「母も天国で喜んでくれるかなと。。。」上柳アナ&松本アナ男2人で母の介護を語る

上柳松本

上柳昌彦アナウンサー(以下上柳) 松本秀夫アナウンサーが書いた「熱闘!介護実況~私とオフクロの七年間」という本がこの度出版されました。お母さまとの7年間ということですが、実質的には手術されてからですから、もうちょっと長いですよね。

松本秀夫アナウンサー(以下松本) 手術前も入れると14年弱ですね。

上柳 今、振り返ってみてどんなお気持ちですか?

松本 いろいろな選択肢があった中で、どうしてそっちの道を選んでしまったのだろうかという後悔、今になると、明らかに間違っていたということがわかります。病院の選択であるとか、介護している時におふくろにとった態度とか言った言葉だとか、食べさせたものであるとか、いろいろな選択肢がある中でどうしてそっちへ行ってしまったのだろうと、文字に起こしてみて気付いたことが多々ありました。

上柳 自分の過去を神様の視点で見ているわけですから、「あそこはそっちではない」ということが今なら思えるけど、その時は必死じゃないですか。介護というのを必死に毎日やってらっしゃる方にとってこの本はとても参考になると思います。

松本 反面教師にしていただけたらと思います。

上柳 この時に相談をしたり周りの人に聞いたり、情報を調べたりということをやっていますよね。

松本 弟が早い段階からネットを駆使していて、僕の知らない情報を与えてくれましたし、ケアマネージャーさんという存在が本当に大きかったです。経済的な面でもそうですし、かなり立ち入ったところまで、家族の問題に至るまで、親身になって考えてくださいました。ヘルパーさんはじめそれを統括しているケアマネージャーさんという方がいなければとてもとても、何もできなかったなと思います。

上柳 このケアマネージャーさん、私も自分の母の時にお世話になりましたが、普通の方はケアマネージャーさんっていったいどこにいらっしゃる方なのか、そこからですよね。自分の住んでいる地域の市なり区なりに行って自治体の窓口に行って聞けば「それはこちらです」というようになりますが。

松本 そこにたどり着くのは知ってしまえば簡単なことなんですけど、はじめはわかりません。

上柳 この本を読んだ方で感想として「何でそんなことしちゃうの?」って思いながら読む方もいると思います。

松本 一番いけないのは僕は手をあげてしまったことです。いろいろなストレスを抱えていて、おふくろの現実を自分が受け入れられない。おふくろはちゃんとした存在であってほしいんだということが頭の中にいつまでもあって、それが言葉で収まらなくなって、そんなことしちゃだめだというように叩いてしまったというのが、本当に後悔だし、その何倍も苦しかったのがおふくろなのにそこに寄り添えなかったんだなあ、その気持ちになれなかったんだなあというのは、もう、悔しいですね。

上柳 放送で聞いている松本さんは明るくて楽しくてやさしくてというような印象をお持ちだと思いますが、そのような人でも、変貌してしまう可能性がある。だから、もし、介護されていて、思い通りにならない時には人ってそうなっちゃうんだっていうことをこの本を通して教えてくれていると思うんですよね。この事実を一回頭の中に入れていただければ「そうだ、オレはあの時の松本さんと一緒になっている」って思っていただければと思うね。

松本 思っていただければ、嬉しいですし、母も天国で喜んでくれるかなと思います。

上柳 お母さまはとてもいい人だったと、いい人だったからすべてを受け入れてしまった。お母さまの人生は大変でけして穏やかでない人生だったと思うんですけど、やっぱりその中で全部それをいい人がゆえに受け入れてしまって、「母は壊れてしまった」という表現を使っていたのですが、そこが一番つらいところですよね。

松本 自分の失敗談であるとともに、おふくろの人柄のよさというのをこの本を通じて一人でも多くの人に知っていただきたかったですね。眠れないって訴えられた時に僕は叩いちゃったんですけど、どうしてその時に添い寝をしてあげられなかったんですかと、つい先日読者の方に言われました。息子としてこんな歳になってもおふくろの横に寝るということはなんか気恥ずかしさがあって、できなくて僕は最終的におふくろが亡くなって亡骸に添い寝をして涙を流したんですけど、こんな時に添い寝するんじゃなくてあの晩にどうして添い寝できなかったんだろうって、今になって思うんですけど、できなかった。

上柳 息子というものの宿命なのかもしれないですね。僕も施設にいるおふくろを見に行って、握手したり、手を握ってあげたりとかするんだけども、未だにものすごく照れくさいですものね。あれは娘とは全く違うよね。

松本 きっと上柳さんのお母さんはずっとスキンシップを求めているんだろうし、うちのおふくろもできれば一緒に寝てほしいと思っていたんだろうなと、今だとわかりますね。

上柳 本当に介護には完璧なものはないんだっていうことですね。そして完璧を求めると介護されている方が大変なことになってしまう。

松本 できもしないことをやるとだめですね。

上柳 この本は私小説という形をとって書けば、なにかの文学の賞をとれるだろうというそれくらいのクオリティです。1回の表から9回の裏まで母が逝くまでの7年間の介護を書いていると言う本でございます。ぜひ、お読みになっていただきたいと思います。


『熱闘! 介護実況~私とオフクロの七年間』
著者:実況アナウンサー 松本秀夫
単行本(ソフトカバー) バジリコ出版から7月26日発売 定価1300円+税
ISBN 978-4-86238-232-0 C0095
ISBN 4862382320 ¥1300E
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松本秀夫
1961年東京生まれ。早稲田大学卒。ニッポン放送の看板実況アナウンサー。
野球をはじめ、サッカー、競馬などスポーツ全般の実況で知られる。他に
バラエティ番組のパーソナリティとしても活躍。

母さん、ごめん!
1回表から9回裏まで、母が逝くまでの介護をラジオの人気実況アナウンサーが中継する悪戦苦闘、泣き笑いのヒューマンドキュメント。
【目次】
1回表 すべての始まりは胆石
1回裏 オフクロを忘れて仕事に夢中だった私
2回表 オフクロの問題
2回裏 ラブストーリー
3回表 患者と治療の相性
3回裏 命がけの夏休み旅行
4回表 痴呆と診断された日
4回裏 オフクロの依存癖
5回表 老々デスマッチ
5回裏 傷だらけの人生
6回表 虐待を受ける
6回裏 親子水入らずの同居生活
7回表 破たんの予感
7回裏 オフクロの十字架、私の懺悔
8回表 特養施設の闇
8回裏 致命的エラー
9回表 オフクロの旅立ち
9回裏 オフクロを送る