アナン元国連事務総長がノーベル平和賞を受賞したのはなぜか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月20日放送)ジャーナリストの須田慎一郎が出演。元国連事務総長アナン氏の功績と、当時の国連事務総長の選出方法の問題点を解説した。

アナン元国連事務総長が18日に死去

国連事務総長を2期10年勤めたコフィー・アナン氏が18日、80歳で死去した。アナン氏は西アフリカのガーナ出身で、国連職員出身では初めてトップの事務総長となり、協調外交やエイズなどの感染症、テロ対策への貢献が評価され、2001年に国連とともにノーベル平和賞を受賞している。

飯田)1997~2006年にかけて国連事務総長を勤めていました。イラクの核開発疑惑とか、あるいはイラク戦争もこの任期内であったのですよね。

須田)一旦はアメリカとイギリスによるイラク攻撃を食い止めたことを高く評価されている方です。

常任理事国の思惑に翻弄されずにイラク攻撃を食い止めた

須田)しかし、そもそも、「アナンさんが」ではなく、「国連事務総長が」です。日本語に直すと軽い肩書きにも聞こえますが、国連の事務方トップということで相当な実権を持っているポストです。その選ばれ方に注目していただきたいのです。
藩基文さんという方がいましたよね。第8代事務総長で、2016年末まで勤められていました。この代まで、実は国連安保理の非公開会合のなかで事務総長は決められていたのです。国連安保理、理事国の政治的な思惑のなかで決まってくる。すべての理事国が合意しなければ事務総長になれない。活動にも一定程度の制約が行われてきたのが実態でした。ちなみに、9代目以降は事前に立候補者を公募し、全立候補者出席のもとに公聴会を開き、最終的に安全保障理事会で決めるというのが現在の事務総長の選び方です。透明性が増しました。アナンさんの場合、非公開時代に決められた事務総長でした。「その割にはよくやったな」と評価できます。アメリカやイギリスのイラク攻撃についても一旦は食い止めた。そういう部分でノーベル平和賞を受賞された経緯があるのです。
「国連の事務総長」というと、ある意味でお飾り。藩基文さんの場合、いったい何をやったのか。あまり頭に浮かんできませんよね。それは別に個人の能力に問題があるわけではない。「選ばれ方」が理由です。安保理理事国の顔色を伺わなければならない経緯もあるわけですから。アナンさん死去のニュースがこれだけ大きく取り上げられているのも、「そうした経緯のなかで選ばれていながら、理事国の思惑に翻弄されたわけではなかった」という部分が評価されているのです。

事務総長に問われるのは理事国同士の意見対立の調整する手腕

飯田)アナンさんの前任(6代目)はガーリさん。通常は2期10年やる国連事務総長を1期で辞めました。アメリカの反対があったと言われています。ある意味でクビを飛ばされたのですね。

須田)アメリカの言うことを聞かなかったからね。

飯田)その後任であれば、アメリカにビクビクしながらやるのが普通だろうと思います。アナンさんはそうではなかった。

須田)ブッシュ・ジュニア大統領に対しても、相当強硬に出た、と聞いています。

飯田)確かに。9・11テロがあって。あれをニューヨークで目の当たりにした国連もそうでしたが、アメリカが怒り心頭になったときに、一旦は抑えたわけですからね。

須田)事務総長の役割は、理事国の意見対立をどう調整していくかなのです。常任理事国同士の意見対立は常に起こりますから。その辺が、手腕を問われるところです。
ただ、背景としては選ばれ方にいろいろ問題がある、ということも考えてもらっていいと思います。

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