トルコの野犬に導かれ、日本でセラピー犬と触れ合える場所を開設!

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【ペットと一緒に vol.105】
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トルコで野良犬を保護したことが、風間詠子さんの人生の転機になりました。今回は、セラピードッグと気軽に触れ合える施設を作り、心の病などを抱える多くの人々を人生の明るみに導いている風間さんのストーリーをご紹介します。


トルコで保護した犬が人生を変えた

25年間、海外生活をしていた風間さん。なかでも長年暮らしたトルコで、思わぬ出会いがあったと言います。

「トルコでは、富裕層がステータスシンボルのように大型の純血種を飼うんです。でも残念ながら、手に負えないからと捨てられる犬も少なくありません。街中ではレトリーバー種などが野犬化して群れで行動していたりもするんですよ。そんなトルコで初めて保護したのが、ゴールデン・レトリバーのディドです」。

ディドちゃんは、ウロウロと街を彷徨っていたのだとか。
もともと風間家の愛犬だった、ゴールデン・レトリバーのレオくんのお嫁さんになったディドちゃんは、子犬も産みました。

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子育てじょうずなディドちゃん

「ディドの娘犬のシャーベットはもう11歳で引退ですが、セラピードッグとしての適正がとても高く、日本の国立病院の緩和ケア病棟でも活躍していたんですよ。ディドとの出会いが、私がセラピードッグに関わる原点だったと言えますね」。

そう語る風間さんが、セラピードッグをハンドリングする“アニマルセラピスト”の資格を日本アニマルセラピー協会で取るきっかけになったのは、東日本大震災だったそうです。

「当時の被災した方々を、動物介在活動(アニマル・アシステッド・アクティビティ=AAA)でセラピー犬が励まし癒している姿を初めて見て、心を大きく動かされました。犬の力が、人の心をこんなにも癒せるなんて……、と。愛犬もセラピー犬になれるのではないかと思って、すぐに動き始めました。実は長らくペットロスに苦しんでいたのですが、そこから立ち直るきっかけにもなりましたね」(風間さん)。

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シャーベットちゃん(右)と兄弟のポンくん

セラピー犬を身近に感じてもらいたい

セラピードッグとともに活動を続けるうちに、風間さんは、より多くの人にセラピードッグのすばらしさを知ってもらいたいと思うようになったそうです。
「そこで思いついたのが、猫カフェのセラピー犬版とも言えるような場所を作ること」だそうで、こうして2012年10月10日神奈川県大和市に“人と犬との憩いの場所”がオープンしました。

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風間さんがトルコから連れて帰った犬たちもセラピー犬として活躍

ここは、常時10頭以上の様々な犬種のセラピー犬と、ソファが設えられたアットホームな空間で触れ合える施設。
「特に、ゆったりおおらかな大型犬が多いのが特徴ですね。もちろん、小型犬から大型犬まで、すべてがセラピー犬としてのトレーニングを積んでいて、すぐ近くにアニマルセラピストが待機しているので安心して触れ合っていただけます。
セラピー犬たちは、静岡県三島市にある“老犬ホーム&犬の牧場 富士の里”という姉妹施設の広大なドッグランで走ってリフレッシュするなど、心身の健康管理も行っています」。

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人が大好きなセラピー犬たち


うつ病や自閉症などが少しずつ改善

主には病院や老人ホームなどで行われる、アニマルセラピー。そのため、入院や入所をしていない場合はなかなかセラピードッグと関わるチャンスがないのも事実です。
けれども、“人と犬との憩いの場所”ならば、訪ねさえすれば誰でもセラピー犬たちと触れ合えます。

犬との触れ合いをとおして、うつ病が改善して減薬できたり、まったく笑わなかった方が笑顔を取り戻したり、引きこもりだった方がセラピードッグ育成のための募金活動に出て大声で呼びかけるようになったり、不登校だった生徒が学校に通えるようになったりするとのこと。

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訪れる人を笑顔にさせるセラピードッグたち

「セラピードッグには、主に自閉症の子どもさんと一緒に遊べる“療育犬”もいるんですよ。『人生が変わった』、『生き方が変わった』という感想も多く、この施設を作って本当に良かったと感じています」と、風間さん。

「なかには、自殺願望がなくなって生きる希望を得られたという方も。もともと人間不信に陥って生きづらさを抱えていたそうですが、決して人を裏切らず信頼を寄せる犬と過ごす時間を積み重ねるうちに、心がなごんでいったようです。長年カウンセリングに通っている方も、『人間のカウンセラーとは違う力を、犬は持っている』とおっしゃっています」と、風間さんは微笑みます。

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犬と触れ合うと、しあわせホルモンと呼ばれるオキシトシンが分泌されると言われています

もちろん、ただ単に、ペットや大型犬が飼育できない環境なので、犬と触れ合いたいという理由で訪れる人も多数いるそうです。

「セラピードッグをとおして犬のすばらしさが伝われば、犬が社会で受け入れられるひとつのきっかけにもなり、犬との共存が実現できると思っています。日本のすべての犬のために、これからも新たな取り組みを考えていきます」と、風間さんは語ります。

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看板セラピー犬のヨハンくんは、トルコで2015年に保護された野犬でした

連載情報

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ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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