富山駅「W7系北陸新幹線開業記念 特選ますのすし小丸」(1,300円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.11「源」編(8))

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】

W7系 つるぎ 北陸新幹線 新高岡~金沢間 新幹線 駅弁 弁当 小丸

W7系「つるぎ」、北陸新幹線・新高岡~金沢間

北陸新幹線を快走するW7系「つるぎ」号。
「かがやき」「はくたか」「あさま」「つるぎ」共に、E7系・W7系新幹線の12両編成です。
2つの車両に大差は無く、JR東日本(East)持ちがE7系、JR西日本(West)持ちがW7系で、ロゴの一部や車内で流れる自動放送のチャイムに違いがあります。
北陸新幹線は高崎~上越妙高間がJR東日本、上越妙高~金沢間がJR西日本のエリアとなっていますが、乗務員さんは全列車が停まる長野で交代しています。

株式会社源 源 源和之 社長 弁当 駅弁 ますのすし 小丸 鱒 ます

株式会社源・源和之社長

北陸を代表する駅弁の1つ、富山駅弁の「ますのすし」。
製造する「株式会社源」の源和之社長(40)は、ますのすしが有名になった理由について、昭和30年代から全国各地で開催された「駅弁大会」のお陰と話します。
目にすると思わず手に取りたくなる、大きく魚の「ます」が描かれたパッケージ。
あのユニークなパッケージは、一体、どうやって生まれたのでしょうか?

ますのすし 一重 株式会社源 源 弁当 駅弁 ますのすし 小丸 鱒 ます

ますのすし(一重)

●「ますのすし」パッケージ誕生秘話!

―今に続く、日本洋画壇の重鎮・中川一政画伯の「ますのすし」パッケージ・・・生まれたきっかけは?

昭和30年代まで、源の「ますのすし」は、富山の他のます寿しのお店と同じように、掛け紙をかけて紐で綴じるタイプでした。
今のパッケージに入れることになったのは、鉄道旅行が大衆化したことですね。
駅弁が「鉄道の中で食べる食」から大きく変化し、土産の要素を持つようになっていきました。
そこで、贈答用にも使うことが出来るように、あのパッケージが生まれたんです。

―考案されたのは?

三代目の源初太郎が考案しました。
当時交流があった中川一政画伯に「ますのすしを通して、富山のイメージが全国にいい形で知ってもらえるようにしたいから、協力してもらえないか?」ということを、住んでいらした能登へ足を運んで、お願いに行きました。
お願いしてから暫くは返事がなかったそうですが、3か月ほど経って急に電話がかかってきて、「ます2匹、持ってきてくれ!」とおっしゃったといいます。
慌てて持って行ったら、サッと描かれて、あの「ますのすし」の文字も書いて下さいました。
お陰で、今も色あせることのないパッケージとなっています。

ますのすし 製造風景 株式会社源 源 弁当 駅弁 ますのすし 小丸 鱒 ます

ますのすし製造風景

●100年を超えても、進化を続ける「ますのすし」!

―明治45(1912)年に誕生した「ますのすし」ですが、100年以上にわたって売れ続ける理由・・・分析されていますか?

それが分かったら、あと100年200年、間違いなく続きますね。
やっぱり、応援していただいている方々への感謝しかないです。
一生懸命、誠心誠意「ますのすし」をいただいている方を思い浮かべて、商品を作っている気持ちを、皆さんに評価していただいているのかなと思います。

―100年間をかけて、作り方で変わったところはありますか?

塩の加減、塩そのものも変化しましたし、酢漬けのタイミングや時間も大きく変わりました。
そして、より魚の脂の部分が美味しく感じられるような料理法に変わりました。
これは、日本人の味覚の変化が大きいですね。
昔の方は、魚の背の部分にあるような、筋肉質の部分をうま味として感じておられたのですが、最近は腹の部分、脂の部分が「おいしい」と評価されるようになってきました。
これに合わせて、「ますのすし」も変化しています。

源 富山駅 中央改札前 売店 株式会社源 源 弁当 駅弁 ますのすし 小丸 鱒 ます

源・富山駅中央改札前売店にて

●お客さま・従業員と一緒に作り上げる「ますのすし」

―「ますのすし」にもイロイロありますが、最近の売れ筋は?

最近は、この脂の部分を活かしたますの特別な部位を使って作っている「特選ますのすし」(画像・右)のほうが、よく売れていますね。
あと、多様な料理、多国籍な料理が溢れている東京では、「ますのいぶしずし」(1,650円)がよく売れています。
特に脂がのった食材を使って燻すと、香りが芳醇になりますので・・・。

―こういった味の方向性というものは、トップダウンで変えていったものですか? それとも現場の意見を取り入れて変えていったものですか?

お客さまとのコミュニケーションがすごく大切だと思っています。
対話を通じて、現場から上がってきた意見を取り入れていきます。
その結果、全体としての「ますのすし」の作り方も、毎年少しずつ変わっていきます。
私は駅弁業ではありますが、それ以上に観光業だと思っているんです。
「ますのすし」作りは、多くの方々に「富山にまた来たい、あるいは富山に住みたい」と感じて貰えるところまで高めたいという思いから始まっていますので・・・。
そんな思いを伝えられる店で、従業員と共に観光客の皆さまを迎え入れたいと思っています。

(源和之社長インタビュー、つづく)

W7系 北陸新幹線 開業記念 記念 特選ますのすし 小丸 ますのすし 弁当 駅弁

W7系北陸新幹線開業記念 特選ますのすし小丸

W7系 北陸新幹線 開業記念 記念 特選ますのすし 小丸 ますのすし 弁当 駅弁

W7系北陸新幹線開業記念 特選ますのすし小丸

最近の「ますのすし」の売れ筋、平成元(1989)年に発売された「特選ますのすし」。
このミニバージョンとして、平成27(2015)年3月の北陸新幹線開業を記念して誕生したのが「W7系北陸新幹線開業記念 特選ますのすし小丸」(1,300円)です。
中川一政画伯が描いたますの絵にW7系のラインカラーが入っているのはもちろん、側面には、パッケージの形状を巧く活かした新幹線が描かれているのも秀逸です。

W7系 北陸新幹線 開業記念 記念 特選ますのすし 小丸 ますのすし 弁当 駅弁

W7系北陸新幹線開業記念 特選ますのすし小丸

「特選ますのすし」は、より脂がのった濃厚な味わいが楽しめるのが特徴。
これを1人でも食べやすいように、小ぶりにしたのが「特選ますのすし小丸」です。
“濃厚”な味わいを出すために、一本のマスに少ししかない旨味が濃いとされる部位において、味・色・脂ののりなど、全てをクリアした身だけで作りあげたといいます。
通常の「ますのすし」と食べ比べれば、昭和~平成と日本人の味覚が変化した様子も、自分自身の舌で実感できるかも!?

W7系 北陸新幹線 開業記念 記念 特選ますのすし 小丸 ますのすし 弁当 駅弁

W7系北陸新幹線開業記念 特選ますのすし小丸

ラジオやテレビの長寿番組でもそうですが、急にガラリと内容が変わることは少なくて、長い目で見た時、日々変化を重ねて、“気が付くと変わっていた”というケースがよくあります。
100年続く駅弁にも、お客さんとのコミュニケーションを活かしながら、時代の変化を逃さず、進化を続けているという背景があります。
次回、源の駅弁作りのこだわりを、さらに“濃厚に”お伝えしていきます。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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