報道部畑中デスクの独り言

宇宙でマウス飼育にドキドキ 金井宇宙飛行士独占インタビュー(2)

【報道部畑中デスクの独り言 第74回】

インタビュー風景

国際宇宙ステーションの長期滞在から今年6月に帰還した宇宙飛行士の金井宣茂さんがニッポン放送のインタビューに応じました。場所はJAXA=宇宙航空研究開発機構の東京事務所。前編では飯田浩司・新行市佳両アナウンサーによるインタビューをお伝えしましたが、インタビュー終了後、私も若干質問の時間をいただきました。

私も質問の機会をいただきました

日本の宇宙開発…当初は「宇宙へ行くこと」そのものがニュースになりましたが、昨今は「宇宙で何をするのか」「どんな成果を挙げるのか」が問われる時代になったと言えます。その一つが日本の実験棟「きぼう」での科学実験。たんぱく質結晶生成実験、静電浮遊炉による材料実験など、小欄でもお伝えしてきましたが、今回はマウスを使った実験も注目されました。

主任研究者の東北大学・山本雅之教授によると、今回の実験は「Nrf2」と呼ばれる遺伝子を欠失させたマウスを宇宙で“生活”させ、その変化を調べるというもの。この遺伝子がないと心筋梗塞や脳卒中になりやすく、紫外線にも弱くなるそうです。まさにマウスにとっては“拷問”のような宇宙生活ですが、マウスは全匹生きたまま宇宙から地球に帰還しました。遺伝子欠失のマウスの帰還は世界初だそうです。

実験の結果、これまでのところわかっているのはマウスの体重が増えなかったこと。宇宙からストレスを受けたことが原因ではないかということです。山本教授はこうした実験を重ねることで人間の健康寿命を延ばす手がかりを得たいと話していました。金井さんは実験装置の操作のほか、医師の経験を活かし、マウスの採血にも携わったそうです。

さて、質問の全編です。

毎日ドキドキしたマウス飼育ミッション

畑中)マウスの実験について、東北大の山本先生が「金井さんでよかった」と言っていました。
金井)光栄です。
畑中)そういう意味では金井さんらしい実験だったと思いますが、振り返ってみていかがでしたか?
金井)JAXAが計画しているミッションの中でも特に大きなものでしたし、それを無事に成功させて帰ってこられたのは、自分自身にとっても名誉に感じています。ミッション前にも山本先生の所にお伺いして、実験の内容でありますとか、意義について非常にお話しいただいてましたので、そういう先生の期待に応えることができたというのは本当にうれしいです。

マウスの飼育装置を紹介、「高性能」と金井さん(上)、マウス実験を解説(下)

畑中)金井さんにとってマウスはどういう存在だったのですか。ペットみたいなもの? 子供みたいなもの?
金井)いやいやいや、貴重なサンプルですかね。マウスに限らず、地球に届いた実験のサンプルって、ドキドキしながら手が震えるような思いで実験装置にセットするような感じでしたので、マウス飼育ミッション、30日ぐらいのミッションでしたけど毎日ドキドキハラハラで、ああもう大丈夫かなあって感じでしたね。
畑中)マウスの実験では、医者のプロフィールが生きたということはなかったですか?
金井)確かに患者さんみたいなもんですよね。マウス自身でなくても、機械に不具合があった時に、割と自信をもって…もちろん事前の訓練がよかったというのもあるんですが…自信をもって「こういう問題起こってない?」って自分から積極的に聞いたりとか。何か問題が起こった時に「じゃあこういうふうに対処しようと思うけど」と、地上が聞いてくる前に自分から対案を出すことができたり。そういう点では非常に、こう…パイロットでないがゆえにそういうところで、力を発揮することができたなあという風にも感じます。


日本はもはや米露の後を追っていればいいわけではない

畑中)金井さんの滞在中に「ISEF2(国際宇宙探査フォーラム)」がありました。地上では宇宙エレベータを2050年までに作ろうというようなお話が…。できると思いますか?
金井)どうでしょう…宇宙エレベータ、日本の中でも積極的に進めたいと真面目に開発、研究している方もいますので、そういう点では実現性はあるんじゃないかと思います。
畑中)宇宙開発分野で日本の存在感を出すには何が必要だと思いますか?
金井)結構、日本はがんばっているなと思っていて。宇宙開発の世界にまだ手を出していないアフリカの国とか、アジアの諸国に対して、先輩役としてほどよく手を貸してあげつつ、宇宙開発をするための若い世代を育てたりとか…。日本はもはや米露の後を追っていけばいいという存在ではなくて、リーダーがゆえに求められる責任というのはすごくあるなと感じていて。それに対して「きぼう」を使って、うまく責任を果たしつつあるんじゃないかなと、そういうふうに感じています。

宇宙をビジネスに活用するには…熱い議論となった

 

東京都内で7月26日に開かれた帰国報告会 宇宙での「縄跳び」を紹介

「家族の苦労の上で仕事をしている」と痛感した

畑中)(婚約者のつくる)大根の煮つけはあれから毎日召し上がっていますか?
金井)ハハハ、毎日は作ってくれないですね。でもおかげさまで…まあでも結構、まだ日本にいませんのでそういう点ではミッション中と変わらずにまだ“遠距離”ですね。
畑中)リハビリの時には「一人で生活を行うリズムが彼女もできてしまった」と。(金井さんが)少し寂しそうに見えたんですけど、その後いかがですか?
金井)少し持ち直しました。おかげさまで。
畑中)会話が大事?
金井)私個人だけの話でなく、宇宙飛行士って訓練で。ずっと家庭にいなくって「お父さんいつもいないね」っていうようなそういう生活で、ミッションに行ったらミッションに行ったでずっと宇宙にいて、子供の面倒を見なくって…。本当にいろんな先輩の宇宙飛行士の話を見るにつけて、サポートする家族の大変さっていうのをすごく感じているものですから。まだうちは子どもはいませんがそういう点で「あ、やっぱり家族って苦労して、その犠牲の上にわれわれは仕事をさせていただいているのだな」というのを強く感じて、ああいう風に発言させていただいたのですけども。

金井さん記者会見 記者の質問に答える

畑中)守るべき人が…という意味では、これから違う生活といいますか、これから違う人生が待っているという気もしますけど。
金井)うーーーーん。どうでしょう。このまま迷惑をかけ続けて宇宙飛行士として仕事をしていくんではないかなと、若干申し訳ないという気持ちでいっぱいなんですけど。
畑中)敢えて尻に敷かれてみようとか…?
金井)いやあ…畑中家はいかがなんでしょうか(笑)。そういう先輩の話を聞きながら参考にしたいと思いますけども。
畑中)ある時は(尻に)敷かれ、ある時は…。
金井)自分がリードをとる…。
畑中)まあ、何ていうんでしょうかね、支えてもらうというか。
金井)うーん。
畑中)そういう感じが一番いいんじゃないかと…何言ってるんだ私は!
金井)ありがとうございます。参考にしたいと思います。
畑中)どうも失礼いたしました、いつも「変化球」で…ありがとうございました。

…ちょっと悪ノリをしてしまいましたが、金井さんの言葉からは宇宙飛行士が家庭を持つことの大変さや覚悟を改めて感じます。そして、家族を含め、いろんな人に支えられて宇宙飛行士がある…現実をかみしめる金井さんの姿がありました。そういえば大西卓哉宇宙飛行士も家族について「さみしい思いをさせている。感謝している」と話していたことを思い出しました。

一方、帰国の間、金井さんは帰国報告会や記者会見に臨みました。
「私自身は現場の人間。一つ一つ自分の目の前に与えられた課題をこつこつとやっていくことしか皆さんの信頼を勝ち得ることはできないんじゃないかと考えている」
記者会見ではJAXAが信頼を得るため、なすべきことについての質問がありました。元JAXA理事が収賄の疑いで逮捕される事件にからんでのものでしたが、金井さんはこのように回答していました。

宇宙飛行士は時に国を背負う立場になり得ます。多くの人に支えられながらも、宇宙では「自分との戦い」であり、自らの判断力がモノをいう仕事だと思います。だからこそいかに雑念を排除し、目指すものに集中することが必要ですが、今回の不祥事が雑念につながるとすれば、残念なことと言えます。

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