それゆけ!ドーナツ盤万博

岩谷時子が支えた「若大将ソング」

第17回 「河崎実監督と語る“若大将ソング”」(その2)

最近、ますます加熱するアナログ盤ブーム。そしてシングル盤が「ドーナツ盤」でリリースされていた時代=昭和の楽曲に注目する平成世代も増えています。
子供の頃から歌謡曲にどっぷり浸かって育ち、部屋がドーナツ盤で溢れている構成作家・チャッピー加藤(昭和42年生)と、昭和の歌謡曲にインスパイアされた活動で注目のアーティスト・相澤瞬(昭和62年生)が、ターンテーブルでドーナツ盤を聴きながら、昭和の歌謡曲の妖しい魅力について語り合いますが……今回もスペシャルゲストが登場!


チャ:幸せだなァ……河崎カントクと呑みながら若大将トークができるなんて……こんにちは、チャッピー加藤です。

相澤:僕も幸せだなァ……こんにちは、相澤瞬です。

チャ:というわけで、今回も「日本が誇るB級映画の巨匠」河崎実カントクと高円寺「彦六」で呑みながら、若大将ソングについて語っていこうと思います。カントク、今回もよろしくお願いします!

河崎:ウン、前回は映画の話になっちゃったから、今回はどんどん曲をかけようよ。

チャ:そうですね。前回は『エレキの若大将』の話で終わったんで、まずは、王道のこの曲からいきますか。


■岩谷時子が支えた「若大将ソング」


チャ: 1965年12月5日発売、映画『エレキの若大将』の主題歌で、皆様よーくご存じの『君といつまでも』。ジャケットでもエレキを抱えております。では、さっそく……。

(♪ターンテーブルで演奏)

河崎:売り上げ500万枚とも言われてるけど、これ、すごく歌うの難しいんだよね。音域がずっと高くなってくし。

相澤:確かに、ちょっとハードル高いですね。

河崎:この歌、ゴマキ(=元モーニング娘。後藤真希)もカヴァーしてるんだけど、「難しいです」って言ってたな(笑)。高度経済成長を象徴する歌なんだよね。

チャ:65年から66年って、東京オリンピックが終わった後で、まさに高度成長期の真っ只中ですよね。

河崎:うん、オリンピック以降、高度成長にかげりは見えていて、大阪万博(1970)の後に破綻するんだけれど、この頃はまだ「幸せだなァ…」って言ってられたんだよ。

チャ:なるほど、この時代に生まれるべくして生まれた歌、とも言えますね。

河崎:あと、詞もいいんだよ。情景が浮かぶもの。やっぱり、岩谷(時子)さんの存在は大きかったよね。

相澤:岩谷時子さんって、ジュリーのときにも名前が出て来ましたけど、どんな方なんですか?

河崎:もともと東宝の社員で、越路吹雪さんのマネージャーだったんですよ。

チャ:越路さんのマネージャーを務めながら、加山さんや他の歌手にもヒット曲を書いてたって、凄いことですよね。

河崎:そう。B面の『夜空の星』も、『お嫁においで』も『旅人よ』も『蒼い星くず』も、主要なヒット曲は、みんな岩谷さんの作詞だから。この人抜きには、若大将ソングは語れないですよ。

(♪ドーナツ盤ウラ返して→『夜空の星』演奏)

チャ:いやー、いいわー!『エレキの若大将』の「エレキ合戦」のシーンで、これ演るんですよね。

河崎:そうそう。若き日の(内田)裕也さんが「レディースアンドジェントルメン!」なんつって、司会役で出てきてね。

チャ:若大将がバンドを結成するシーンで、たまたま出前持ってきたそば屋の寺内タケシさんが「オレもギター弾けるョ!」ってメンバーに入るシーン、あるじゃないですか? あれ好きなんですよ!

河崎:たかが出前持ちなのに、めちゃくちゃギターが上手いんだよね。だって、寺内タケシだから(笑)。

チャ:だから、サクッとメンバーが揃っちゃうのよ。

相澤:バンドのメンバー集めって、大変なのに……羨ましい!(笑)

河崎:で、この曲をバックに、バスに乗って日光へ営業に行っちゃうんだよね(笑)。

チャ:植木等さん主演のクレージー映画もそうだし、カントクの映画もですけど、そういう調子いい展開、大好きです!

河崎:映画だからね(笑)。この頃ってのは、映画界がホントにいい時代で、カネがあったんですよ。衣裳も全部特注で、借り物なんて一切ナシだよ。

相澤:へー! でもこの『夜空の星』、メッチャいい曲ですね!

チャ:実はこれ、加山さんが初めて作曲した曲なのよ。

河崎:そう、14歳のときね。

相澤:えー! そんな早熟だったんだ。これと『君といつまでも』がA面・B面ってスゴいですね!

チャ:あ、もう曲、終わっちゃった(笑)。この頃の歌って短くて、だいたい2分台なんだよなー。これなんか2分28秒だよ!

相澤:早っ!(笑)僕も曲を書くときは、できる限り短くしようとしてます。なんとか4分以内に収めるのがモットーですね。

河崎:そりゃいい傾向だね。最近の曲とか、映画もそうだけど、みんな長いんだよ。イラつくよね。

チャ:同感です。加山さんと、カントクの映画を見習えと(笑)。


■超レア曲も!「若大将のクリスマス盤」


河崎:(レコードの山見ながら)……おー、これは珍しいね! 帯が付いてるじゃないですか!


チャ:これ、神保町の中古盤店で見付けて「オッ」と思って買ったんですよ。実は、同じ盤をすでに持ってたんですけど(笑)。

相澤:この帯って、賞を獲ったあとに付けたんですか?

チャ:そう。なんたってレコ大の「特別賞」だから。当時は年末に賞獲ると、こうやってレコード会社が特別な帯を入れたりしてたのよ。

相澤:へー。しかし加山さんって、サンタのコス着ても、右手挙げるポーズは同じですね(笑)。しかもこれ、1枚に4曲も入ってるんですか?

チャ:あ、これ、「コンパクト盤」っていうのよ。サイズはドーナツ盤と同じ7インチ(=17cm)なんだけど、片面2曲入ってるんで、回転数が45回転じゃなくて、LPと同じ33回転1/3なの。

河崎:あー、45回転とか、33回転とかあったねー。懐かしい。

チャ:でもカントク、30代以下の人に「回転数」の話をすると「はぁ?」って顔をされるんですよ。CDは切り換えないですから。

相澤:回転数を間違えてかけて、早回しの歌が流れてきたら衝撃ですよね(笑)。

チャ:でも、オレみたいなウッカリ者は、ついクセで45回転でかけちゃうんだよ。そうすっと、異常に早口な歌が流れてくるわけ(笑)……そういえばカントク、その原理を応用した曲が、このコンパクト盤に入ってますよね?

河崎:そうそう、よく知ってるねー!『ぼくのクリスマス』っていう曲だけど、これはスゴいですよ。テープ早回しのレコーディングを、66年にいち早くやってるんだから。

相澤:へー!! 聴きたいです!

チャ:瞬くん、『帰って来たヨッパライ』(ザ・フォーク・クルセダーズ)は知ってるでしょ?あれと一緒で、ゆっくり低いキーで歌っといて、テープの再生速度を上げるとカン高い声になる、っていう手法を使ってるんだけど、まあ聴いてみて。

(♪ターンテーブルで『ぼくのクリスマス』演奏)

相澤:あー、早回しの声と、通常の加山さんの声がデュエットしてるんだ!面白い!

チャ:クリスマス盤ならではの遊びだけど、フォークルの『ヨッパライ』が大ヒットしたのが67年。加山さんのは66年だから、こっちのほうが早いわけ。早回しとか多重録音とか、斬新なことをもうやってるわけよ。

相澤:若大将は、先端行ってたんですね。

河崎:このコンパクト盤、A面もいいんだよね。『クリスマス・イブ』って曲はオリジナル曲なんだけど……

(♪ドーナツ盤、ウラ返して)
河崎:あー、いいなあ、これ! この曲、CDになってないんです。このコンパクト盤でしか聴けないんだよね。

チャ:あ、そうなんですか? コレ、ますます貴重盤ですね。

河崎:当時って、スターは、みんなこういうクリスマス盤を出してたんですよ。(石原)裕次郎とか、オバケのQ太郎とか……

チャ・相澤:オバQ!(笑)

河崎:アニメのキャラとか、ウルトラマン、仮面ライダーに橋幸夫も、クリスマスにみんな歌ってた(笑)。今、そういう文化はなくなったねー。

(♪そのまま流れで、A面2曲目『ジングル・ベル』に)

河崎:(子どもたちのコーラス聴いて)いやー、童心に返るなー。

チャ:これ、子どもたちと一緒に歌ってますけど、つくづく思うのは、加山さんって幸せそうに歌いますよね? 瞬くん、こういうハッピーな歌い方って、なかなかできなくない?

相澤:なかなか、できないと思います!

河崎:あのね、スーパースターってのは、何も考えてないんですよ!

チャ・相澤:(爆笑)

河崎:考えてたら、こんなの歌えるわけないって! あと、小林旭とかね。ウルトラマンもそうだよ。ハヤタ隊員が乗り移られて、ウルトラマンに変身してるわけでしょ。マトモに考えてたらできるわけないじゃん!

チャ:確かに(笑)。

河崎:スーパーヒーローは何か考えちゃダメなんですよ。若大将も何も考えてないから。

チャ:何も考えてないといえば、この66年に、ザ・ビートルズが来日したじゃないですか。加山さん、ビートルズに逢ってるんですよね。彼らが泊まってるホテルに行って、警備がメチャクチャ厳重なのに「どうも!」って素通り(笑)。

河崎:そうそう、警備員も通しちゃったんだよね、若大将だから(笑)。

チャ:ヤバイ、たった2枚で、またこんなに話しちゃった(笑)。カントク、すいません、もう1週、おかわりイイですか?

河崎:いいですよ。じゃ、ビールもおかわり!(笑)

……次回もスペシャルゲスト・河崎実さんとともに、若大将ソングについてあれこれ語ります! お楽しみに!

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今回お邪魔したお店:「大陸バー 彦六」
東京都杉並区高円寺北2-22-11-2F
JR中央線・総武線高円寺駅北口より徒歩4分
営業時間:金・土 18:00~26:00 日・月・水・木 18:00~24:00
火曜定休 地図・ライブ予定などはホームページにて
http://www.ukuleleafternoon.com/hiko6/

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▼相澤瞬 おすすめライブ情報はこちら!▼
8月12日(日)吉祥寺シルバーエレファント (ニュー昭和万博)

◆ニュー昭和万博 レコ発ディナーショウ
レコ発 ワンマンディナーショウ
「新人類の進歩と調和 2018」
開場18:00/開演19:00
前売券 ¥2,500(1D別) / 当日券 ¥10,000(5D別)

■前売券のご予約はnewshowa@gmail.com、吉祥寺シルバーエレファント店頭、Twitterで受付中!

【チャッピー加藤/Chappy Kato】

昭和42年(1967)生まれ。名古屋市出身。歌謡曲をこよなく愛する構成作家。好きな曲を発売当時のドーナツ盤で聴こうとコツコツ買い集めているうちに、いつの間にか部屋が中古レコード店状態に。みんなにも聴いてもらおうと、本業のかたわら、ターンテーブル片手に出張。歌謡DJ活動にも勤しむ。
好きなものは、ドラゴンズ、バカ映画、プリン、つけ麺、キジトラ猫。

【相澤瞬/Shun Aizawa】

昭和62年(1987)生まれ。千葉県出身。懐かしさと新しさを兼ね備えた中毒性のある楽曲を、類い稀なる唄声で届けるシンガーソングライター。どこまでもポップなソロ活動、ニューウェーヴな歌謡曲を奏でる「プラグラムハッチ」、 昭和歌謡曲のカバーバンド「ニュー昭和万博」など幅広く活動。
好きなものは、昭和歌謡、特撮、温泉、うどん、ポメラニアン。

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