それゆけ!ドーナツ盤万博

「そんなヒロシに騙されて」に詰まったエレキ歌謡の醍醐味

第21回 「そんなヒロシに騙されて」聴き比べ

最近、ますます加熱するアナログ盤ブーム。そしてシングル盤が「ドーナツ盤」でリリースされていた時代=昭和の楽曲に注目する平成世代も増えています。
子供の頃から歌謡曲にどっぷり浸かって育ち、部屋がドーナツ盤で溢れている構成作家・チャッピー加藤(昭和42年生)と、昭和の歌謡曲にインスパイアされた活動で注目のアーティスト・相澤瞬(昭和62年生)が、ターンテーブルでドーナツ盤を聴きながら、昭和の歌謡曲の妖しい魅力について語り合います。


チャ:皆さん、ご無沙汰です! せっかく1週夏休みをいただいたのに、家で原稿書いてました。悲P……こんにちは、チャッピー加藤です。

相澤:チャッピーさん、ほどほどに休んでくださいよ。今月はイベントも控えてますから!……こんにちは、相澤瞬です!


チャ:そうだ、ウカウカしてたら9月になっちゃったよ! このイベントもあるけど、プロ野球もこれから佳境だからねー。あちこち球場も巡らなきゃいけないし、もーたいへんなんスから!

相澤:そういやチャッピーさん、この前、「9月は野球を観に大阪へ行く」って言ってましたよね?

チャ:うん、甲子園で阪神と戦う我がドラゴンズを応援に行くのと、あと忘れちゃいけない、京セラドームに行って、オリックス・吉田正尚の「応援ダンベル」を買わないと!

相澤:なんですか、「応援ダンベル」って??

チャ:吉田はね、筋トレの鬼で、めっちゃパワーあるんだけど、登場のときに流れる動画で、ヴィレッジ・ピープルの『マッチョ・マン』をバックに、両手にダンベル持って筋トレしながら出て来るのよ(笑)。で、そのダンベルがグッズになったの。

相澤:そんなの買ったら、帰りの荷物が超重いじゃないですか!

チャ:いや、空気で膨らます「なんちゃってダンベル」だから超軽いの。意味ねー(笑)。

相澤:チャッピーさん、もしかして球場行って、そういうグッズばっかり買ってませんか!?(笑)

チャ:オレ、バカグッズ大好きだから、ヒイキとか関係なく買っちゃうのよ。また部屋が狭くなるなー。あははー。

相澤:大阪、僕も一緒に行っていいですか? 万博会場に行きたいんですよ! チャッピーさん、一緒に太陽の塔の前で写真撮りましょう!

チャ:おー! ナイスアイデア! そうだよなー、『ドーナツ盤万博』と銘打ってんだから、ここは本家にも挨拶しとかないと!

相澤:いまちょうど、内部も公開してますからね! 行きましょう!

チャ:ついでに、太陽の塔の前でレコードも聴こう! このプレーヤー、電池でも動くから(笑)。

相澤:最高ですね! じゃさっそく日程詰めましょう!

チャ:ヨシ、宿の手配はまかしとき!……ほな、いくで、瞬くん!

チャ・相澤:「ヤーング OH!OH!」

■「そんなヒロシ」を聴き比べ

チャ:んで、前回まで2回連続で、ギターがテケテケ言ってる「エレキ歌謡」の特集をやったんだけど、80年代の話をしようと思ったところで終電の時間になったから、仕切り直しね。今回も、恵比寿「魔女Bar ハロウィン」にお邪魔してまーす。

相澤:チャッピーさん、80年代のエレキ歌謡で、ぜひ聴いてほしい曲があるってことでしたけど?

チャ:そうそう、エレキ歌謡へのオマージュ作品なんだけど、テケテケの粋が詰まった曲があってですね……コレっす!


チャ:1983年8月21日発売、高田みづえ『そんなヒロシに騙されて』。作詞・作曲・桑田佳祐! ですよ。

相澤:高田みづえさんって、『硝子坂』のかたですよね? このジャケット、いい! 桑田さんの曲なんだー。

チャ:そもそもは、サザンのアルバムの曲だったの。(83年7月発売『綺麗』収録)ボーカルは原由子さん。桑田さんは少年時代にテケテケを聴いて育った世代だし、加山雄三を生んだ茅ヶ崎育ち、「さすが、エレキをわかってらっしゃる!」ですよ。

相澤:ベンチャーズも加山さんも、桑田さんの音楽のDNAに入ってるんですね。

チャ:まさしく!……で、この曲めっちゃいい曲なんで、当時カヴァーが2種類同時に出たの。それがこの高田みづえ版と、ジューシィ・フルーツ版。

相澤:なるほど、競作カヴァーだったんですね。

チャ:きょうは“本家”の原由子版も含めて、3人の『ヒロシ』を当時の盤でじっくり聴き比べてみよう、ということで。
……さっそく高田みづえヴァージョンから、いってみよう!

(♪ターンテーブルに乗せて演奏)

相澤:うわー、まさしくエレキですね!(笑)いい!

チャ:イイでしょ? 音はもちろん80年代の音なんだけど、かつてのエレキ魂がしっかり継承されてるんだよね。

相澤:高田みづえさんって、結婚して引退されたんですよね?

チャ:そう、同じ鹿児島出身のイケメン大関・若嶋津(現・二所ノ関親方)と結婚して、そのまま相撲部屋のおかみさんになっちゃったの。すごい転身だよねー。……で、どうすか、このヴァージョンは?

相澤:まず、歌がうまいですよね……! そして原由子さんに近いものも感じます。可愛らしさと技術を兼ね備えているというか。

チャ:そうだねー。アレンジはどう? 編曲は若草恵さんで、演歌からポップスまで幅広く手掛けてる人だけど。

相澤:幅広い方に愛されるアレンジですよね! エレキ歌謡の個性は出しつつも、曲の良さを最大限に生かしているというか。歌詞も頭に入ってくるから、ドラマがイメージしやすいですね。

チャ:なるほど。オレはね、この高田みづえ版の『ヒロシ』は、けっこうチャラ男に見えて、でも決めるとこではビシッと「お前が好きだ」って臆面もなく言える、そんな男じゃないかと思うね。イメージは前田敦子を口説き落とした勝地涼(笑)。

相澤:チャラそうだけど、決めるところは決める。一番格好イイ男ですね!(笑)

チャ:んじゃ次は、ジューシィ・フルーツ版、いってみよう! これは自分たちでアレンジしてるけど、ジャケットを見てもらえればわかるように、もろGS調。ベンチャーズ風のフレーズも、これでもかっていうくらい、ガンガン入ってます。

相澤:きました! ニューウェーヴ界のレジェンド、ジューシィ・フルーツ! 早く聴きましょう!(笑)

チャ:オッケー!!

(♪ターンテーブルに乗せて演奏)

チャ:いやー、イリアさんの声、ほんとキュートだわ! オレの中では、ずっと憧れのお姉様なんだよね。

相澤:原さんのキュートさと、個人的にはいしだあゆみさんのトーンと語尾のサスティンを足したような贅沢なお声ですよね…。

チャ:ああ、あゆみさんとの共通点は確かにあるね! あとこれ、バンドサウンドに寄せてるけど、バンドを率いてる瞬くんとしてはどう思った?

相澤:個人的に大好物です! 曲によりけりですが、振り切って攻めた音像がとても好きなんですよね…。さっきの高田さんとまったくバランスが違ってボーカルも小さいし、何よりベースとドラムの主張が強い(笑)。

チャ:こういう企画のときって、ギターだけじゃなくて、リズムセクションも頑張っちゃうんだよねー。腕の見せ所だもんなー。

相澤:でも、このフレーズのループ感とかビートの強さが、ジューシィ・フルーツという感じで最高です!

チャ:オレはね、このジューシィ版の「ヒロシ」は、高田みづえ版よりクールな感じで、遊ばれても「ま、いっか!」って女のコが思っちゃうような……イメージは松坂桃李(笑)。

相澤:分かる!(笑)モテてモテて大変そう…!(笑)

■いちばんサイケな原由子ヴァージョン

チャ:さてさて、じゃ最後に本家の『ヒロシ』を聴いてみよう。サザン6枚目のアルバム『綺麗』の、A面6曲目に入ってます。当時のLPで聴いてちょうだい!

(♪ターンテーブルに乗せて演奏)

チャ:原坊の声も独特で、この人にしか出せない世界感というか、脱力感があるよねー。瞬くん、どう?

相澤:いやぁ唯一無二ですよね…! 僕はボーカルをかなり重視して聴いてしまう人なので、聴きやすい、というよりは「その人にしかない唄声」を持つ方が大好きです。原さんは、まさにそういう世界の頂点に君臨するお方ですよね。

チャ:そうねー。あとこの曲って、「サイケ」ってワードが突然入って来るじゃない。サイケな夏ってどんな夏なんだ?って思うけど、原坊の歌声って妙な説得力があって「ああ、そういう夏もあるよな」って納得できちゃうんだよ。これ、すごいことよ。

相澤:僕も自分の曲で、タイトルと歌詞にがっつり「サイケ」って入っている曲があるので、妙な親近感があります(笑)。サイケって個人的には、「ミラクル」くらい勝手に汎用性が高くてどこでも使える便利な言葉だと思っていて(笑)。

チャ:本来のサイケがどんなものか、みんなよくわかってないまま60年代に言葉だけ先に定着しちゃって、そのまんま今に至ってるような気がするよ。具体的に何を指すんだ?って聞かれても「サイケは……サイケだよ」としか答えられない(笑)。

相澤:「なんだか不思議で魅力的で、ちょっぴり刺激的で楽しくて」、みたいな感じでふわっとしてるのがいいですよね!「あーそんな夏ね!」みたいな妙な納得(笑)。

チャ:オレ、3つの中では、この本家ヴァージョンがいちばんサイケだなと思うし、原坊が歌うヒロシって、歌詞とは裏腹に、女性に手なずけられちゃってる気がするね。「しょせん、私の掌の上で踊ってんのよ、この人は」みたいな……イメージは佐藤健だなー。

相澤:たしかに!…要するに、全員どのヒロシもイケメンってことでいいですか?!(笑)

チャ:うん(笑)。てか、この本家版「ヒロシ」は、桑田さんが自分自身のことを投影して書いたのかもしれないね。原坊の掌で踊る桑田さん、みたいな。

相澤:いやー、同じ曲でもこうやって聴き比べると、ぜんぜん違う味わいがあって面白いですねー。今回も勉強になりました!

チャ:つうわけで、この流れでですね、次回は結成40周年! サザンオールスターズの曲について二人であれこれ話してみようかと。夏、終わっちゃいそうだからさ(笑)。

相澤:了解しました! ではまた来週!

チャ:「魔女Bar ハロウィン」狂夜さん、ありがとうございました! また寄らせてもらいますんで。われわれに場所貸してくれるお店も大募集中です!

……次回は、「サザンオールスターズのシングル曲」について、二人があれこれ語ります! お楽しみに!

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今回お邪魔したお店:「魔女バー ハロウィン」
東京都渋谷区恵比寿西1-2-7-3F
JR山手線・埼京線、地下鉄恵比寿駅西口より徒歩1分
営業時間:20:00~翌5:00 日曜も営業 基本休みなし
地図はホームページにて(道案内動画もあり)
http://majobar.com
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▼チャッピー&瞬コンビが、イベントやります!▼
9月23日(日) 神田 音STAGE
◆チャッピー加藤×相澤瞬の
それゆけ!“リアル”ドーナツ盤万博
「ドキッ!昭和を彩った男性アイドルスペシャル
~沢田研二・郷ひろみ・光GENJI~」

OPEN 18:30 / START 19:00
前売 ¥2,500 (1D別) / 当日 ¥2,800 (1D別)
出演/
チャッピー加藤 (放送作家)
相澤瞬 (プラグラムハッチ、ニュー昭和万博)
タカハシヒョウリ (オワリカラ、科楽特奏隊)

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【チャッピー加藤/Chappy Kato】

昭和42年(1967)生まれ。名古屋市出身。歌謡曲をこよなく愛する構成作家。好きな曲を発売当時のドーナツ盤で聴こうとコツコツ買い集めているうちに、いつの間にか部屋が中古レコード店状態に。みんなにも聴いてもらおうと、本業のかたわら、ターンテーブル片手に出張。歌謡DJ活動にも勤しむ。
好きなものは、ドラゴンズ、バカ映画、プリン、つけ麺、キジトラ猫。

【相澤瞬/Shun Aizawa】

昭和62年(1987)生まれ。千葉県出身。懐かしさと新しさを兼ね備えた中毒性のある楽曲を、類い稀なる唄声で届けるシンガーソングライター。どこまでもポップなソロ活動、ニューウェーヴな歌謡曲を奏でる「プラグラムハッチ」、 昭和歌謡曲のカバーバンド「ニュー昭和万博」など幅広く活動。
好きなものは、昭和歌謡、特撮、温泉、うどん、ポメラニアン。

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