あけの語りびと

1歳から高校生まで、ボランティアグループ『ピノキオクラブ』は子供たちが主体

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災…。被災地で救援活動をしたボランティアの数は、翌年の1月までで、およそ138万人にのぼりました。
このことから、1995年は「ボランティア元年」と呼ばれ、毎年1月17日は「防災とボランティアの日」とされています。

「ピノキオクラブ」団体代表の 松村雅生 さん(地域新聞社 提供)

茨城県取手市の元小学校教諭、松村雅生(まさお)さん(67歳)が代表を務めるボランティアグループ「ピノキオクラブ」は、ちょっと珍しい団体です。その活動の中心は、1歳から高校生までの100人の子どもたち。

「ピノキオクラブ」が発足したのは、2013年のことでした。松村さんへ、かつての教え子から高校に合格したという電話が入りました。
「おお、おめでとう! がんばれよ!」と、話はここで終わるはずでしたが、実は、ここからが長かった。

「先生、中学の卒業記念に、みんなディズニーランドやUSJに行くんだ。でも僕たちは、東北の被災地にボランティアに行きたいんだよ」
「ほほう、それは感心なことだ。行ってこい。がんばれよ!」
「先生、実は…僕たち、お金が無いんだ。先生、連れてってよ

松村さんはすでに学校を退職していましたが、教え子たちの意気に感じて、こう答えていました。
「先生も東北の被災地のことが気になってたんだ。よ~し、一緒に行こう!」

ピノキオクラブFacebookより

出発は、4月1日。現地に着いたときは、新年度の2日になっていました。この日から子どもたちは高校生扱いになり、被災地のボランティアとして受け入れてもらえる規則だったのです。
一行は、松村さんを含めて4人。頼まれた仕事は、宮城県南三陸町のワカメの収穫と出荷作業の手伝いでした。

4月とはいえ冷たい風が吹きすさぶ海辺で、朝の9時から夕方の4時までの作業は想像以上に辛いもので、終わったときは、もうブルブルのヘトヘト。その胸に去来する思いは、同じだったといいます。
「ボランティアなんか、もうこりごりだ!」

いわき市薄磯区での慰霊碑清掃(ピノキオクラブFacebookより)

その後、松村さんたち一行が立ち寄ったのは、石巻市立大川小学校跡でした。
「先生、ここにいたら死ぬよ!」という児童たちの必死の訴えもむなしく、74人の犠牲を出した大川小学校。その校庭に立つ慰霊碑を掃除して、花を手向け手を合わせました。
10分、20分、30分。およそ2時間もの間、みんな押し黙ったまま。そして、この校庭を去るとき、4人の心は一つになっていたといいます。

「また、ボランティアに来よう!」「毎月、来ようよ!」
「ピノキオクラブ」誕生の瞬間でした。

ピノキオクラブFacebookより

ボランティア活動には、力を合わせる人だけでなく資金が必要です。松村さんは昔取った杵柄とばかりに、教育委員会、ショッピングモール、高齢者施設などの委託を受けて「工作教室」を開催。石、貝殻、木の実などを組み合わせた作品の指導料を、ボランティア資金に充てました。

松村さんは言います。「一度、壊滅的な被害を受けた被災地に、ボランティアの仕事が無くなることはありません。それどころか、深刻さは増すばかりなんです」。

ピノキオクラブFacebookより

被災地のかさ上げと区画整理が終わると、復興事業は終了となります。しかし、農業をなりわいとしてきた高齢者に、まっさらな土地を提供しても、「家はどこだ」「田畑はどこだ」ということになり、生計は立ちません。
国の復興事業というのは、実はここまでが限界なのです。「仮設住宅のお年寄りの表情は、年々、暗くなっているんですよね」と、松村さんの声は沈みます。

ピノキオクラブFacebookより

それでも、ボランティア活動を通して得られたかけがえのない歓びは、数限りなくあります。
高齢者施設を訪問した子どもたちに「また来てね」と言うお年寄り。来れないことは分かっていても「うん、また来るね」と答える子どもたち。

母子家庭で不登校児だった男子は、ボランティア推薦で専門学校に進み、大手航空会社の整備科に就職しました。
親と一緒にボランティアに参加した幼児の世話を担当してきた女子は、大学の保育科に進学しました。

ピノキオクラブFacebookより

誰かに寄り添うボランティア…。その優しさから実るいくつもの果実…。
「ピノキオクラブ」の活動は、まだまだ続きます。

上柳昌彦 あさぼらけ
FM93AM1242ニッポン放送 月曜 5:00-6:00 火-金 4:30-6:00

朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ

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