大橋巨泉さんのNext Stageへの提言(3)『若い人と高齢者がコラボレーションできたら新しい文化が生まれる』

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ニッポン放送では、2013年10月から半年間、「ニッポン放送開局60周年記念番組『Next Stageへの提言』」を放送し、2013年10月6日の放送で、今年7月に亡くなられた大橋巨泉さんをお迎えしてNext stageへの提言をお聴きしました。
その内容を3回に分けてテキストでお届けします。
大橋巨泉さんは未来に向けて何を提言したのでしょうか。
聞き手はニッポン放送 増山さやかアナウンサーです。

■ネクストステ―ジへの提言

大橋巨泉(以下巨泉) あまりにも科学が進んだでしょう、ぼくなんか来年80歳だけど、ゴルフやってうまいもん食って、外国行って、これも医学の進歩のおかげなんだけど、どこまで人間が科学の進歩と共存できるんだろうかということですよね。

どこかで線を引かないと今の地球温暖化にしてもそうだし、例えばメディアにしても、ラジオはラッキーだと思うんです。ラジオというのはそう簡単に他のものにとってかわられるようなところがないんですよ。いくらスマートフォンやらといっても、いざ、災害が起きたり、大きな戦争とか起きた時にいちいち街角に立って指をぐるぐる回している場合ではないじゃないですか。

また、高齢化時代ですから僕がTBSの永六輔さんの番組にも準レギュラーで何回も出ているのですが聞いている人はみんな50代が60代になって、60代が70代になり、そうなると今度、高齢化社会でやはり、ながら族ですよね、何かしながらほかのことをする。テレビ観ながらじゃできないけど、ラジオ聞きながらならできる。

情報とエンターテイメントですよ。エンターテイメントが若い人たちが喜ぶようなロックやなんかはテレビのほうでやるかもしれないけど、古い民謡とか演歌と小唄とか落語とかというのはそれじゃあ、っていうとラジオで生きる。そういう点でラジオというメディアはなかなかなくならないと思う。

―テレビのほうが危機感を持たなくてはならないということですか?

巨泉 日本のテレビは危機感がなさすぎるけど、外国のテレビなんかはとっくにそういう危機感からものすごく細分化が進んでいます。例えば、科学の好きな人、歴史の好きな人、医療の好きな人、政治の好きな人がそれぞれ黙って見られるテレビが完全にただとはいえないけど、日本なんかはまだかなりお金取られるじゃないですか。向こうは例えば月ぎめ28ドルなら28ドル、カナダ、オーストラリアなんかはみんなシステムが同じで、20ドルの後半から30ドルの中頃くらいまでの値段で、多い所だと100局くらいケーブルで見られる。細分化されているんです。行政の問題もあるし、資本の問題もあるし、いろいろあると思うんですが、テレビは大変だと思いますよ。僕は一番今心配なのはブログとかツイッターの行き過ぎですね。

匿名で書ける、誰もわからない。昔は評論家なり、キャスターなりじゃないと自由にものを言えなかったのが、今はブログなら誰でも悔しいこともうれしいことも腹立つことも言える。誰かがまたレスポンスしてくれる。そういう人たちにはとてもいい時代だと思うんだけど、僕は基本的に匿名の記事とか発信は大嫌い、認めない。自分だけ安全なところにいて人の中傷したりするのなんか認められません。

評論家の人が新聞で意見を発することはちゃんと名前が入っていますから。最近は評論家でなくても新聞記者でも署名記事が多いですよね。それが正しい。匿名で人のことをうんぬんするのはフェアじゃない。そういうメディアのITに頼りすぎるんですよ。

僕はFacebook、しつこく来ますけど全部友達申請断ります。おまえなんかに友達紹介されたくないよ。話しているうちに、今まで見ず知らずだった人と親友になることもあれば、居酒屋で一杯飲んでいる時に隣に座った人と友達になる時もあればライバル会社だった営業同士だったのにいつの間にか無二の親友になったとかいうことは、これはちょっと嫌な言い方すると、神が仲介に立ってくれるようなものが友達なんですよ。

もちろん僕が旧世代の人間なんだろうけど。古いものをどんどん捨てて行って、新しいものをありがたがるというような風潮は、僕は未来への提言ではないと思う。

例えば、下の娘の美加と『Dream』っていうCD出しましたけど。古い曲は7~80年前のものですけれど、古いものと新しいものが並行していかないといけない。今は少子化、高齢化と言うけど、若い人が少なくて高齢者が多いわけじゃない、どこかに接点を見つけて行かないと一緒に暮らしていけないでしょ。

僕はこれからのNextStageへ何かを提言するかと言ったら、そういうコラボレーション。僕と娘が一緒にCDを作ったように、若い人がある程度の年齢の人と一緒に本を書くとか、一緒にステージやるとかといった場合に上から目線、下から目線ということではなくて、Facebookの力を借りなくてもコラボレートできるところがあったら新しい文化が生まれるんじゃないかなと思います。(終)

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