スローシネマ方式で、あなたに映画を届けます。『ちえりとチェリー』『チェブラーシカ 動物園に行く』 しゃベルシネマ【第48回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

そこで今回の「しゃベルシネマ」では、「星野源のオールナイトニッポン」でもおなじみ、星野源さんが声優を務める長編パペットアニメーション『ちえりとチェリー』(同時上映『チェブラーシカ 動物園に行く』)を掘り起こします。

東日本大震災から5年。被災地の未来を願って“いのちの大切さ”と“想像力の可能性”を描く。

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ちえりは、小学6年生の女の子。
幼い頃に父親を亡くし、現在はシングルマザーとして働く母親と二人暮らし。
母親は仕事が忙しく、ちえりの話し相手もままならない日々。
心の奥底に寂しさを抱えるちえりの唯一の友だちは、父の葬儀の時に蔵で見つけたぬいぐるみの“チェリー”だけだった。
ある日、ちえりは法事のため、チェリーを連れて父親の実家を訪れる。
そこでちえりを待ち受けていたのは、空想と現実の狭間を行き来する不思議な冒険だった…。

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”いのち”と”想像力”の大切さをテーマに製作された『ちえりとチェリー』。
製作陣がこの企画をスタートした時期に重なるように、あの東日本大震災が発生。
未曾有の災害に多くの悲しみがあふれるなか、葛藤を抱えながらもスタッフたちはこの企画を進め、6年の歳月をかけて本作を完成させました。

主人公・ちえりの声を務めたのは、声優の高森奈津美。
試作品の女性キャラをすべて一人で演じるなど、5年前のパイロット版制作時から本作に関わってきた高森さん。
2年前にちえり役を演じることが決まり、ゆっくり時間をかけて役と向き合ってきたとか。

そしてちえりの友人・チェリーを演じるのは、星野源。
ちえりのそばに常に寄り添い、彼女の空想の中を自由闊達に動く“ぬいぐるみ”を温かみのある声で好演しています。

ほか、尾野真千子、栗田貫一、サンドウィッチマンなど、個性豊かな豪華キャストたちが、『ちえりとチェリー』の世界を体現。
脚本・監督を務めたのは、2010年にロシアの人気キャラクター「チェブラーシカ」の映画を27年ぶりに日本で復活させた中村誠監督。
ひとりの少女がいのちの輝きと向き合って成長していく姿を、瑞々しく描き出しています。

映画の上映を通じて、地域コミュニティの再生を図る

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本作は昨年、第28回東京国際映画祭パノラマ部門上映にて初お目見え。
写真は上映後舞台挨拶の1枚。
高森奈津美さんと中村誠監督、さらに併映された『チェブラーシカ 動物園へ行く』からチェブラーシカが登壇し、ご縁あって私が司会を務めさせていただきました。
その後、今年2月よりスローシネマ方式で岩手、宮城、福島を皮切りに全国各地で上映会が行われています。

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スローシネマ方式とは、映画館における通常の映画興行に頼らず、ゆっくりと時間をかけながら全国各地のホールや公共施設で上映を行う映画の公開方式。
本作は地域コミュニティの再生を願って、このスローシネマ方式の上映を行っています。
映画館の立地が都市部と地方で格差が進んでいるいま、映画館がない土地にも映画を届けることが出来るスローシネマ方式。
人と人をつなぎ、地域から少しずつ日本を元気にする上映の在り方として注目されています。

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現在、東京では7月30日から渋谷ユーロスペースにて上映中。
劇場ロビーには『ちえりとチェリー』『チェブラーシカ 動物園へ行く』のパペットが展示されています。
チェリーのキャラクターデザインを担当したのは、パペットアニメの最高傑作『ミトン』やオリジナル版『チェブラーシカ』の生みの親でもある、ロシアアニメ界の巨匠、レオニード・シュワルツマン。
間近で見ると精巧に出来ていて、いまにも動き出しそうな躍動感に満ちています。

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併映の『チェブラーシカ 動物園へ行く』は、熱を出して寝込んでしまったゲーナの代わりに、チェブラーシカがワニとして動物園で働く…というお話。
おともだち思いなチェブラーシカの可愛らしさにキュンときますよ。

両作品とも、丁寧に紡がれた心温まる作品です。
是非、この機会を逃さないで。

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2016年7月30日から渋谷ユーロスペースにて夏休みロードショー
『ちえりとチェリー』
監督:中村誠
声の出演:高森奈津美、星野源、尾野真千子、栗田貫一、田中敦子、伊達みきお(サンドウィッチマン)、富澤たけし(サンドウィッチマン) ほか
©「ちえりとチェリー」製作委員会
公式サイト http://www.chieriandcherry.com/

『チェブラーシカ 動物園へ行く』
監督:中村誠
声の出演:折笠富美子、土田大、チョー ほか
©2010 CMP/CP
公式サイト http://www.cheb-project.com/gotozoo/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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