スペインで活躍するサッカー・コーチの佐伯夕利子が、黒木瞳がパーソナリティの番組「あさナビ」（ニッポン放送）に出演。スペインでサッカーの指導者になるまでの経緯を語った。

黒木）今週のゲストはスペインのサッカー指導者として活躍されている、佐伯夕利子さんです。
スペインでサッカー指導者学校へ行かれるようになったのですが、指導者や監督になるにはライセンスが必要です。それは、どれくらいの期間学校へ行って、どうすれば取得できるのですか？

佐伯）「サッカーを科学的に勉強する場所」と捉えていただくと分かりやすいと思います。私もそれまではただボールを蹴って、汗かいて、勝ち負けで一喜一憂しているだけでした。
ですが、指導者の養成の勉強をすると、楽しみ方が少し変わるのです。フィジカル面とかメンタル面、戦術や技術、それこそ医学的な部分。そういうものも含めて、フットボール（サッカー）を形成しているさまざまな要素をすべて科学的に勉強させてもらいながら、指導者として選手たちに基本的な知識を指導できるような人間を作る場所です。

黒木）何年くらいですか？

佐伯）レベルが1・2・3とあります。レベル1は、1年間の講習を受けながら、筆記や実技をやります。その後試験に合格したら、次の1年間は実際にどこかのクラブでチームを持たせてもらい、1年間リーグ戦をやります。規定があって、「何十試合の公式戦出場のサイン」を提出しないとライセンスが下りない形です。最後までスムーズに行けた場合、最低で5年間ですね。

黒木）佐伯さんは何年間で取れたのですか？

佐伯）1年間の講習ですから、仕事で講習ができなかったり、ばらつきがありました。10年くらいで最後のライセンスまで取りました。

黒木）最後まで取れる人は少ないでしょう？

佐伯）そうですね。途中で諦めてしまう方もいらっしゃいますし。
あとは、ライセンスがあっても、職業に直接つながるものでも無いのです。ペーパードライバーと同じです。「ライセンスのペーパードライバー」もたくさんいるのです。長引くと「指導者はもういい。他の道へ行こう」となる人が多く出るというのも、実際にあります。

黒木）佐伯さんはどのようにしたのですか？　実績を残した、ということですか？

佐伯）いえ、私は逆にチームを持たせていただけるだけでありがたい立場です。ただ、本当にしつこく執拗に、指導者の道を突っ切ってきました。それと、ちょうどその頃、日本のサッカー（Jリーグ）が発足して、成長期だったのです。
すると、サッカー大国スペインに学びに来られる方が、経営者や指導者もろもろ、たくさんいらっしゃいました。そこからお仕事が増えていったのです。だから、それをリーガル（合法）に、向こうで労働できるように、労働ビザを取らなければいけない。そこで、「会社を自分で作ろう」と、そういうオーガナイズとか、スポーツイベント関連の会社を作り、そちらで基本的な生計を立てながら、同時に指導者として引き続き勉強させてもらえた、という感じです。

黒木）最初のチームを持たれたのは、ライセンス取得時の2年目ですが、実際に「このチームの監督をしてください」となったのは、いつ頃ですか？

佐伯）最初は本当にお願いして、「持たせてもらえるチームはありませんか？」です。小学6年生くらいの男子チームを持たせて「いただいた」感じです。
そこから、少しずつ上のカテゴリーに昇格させていただきました。

佐伯夕利子／スペイン　サッカーコーチ

1973年、イラン･テヘラン生まれ。スペイン在住。
父親の仕事の関係で海外を転々。小学2年生からサッカーを始める。
一時サッカーから離れたが、高校卒業後の1992年、スペインに移住したのを機に再びサッカーを始める。1992年から96年まで、スペイン女子リーグに在籍。
1993年、スペインのサッカー指導者学校に入学。スペイン名門チームの下部組織などで主にジュニア･ユース世代の指導を担当。
2003年、スペインサッカー協会のナショナルライセンスを女性で初めて取得。スペインで女性として初めて男子チーム「プエルタ･ボニータ」の監督に就任。
その後も、数々のチームで指導者として活躍。実績を高く評価され、『ニューズウィーク日本版』で『世界が認めた日本人女性100人』にノミネートされる。
2010年からはスペインリーグのトップチーム「ビジャレアル」の女子チームの監督に就任。現在は育成強化責任者としてトップチーム以下の全ての世代の育成強化を担当し、指導現場の傍ら、スペイン遠征やサッカー留学等などコーディネートするスポーツ・ビジネス会社「OFFICE25」を経営。 Jリーグ特任理事にも就任。

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