仮想通貨・ブロックチェーンの本質とは?(1)

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【報道部畑中デスクの独り言 第77回】

「ブロックチェーン」という言葉が次世代社会のキーワードの一つとして浮上しています。
特にこの技術を活用した「仮想通貨」…ニュースで頻繁に耳にします。価格が乱高下したり、マネーロンダリングの温床になるといったネガティブな話題も多いですが、一体どういうものなのか。これは私たちの暮らしを変えるものになるのでしょうか?
取材途上でまだまだ足りないところもありますが、現在理解していることをお伝えしたいと思います。

「仮想通貨」…国や機関が管理している通貨とは違い、管理主体が存在しない通貨のことを言います。
ちなみに私たちが普段使っているおカネ=紙幣や硬貨は、「日銀券」「補助貨幣」であり、日本銀行の管理下にあります。乱暴な言い方をすれば、日銀という信用の下で、これらのいわば「紙切れ」「金属の塊」が価値あるものとみなされているわけです。

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仮想通貨は徐々に浸透してはいるが…(東京・新橋で撮影)

一方、仮想通貨はこうした管理主体、いわば「後ろ盾」がありません。
どうやって信用を担保するかは後に述べますが、仮想通貨として代表的なものは「ビットコイン」「リップル」「イーサリアム」など。インターネットの中でウォレットと呼ばれる「財布」をつくり、取引も電子テータとしてネット上で行われます。このネット上で取引できるというのも、仮想通貨の仮想通貨たる所以と言えます。

仮想通貨で、これまでメディアで主に話題になったのは、「投機対象」としてのものでした。
日々変動するものであるがゆえ、値上がり、値下がりで「儲かった」「損した」という現象は確かに起こります。特に昨今の不安定な値動きでは大儲けした人とともに、大損をした人も多いと思います。しかし、これは仮想通貨の持つ副次的な機能だと言えます。真骨頂と言えるのはズバリ「送金・決済機能」です。

インターネットという通信手段によって、文字、音声、画像、動画という情報という情報は、劇的に低いコストで世界中に送ることができるようになりました。
思えばインターネットがなかった時代は、文字・画像はFAX、音声は電話という方法で送信するしかなかったのですが、これらはご存知の通り、元の画質・音質のまま送ることは望むべくもありませんでした。ましてや動画に至ってはテレビ電話システム、放送局のような専門の設備が必要だったわけです。

それがいまや、YouTubeなどに代表されるように誰でも投稿=伝送できる時代となり、すっかり生活の中に溶け込んでいます。
ただ、そんなインターネットでも確立されていないことがありました。それは「経済的な価値」を移動する、簡単に言えば「送金=“おカネ”を送ること」です。

仮想通貨は、インターネットで直接“おカネ”を送ることを可能とするのです。現在はネット通販花盛りで、支払い・決済手段もネットバンキング、クレジットカード、代金引換、コンビニ支払など数々ありますが、これらはすべて円やドルなど既存の通貨がベースになっている、ここが大きな違いです。

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ビックカメラではビットコインによる決済も可能だ(インターネット通販のページから)

この送金・決済機能、個人かつ国内でモノの売り買いをしている場合はあまりピンときませんが、国際送金の場合、仮想通貨は大きくモノを言います。
当たり前のことですが、例えばアメリカで10ドルの商品を買うときは、10ドル相当の日本円(現在は1,100円前後)をドルに換えて購入することになります。その際、必ず為替による手数料が介在します。金額や銀行にもよりますが、それが5%前後と高かったり、手続きがすこぶる面倒だったりします。

仮想通貨を使うと、手数料はゼロにはならないものの、かなり安くなることが期待できます。これは単に支払いがお得になったというだけではありません。
例えば手数料が5%かかるということは、5%より低い利益率の企業は、売れば売るほど赤字になることを意味します。したがってこのような手数料を伴う取引には手を出せないわけですが、仮想通貨によって手数料が下がれば、これが可能になってくる。

つまり、利益率の低い零細企業や小口取引(これを「マイクロペイメント」と言います)のビジネスにも、商売の機会が広がる可能性があるのです。
そうなると、これまで埋もれていた新たなビジネスにもつながります。大企業中心の産業構造が大きく変わる可能性さえ出てきます。

経営統合で減っているとは言え、日本のような金融機関が整備されているところでは、あまりこの恩恵は感じないかもしれません。しかし、発展途上国ではインターネットさえあれば、どこでも国際ビジネスを展開できる環境が生まれ、実際にアフリカでは類似のシステムが確立された国もあるのです。

逆に、こうなることで影響が避けられないところが出てきます。それはつまり「手数料で稼いできたところ」、銀行などの金融機関ということになります。

折りしも低金利の時代、手数料という“食い扶持”を奪われかねない仮想通貨の出現に、一番戦々恐々としているのは、この金融機関かもしれません。金融機関の中には手を打ち始めているところもあり、例えば三菱UFJフィナンシャルグループは「MUFGコイン」という独自の仮想通貨を開発中です。
ただ、これは管理主体が金融機関自身になる見通しで、そうなると、管理主体のないビットコインなどとは性格が異なってくる可能性があるのですが…。これについては、また機会を改めたいと思います。

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