それゆけ!ドーナツ盤万博

ドン底を味わった「若大将」、帰ってくるのが本当のヒーロー!

第18回 「河崎実監督と語る“若大将ソング”」(その3)  

最近、ますます加熱するアナログ盤ブーム。そしてシングル盤が「ドーナツ盤」でリリースされていた時代=昭和の楽曲に注目する平成世代も増えています。
子供の頃から歌謡曲にどっぷり浸かって育ち、部屋がドーナツ盤で溢れている構成作家・チャッピー加藤(昭和42年生)と、昭和の歌謡曲にインスパイアされた活動で注目のアーティスト・相澤瞬(昭和62年生)が、ターンテーブルでドーナツ盤を聴きながら、昭和の歌謡曲の妖しい魅力について語り合いますが……今回もスペシャルゲスト・日本のB級映画の巨匠・河崎実監督が登場! 若大将トークもいよいよファイナル!


■ドン底を味わった若大将

チャ:さて、今回はカントクにも、若大将のアルバムを持ってきていただきました!

河崎:そうそう、コレはぜひ聴いてもらいたいね。大阪万博の年に出たアルバムなんだけど:


河崎: 『愛はいつまでも』……コレですよコレ!

チャ: 発売が1970年10月5日……若大将シリーズも終わりかけの頃ですよね。

河崎:そう、『リオの若大将』(68)のときなんか、加山はもう31歳なのに、映画の設定は大学生だったわけ。

相澤:メチャクチャ強引!(笑) 最高ですね…

河崎:設定に無理があるから、会社入ろうってことになって(爆笑)。
『フレッシュマン若大将』(69)『ニュージーランドの若大将』(69)『ブラボー!若大将』(70)っていう「社会人編」が作られるわけですよ。

チャ:30代の新入社員ってのも、ツライものがありますよねー。

河崎:で、若大将はもうヒーローじゃないから、フラれちゃったりするのよ。万能じゃなくなったんだよね。このスーパーヒーローじゃない若大将が、マニアにはたまらんのですよ!

相澤:若大将にも、そんな時代があったんですねぇ。

チャ:そんな頃に作られた、全曲、加山さん作曲、岩谷時子さん作詞によるアルバム『愛はいつまでも』。さっそくタイトル曲から聴いてみましょうか。

(♪アルバム演奏開始 『愛はいつまでも』)

河崎:これ、会社が倒産して、四面楚歌のときに作った歌なんだよ。挫折してるから、歌い方が切ないんだよねー。

チャ:あ、ホテルの件ですよね?

河崎:そう、サザンの歌にも出てくる『パシフィックホテル茅ヶ崎』の経営がうまくいかなくなって、借金を何十億と背負うわけ。周りにいた人たちも、みんな掌を返すように逃げちゃって、そばには後に嫁になる恋人しかいない、っていう状況だったの。

相澤:映画の中だけじゃなくて、実際の人生もそうだったんだ……哀愁がありますねえ。

河崎:でも明るいんだよ。そこが不思議なところで。しかもこの曲、セリフがいいんだよね。「生きるってツラいなあ……でも生きていかなくちゃ」みたいなことを言うわけよ。

チャ:「幸せだなぁ…」と同じ調子で「ツラいなあ…」って、笑っちゃいけないけど、ダメだ、つい笑ってしまう! 若大将、すいません!(笑)

相澤:若大将ってやっぱり、思ったままを発言するんですね…!(笑)。少年のようにいつまでもピュア…

河崎:思ったままを言わないとダメなんだよ。前回も言ったけど「何も考えてないのがヒーロー」なんだから。あと、このアルバムね、裏ジャケットも最高なんですよ。


相澤:いいですねー、このジーンズ姿!

チャ:てか、若大将、何に座ってるんだ?(笑)……そういや、さっき「嫁さん」って言いましたけど、結婚したのも確かこの時期でしたよね、加山さん。

河崎:そう、70年の9月に『エレキの若大将』で共演した松本めぐみっていう女優とロスで挙式するんだけど、借金取りに追われてるなかで結婚会見を開いたから、記者たちに「甘い甘い!」って責められちゃって(笑)。

チャ:でも逃げなかったところが、若大将らしいなぁ……。

河崎:そんな不遇の時期にできた歌ですよ。だから全部いいんだよ、このアルバム。

チャ:若大将シリーズも71年に終わっちゃうわけで、まさに人生ドン底の時ですよね。

相澤:そんな時期にこんな明るい曲を作れるって、スゴいなあ……しかもタイトルが『愛はいつまでも』って、その背景をふまえると、メチャクチャ深いですね!(笑)

河崎:一回ヒーローになるんだけど、ドン底までとことん落ちて、そこからまた帰って来るのが、本当のヒーローなんですよ。若大将シリーズも、終わって10年後に『帰ってきた若大将』(81)ってのができるわけ。

相澤:ホントに帰ってきたんだ!(笑)

河崎:『帰ってきたウルトラマン』『帰ってきた座頭市』……(笑)帰ってこなきゃヒーローじゃない、っていうね。若大将も、満を持して帰ってきたんですよ。とどろく叫びを耳にして(笑)。

(♪『見せたい恋人』)

河崎:この『見せたい恋人』って曲もイイんだよ。

相澤:これまた、すごいタイトル…!中々、日常生活で登場しないパワーワードですね…。

河崎:タイトルそのまんまで「自分の彼女があまりに可愛いんで、周りの奴らに見せつけて、羨ましがらせてやろう」っていう歌なんだけどね。

相澤:「ダンスで組むのは僕だけ、やきもちやかせよう」って、最高です!(笑)

河崎:そうなんだよ、このアルバム、ヘンな歌いっぱいあるんだよ。

チャ:てか、そんな借金背負ってるときに作る歌じゃないですよね? さすが若大将!

河崎:で、この『見せたい恋人』でA面が終わるんだけど、続くB面の1曲目がまた最高なのよ……『追いつめられて』。

チャ・相澤:(爆笑)

相澤:恋人をさんざん見せびらかした直後に、「追いつめられて」って、その落差がスゴい!

河崎:実はこれね、作詞の岩谷時子さんは、加山の追いつめられた状況を知らずに書いたんですよ。

チャ・相澤:えー!!

河崎:詞を書いたのは、借金問題が起こる前だからね。加山が「岩谷さんは超能力者じゃないか?」って言ったそうだけど、作詞家って何かスピリチュアルなものを持ってるのかもしれないね。

チャ:いやー、しかし深いですね、このアルバム。

河崎:オープニングを飾るA面1曲目の『美しいヴィーナス』も傑作で、コンサートでもよく歌ってるんだけど、「♪たとえー」のところで、限界を超えた音域が堪能できるんで、そこもぜひ聴いてもらいたいね。

■恥ずかしいことを堂々と言えるのがスター


チャ:カントク、あともう一枚いってみましょうか。

河崎:じゃ、原点ということでこれを。


チャ:1966年1月5日発売のアルバム『加山雄三のすべて』。この真っ赤なジャケットがイイですよねー。

河崎:最初に言ったように、この年の正月映画は『エレキの若大将』と『怪獣大戦争』。TVでは『ウルトラマン』が始まって、夏にビートルズが来日……そんな明るい時代を象徴する「赤」だよね。結局いつになっても、この1966年の焼き直しなんだよな。

チャ:さっそく聴いてみますか。

(♪アルバム演奏開始 『加山雄三のすべて』)

チャ:僕、このA面1曲目の『恋は紅いバラ』(=『海の若大将』(65)主題歌)が好きなんですよ。シングルも持ってますけど。

河崎:『君といつまでも』のベースになった曲で、ここに若大将ソングの原点があるんだよね。あと最高なのが、2曲目のこれ!

(♪『ブラック・サンド・ビーチ』)


河崎:ベンチャーズの『ダイヤモンド・ヘッド』に対抗して作ったエレキインスト『ブラック・サンド・ビーチ』……ベンチャーズに全然ヒケを取ってないよね。

相澤:これ、加山さんが弾いてるんですか?

河崎:そうそう。ベースもドラムもいいんだよ! 当時はこれを聴いて、みんな海に行ってたの。

相澤:でも加山さんのギター、歌ってる方だから、音色にも「歌心」があっていいですね。

河崎:裕次郎や小林旭も歌ってたけど、自分で曲を作ってなかったからね。加山は音楽も本格的で、自分で曲書いて演奏して歌ってたから、みんなビックリしたんだよ。

チャ:そんな若大将に憧れて、日本にもシンガーソングライターがどんどん生まれていったわけで、やっぱ「66年が元年」なんだなー。……いやー、カントク、きょうは勉強になりました! これ、100時間ぐらい話できますね(笑)。

河崎:いくらでもするよ。詳しいのは若大将だけじゃないから、いつでも呼んでよ!

チャ:瞬くんもチョイ役で出てる、河崎カントクの最新作『シャノワールの復讐』ですけど、これも楽しみです。公開はDVDリリースなんですよね?

河崎:11月発売の予定だけど、その前に上映会もやるから、ぜひ観に来てよ!

チャ:今回、主演が地下アイドルの姫乃たまさんじゃないですか。そのつながりで、僕がライヴ追っかけてる天才・町あかりさんも出てたり、カントク、見付けてきますよねー。

相澤:しょこたん(中川翔子さん)や、斎藤工さん、壇蜜さんもそうですよね。

河崎:まあ、「コイツだ!」っていう嗅覚がないと、映画監督なんてできませんよ。映画って結局、客を呼ぶのは監督じゃなくて、キャストだからね。

チャ;確かに。あと、そのキャストに、いかにハマる役柄を与えられるかっていうとこですよね。

河崎:そう。加山雄三も「若大将シリーズ」という企画があったからブレイクしたわけでね。東宝もね、『大学の若旦那』とか『お姐ちゃんシリーズ』とか、それまでの企画をぜんぶ足して生まれたわけ。そのへんの奴が、ポッと考えた企画じゃないんだよ。そこがイイんだよね。だから深いんだよ。

チャ:でもさっきの、若大将はずっと「陽」だったんじゃない、ドン底の時代もあったって話は重要ですよね。いや、つい笑ってしまったけれども(笑)。

河崎:若大将ソングのセリフってね、みんな笑うけど、恥ずかしいことを言おうと思っても、みんな言えないわけじゃない。そこを言う加山雄三は、やっぱりスターなわけだよ。

チャ:納得の〆、ありがとうございます! 河崎カントクの最新作については、公式サイトでチェックしてください。
カントク、どうもありがとうございました!……じゃ最後にもう一回!

三人:ヨッ!!(若大将ポーズ)


……次回はチャッピー&瞬コンビが再び二人で、ドーナツ盤を聴きながらあれこれ語ります! お楽しみに!

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今回お邪魔したお店:「大陸バー 彦六」
東京都杉並区高円寺北2-22-11-2F
JR中央線・総武線高円寺駅北口より徒歩4分
営業時間:金・土 18:00~26:00 日・月・水・木 18:00~24:00
火曜定休 地図・ライブ予定などはホームページにて
http://www.ukuleleafternoon.com/hiko6/

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▼相澤瞬 おすすめライブ情報はこちら!▼
8月12日(日)吉祥寺シルバーエレファント (ニュー昭和万博)

◆ニュー昭和万博 レコ発ディナーショウ
レコ発 ワンマンディナーショウ
「新人類の進歩と調和 2018」
開場18:00/開演19:00
前売券 ¥2,500(1D別) / 当日券 ¥10,000(5D別)

■前売券のご予約はnewshowa@gmail.com、吉祥寺シルバーエレファント店頭、Twitterで受付中!

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【チャッピー加藤/Chappy Kato】

昭和42年(1967)生まれ。名古屋市出身。歌謡曲をこよなく愛する構成作家。好きな曲を発売当時のドーナツ盤で聴こうとコツコツ買い集めているうちに、いつの間にか部屋が中古レコード店状態に。みんなにも聴いてもらおうと、本業のかたわら、ターンテーブル片手に出張。歌謡DJ活動にも勤しむ。
好きなものは、ドラゴンズ、バカ映画、プリン、つけ麺、キジトラ猫。

【相澤瞬/Shun Aizawa】

昭和62年(1987)生まれ。千葉県出身。懐かしさと新しさを兼ね備えた中毒性のある楽曲を、類い稀なる唄声で届けるシンガーソングライター。どこまでもポップなソロ活動、ニューウェーヴな歌謡曲を奏でる「プラグラムハッチ」、 昭和歌謡曲のカバーバンド「ニュー昭和万博」など幅広く活動。
好きなものは、昭和歌謡、特撮、温泉、うどん、ポメラニアン。

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