家の望月崇史(もちづき・たかふみ)と申します。
ニッポン放送には、昔の有楽町の社屋の頃から、かれこれ20年お世話になっています。
最近では、月~木・深夜24時からの「ミュ~コミ+プラス」で放送された、
ルートハンター」のコーナーに、5年ほど出演させていただきました。

そんな私がライフワークとしているのが「駅弁」の食べ歩き。
1年間に食べる「駅弁」の数は多い年でのべ500個。
通算でも4500個を超えているものと思います。
きっかけとなったのも、実はニッポン放送の番組。
2002年~05年に放送された「井筒和幸の土曜ニュースアドベンチャー」の
番組ウェブサイトで「ライター望月の駅弁膝栗毛」を連載することになり、
本格的に「全国の駅弁をひたすら食べまくる生活」に入りました。
以来、私自身のサイトや、近年は「ライター望月の駅弁いい気分」というブログで
「1日1駅弁」を基本に「駅弁」の紹介を続けています。
”駅弁生活15年目”、縁あってニッポン放送のサイトで連載させていただくことになりました。
3つの原則で「駅弁」の紹介をしていきたいと思います。

①1日1駅弁
②駅弁は現地購入
③駅弁のある「旅」も紹介

「1日1駅弁」ですので、日によって情報の濃淡はありますが、
出来るだけ旬の駅弁と鉄道旅の魅力をアップしていきますので、
ゆるりとお付き合い下さい。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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