森永卓郎が解説 日本の経済が衰退した本当の理由

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「垣花正 あなたとハッピー!」(9月12日放送)で経済アナリストの森永卓郎が出演。日本経済が弱くなった理由、それはアメリカの関与が大きく影響していると言う——。

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この20年間で日本経済のシェアは3分の1に低下

森永)「最近経済が低迷しているよね」という意見をよく聞きます。日本だけの統計を見るとそうなのですが、世界との比較で見ると、とてつもない大転落をしているのです。

国連統計で世界中の国の経済の大きさ、GDPがわかりますが、世界のなかで日本が何%を占めているか。このGDPシェアを見ると1995年には17.5%、ほぼ18%でした。ところが2016年になると6.5%。この20年間で日本経済は世界シェアが3分の1に落ちているのです。
逆に言うと、日本経済が世界の普通の国並みの成長をしていたら、現在の我々の所得は3倍だったということです。世界中の経済が良くなって生活が潤っているのに、日本だけが良くなっていないのです。

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この21年間で人口も就業者数も増えている事実

なぜこうなってしまったかというと、一般の人が信じている話というのは、1つは「人口が減少しているから」。もう1つは「高齢化で働く人の数が減ってしまったから」です。この説を唱えた人があちこちのメディアに出て話すので、みんなそうだと思っているのですが、これは真っ赤な嘘です。

なぜかと言うと、3分の1に転落した95年から2016年、この21年間の変化を見ると、人口は1%増えています。増えているのは高齢者であって労働人口ではない、という考え方もありますが、就業者数は21年間で0.1%増えています。人口も働く人の数も増えているのに、3分の1に転落したということです。

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会議の会場となった、ニューヨークのプラザホテル(プラザ合意 – Wikipediaより)

転落の始まりは1985年の「プラザ合意」~2年で2倍の円高

巷で言われている原因とは全く違います。この転落が始まったきっかけは1985年9月の「プラザ合意」だと思っています。NYのプラザホテルに先進5カ国の大蔵大臣と中央銀行総裁が集まって、表向き「為替を安定させましょう」と合意しました。しかし、その実態は「日本円だけを円高に持って行って、日本を袋叩きにしよう」という合意でした。直前まで為替は1ドル=240円でした。それがこの合意の2年後、1987年の末は120円と一気に円高にして行った。2年で2倍の円高です。この数字は日本が輸出する製品に100%の関税をかけるのと同じことです。
例えば、1ドルが240円のときに、日本で240万円の車を作ると、アメリカで1万ドルで売れます。ところが為替が120円に上がると、同じ240万円を取るためには2万ドルで売らなくてはならない。1万ドルでアメリカで売っていた車を2万ドルに値上げすると一気に売れなくなります。

いま、トランプ大統領が日本の自動車に「農産物を市場開放しなかったら20%の関税をかけるぞ」と言っていますが、これは20%どころではなく、100%の関税をすべての製品に掛けるということをしたのです。

その結果何が起こったかというと、日本で物が作れないということになり、この直前まで日本の海外生産比率は3%でした。それが2016年には23.8%と8倍になっています。いまや4分の1の製品は日本ではなく、海外の工場で作られています。

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B円 – Wikipediaより

アメリかが沖縄で行った為替政策が沖縄の製造基盤を壊した

このことには重大な教訓があります。それは沖縄です。太平洋戦争の後、沖縄は米軍に占領されました。1946年4月、終戦の翌年に、米軍は米軍が発行する「B円」という軍票を公式通過にすると発表しました。なぜBかというと、韓国では「A円」という軍票を出していたのでそれと区別するためです。その後、1948年7月には日本円の使用を完全に禁止して、沖縄の通貨はすべてこの「B円」となりました。米軍基地を建設する際に沖縄の労働者が使われたのですが、やったことというのは米軍が「B円」という紙切れを刷って、「金ならあるぞ働け」と働かせたことです。

さらに大きな犯罪をアメリカは犯しました。もともと1B円=1円と等価でしたが、沖縄には資材が無いため日本本土から輸入しなくてはならず、そのときにアメリカ軍は、「俺たちの金のほうが価値がある」と言って、1950年に突然、B円の為替レートを1B円=3円と3倍に切り上げました。その結果猛烈な円高不況が沖縄を襲いました。そのせいで沖縄からは、製造基盤がどんどん失われて行ったのです。

影響は未だに残っている。例えば、産業のなかで製造業が占める割合は全国平均で20.8%ありますが、沖縄は4.9%、4分の1しか製造基盤がない。この最大の原因が、この米軍によるB円を3倍に切り上げるという為替政策の暴挙だったのです。その後、B円はドルに代わりますが、一度壊された製造基盤はそう簡単には戻らないということです。

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トランプ・タワーを訪問した安倍晋三と談笑するトランプ(2016年11月17日)(ドナルド・トランプ – Wikipediaより)

円安にならないのはなぜか

「国の競争力の90%以上は為替で決まる」と前から言っていますが、いま、アメリカはどんどん金利を上げています。政策金利2%まで上がって、長期金利は3%近い。そうするとドルで運用したほうが有利なため、どんどんお金がドルに逃げていきます。そうなると、ドルが高くなって、円が安くなるはずなのに、円安にならない。本来なら130円、140円になっていいはずなのにならない。なぜかと言うと、これもメディアがまったく報じていませんが、日銀がとてつもない金融引き締めをしているからです。円安にならないように資金供給をガンガンしている。安倍政権発足前くらいの資金の伸び率にいま、減ってしまっています。

現在もプラザ合意と同じことが起こっている。すべて、圧力をかけているのはアメリカなのです。いまの日本の政権はアメリカへの忖度で成り立っています。確かに喧嘩すると向こうが強いのは明らかです。ただ、いじめを我慢してはいけない。我慢しているといじめはエスカレートしていきます。

安倍総理にお願いしたいのは日米首脳会談の際に1度でいいので、トランプ大統領の目をじっと見つめて、「フン!」と横を向くということをやっていただきたい。それだけで少し流れが変わるのではないかと思います。これはセクハラに対する対応と一緒です。黙っていたらダメなのです。

表向きは為替はマーケットで決まるという立て前になっているので、表舞台の交渉には絶対に出てきませんが、水面下の最大の闘いは為替レートなのです。

垣花正 あなたとハッピー!
FM93AM1242 ニッポン放送 月-金 8:00-11:30

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