日本一のおんせん県・大分で食べる、九州一「悔しい」駅弁!~大分駅「豊後水道味めぐり」(618円) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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大分駅から乗り込むのは、JR豊肥本線(ほうひ・ほんせん)の豊後竹田(ぶんご・たけた)行。
豊肥本線は、大分(豊後)から、世界有数の巨大なカルデラである阿蘇のカルデラの中を通って、熊本(肥後)の間を結ぶ路線です。
4月の熊本地震では熊本側で甚大な被害を受けてしまい、今も肥後大津(ひご・おおづ)~阿蘇間が運転を見合わせています。
ただ、7/9には大分・熊本県境が復旧、阿蘇へは大分側から鉄道アクセス出来るようになりました。
今回はこの豊肥本線に乗って、大分の内陸部「竹田市(たけたし)」にある、日本が世界に誇る素晴らしい温泉を目指します。

大分県竹田市の旅情報サイト『タケタン』 :http://www.taketan.jp/

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温泉へ行く前に、まずはキハ200系の車内で大分駅弁をいただいて腹ごしらえ。
今回は大分駅弁「寿し由」の「豊後水道味めぐり」(618円)をご紹介しましょう。
この駅弁は、平成26(2014)年に行われた「第10回九州駅弁グランプリ」で準優勝を果たした駅弁。
「寿し由」は初エントリーで「2位」、十分立派だと思うんですが、「2位じゃダメなんです!」という思いが強くて前回紹介した「山海三昧」の開発に繋がったと伝えられています。
”負けて悔しい!”ということは、相当な自信作だった筈なので、この駅弁にも期待が持てそう!?

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横に細長い駅弁の掛け紙を外すと、地元産のアジ、サバ、鯛を中心に6カンずらりと現れました!
天候・漁獲によっては大分県外産を使うこともあるという但し書きがありますが、原則として魚は大分産、米も大分産ひのひかりを使用。
「寿し由」は元々、地元公設市場の場内にある寿司屋さんなので、普通に「寿し」として美味しい!
大分~博多間で乗車時間・2時間と計算すれば、車内でサクッといただく分にはこのくらいの量が有難い感じがします。
大分の温泉に宿泊した前後でいただくにも、宿でいっぱいご飯を食べることを考えれば十分ですね。

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第10回大会で「寿し由」は寿司屋さんということで、十八番の「寿し」で勝負したのでしょう。
でも、ただの「寿し」なら”駅弁”である必要性はあまりなく、コンビニやスーパーの惣菜売り場との差が付きにくいもの。
この時は自前の肉屋さんを持つ、武雄温泉駅(佐賀)・カイロ堂の「佐賀牛 極上カルビ焼肉弁当」に惜敗して「2位」になってしまった訳です。

私自身、第9回「九州駅弁グランプリ」の決勝大会を、ニッポン放送制作の番組で取材、審査に参加したことがあるのですが、実は大票田は福岡のメディアの記者。
この記者たちに駅弁のミニチュアを試食してもらう際、インパクトのある食材が無いと「勝てない」という事情がありました。
恐らくそれを見て、当時連覇を続けていた「佐賀牛に勝ちたい!」という強い思いから、翌年の「湯布院牛」の開拓に繋がっていったものと推察されます。
そのお陰で「寿し(豊後水道味めぐり)」から「駅弁」へと昇華を果たし「山海三昧」という作品が出来たのかな・・・とも。

JR九州は観光列車を「デザイン&ストーリー列車(D&S列車)」と呼んで「乗ることそのものが忘れられないイベントになる列車」と位置付けています。
その意味では、とかく九州においては「駅弁」にも「デザイン&ストーリー」「食べる(買う)ことがイベントになる」という高いクオリティが求められているのかも。
ぜひ大分駅弁を買う場合には「豊後水道味めぐり」→「山海三昧」と食べ比べて、「寿し由」さんに生まれた「悔しさから喜びへのストーリー」と一緒に味わってみてはいかがでしょうか?

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さて、豊後竹田駅前から乗り継ぐのは、竹田交通バスの直入(なおいり)行。
豊後竹田駅~直入間は地方にしては比較的本数が多い路線で、概ね1時間に1本の運行があります。
しかも便によっては路地のような狭隘道路を通るものもあり、路線バス好きにはたまらない路線でもあります。
このバスに40分あまり揺られて目指すのは・・・「長湯(ながゆ)温泉」!
実はココにその名の通り「長湯」にピッタリ、しかも夏に入りたい温泉があるんです!!

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やって来たのは、長湯温泉にある外湯の「ラムネ温泉館」。
外湯と聞くと鄙びた雰囲気を思い浮かべる人がいるかもしれませんが「ラムネ温泉館」は違います!
とてもお洒落な外観が目を引きます。
建築を手がけたのは、東京大学名誉教授で建築家の藤森照信(ふじもり・てるのぶ)さん。
今から10年あまり前、平成17(2005)年にオープンしました。

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「ラムネ温泉館」には内湯と露天風呂の2つがありますが、是が非でも入りたいのは「露天風呂」。
このお湯こそ「ラムネ」の名に相応しい「炭酸泉」・・・つまりあのシュワ~っとする「炭酸」が入った温泉なのです。
露天風呂に注がれている「ラムネ1号泉」は、32.3℃の含二酸化炭素ーマグネシウム・ナトリウム・カルシウムー炭酸水素塩泉。
成分総計(温泉に溶け込んでいる温泉成分の合計)3,662.1mg/kgのうち、遊離炭酸が1,380mg/kgも・・・。
温泉専門家の方によると「あまりに炭酸が多すぎて屋内で入るには危険」なため「露天風呂でしか入れない」温泉なのです。
さあ、どのくらい炭酸が多いのか・・・ラムネ1号泉に浸かって10分もしますと?
(画像提供:長湯温泉・大丸旅館)

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見よ!この肌にビッチリ付いた「炭酸」!!
「ラムネ温泉」は32℃しかないので、必然的にお湯の中でじっとしてジワジワ温まって来るのを待ちます。
その間に体には膨大な「炭酸」が付着して、傍目には体が真っ白になっていくんです。
そしてついに我慢できなくなり体を動かすと「シュワ~ッ!」という音と共に、泡が一斉に離れていきます。
コレが「ラムネ温泉」におけるこの上ない快感!!!
当然、飲泉も可能な温泉です。(建物外に飲泉所があります)
ちなみに温泉に詳しい方によれば、ぬるい「炭酸泉」で体が温まるのは、水に溶けた二酸化炭素の体内への侵入を人の体が阻止しようとするため。
皮膚の辺りで「二酸化炭素出てけ!」とバトルをやってるうちに、だんだんと血のめぐりがよくなって体がポカポカしてくるのだそうです。

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この「ラムネ温泉館」、実は長湯温泉の「大丸(だいまる)旅館」の外湯という位置づけです。
「大丸旅館」は大正6(1917)年創業、来年で100周年を迎える長湯温泉の老舗宿。
与謝野鉄幹・晶子夫妻、大佛次郎、徳富蘇峰といった多くの文化人に愛されてきた宿でもあります。
館内には落ち着いた雰囲気の和室、料理も美味しく程よい量で出されます。
またチェックイン、チェックアウトに合わせて「大丸旅館」の前に竹田駅発着の路線バスが停まってくれるのも有難いものです。
(竹田駅13:07発、長湯10:13発、休日は9:16発)

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また「大丸旅館」の内湯「テイの湯」も素晴らしく、48.9℃のマグネシウム・ナトリウムー炭酸水素塩泉が掛け流し。
川のせせらぎを聞きながら、成分豊富な熱めのお湯でじっくり温まるのもまたいいですね!
なお「大丸旅館」に宿泊すると、もれなく「ラムネ温泉」にも入り放題!
私としてはぜひ長湯に泊まって、両方のお湯を楽しんでほしいと思います。
そう!夜の「ラムネ温泉」露天風呂はライトアップされた幻想的な雰囲気の中、水中の「炭酸」がキラキラ輝きます。
コレはきっと長湯でしか見られない景色ですよ!!

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豊肥本線・豊後竹田~阿蘇間は、運転を再開した「九州横断特急」で40分あまり。
県境を挟むため、普通列車の本数は少なめですが、宮地駅・阿蘇駅までは運行が再開されています。
また、阿蘇~黒川温泉方面への道路は通れるほか、熊本方面へのう回路も通れる様子。
せっかく長湯まで来たら、阿蘇・黒川エリアと組み合わせた旅もおススメです。(※マップ)

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)

【ごあいさつ】
はじめまして、放送作家の望月崇史(もちづき・たかふみ)と申します。
ニッポン放送には、昔の有楽町の社屋の頃から、かれこれ20年お世話になっています。
最近では、月~木・深夜24時からの「ミュ~コミ+プラス」で放送された、
ルートハンター」のコーナーに、5年ほど出演させていただきました。

そんな私がライフワークとしているのが「駅弁」の食べ歩き。
1年間に食べる「駅弁」の数は多い年でのべ500個。
通算でも4500個を超えているものと思います。
きっかけとなったのも、実はニッポン放送の番組。
2002年~05年に放送された「井筒和幸の土曜ニュースアドベンチャー」の
番組ウェブサイトで「ライター望月の駅弁膝栗毛」を連載することになり、
本格的に「全国の駅弁をひたすら食べまくる生活」に入りました。
以来、私自身のサイトや、近年は「ライター望月の駅弁いい気分」というブログで
「1日1駅弁」を基本に「駅弁」の紹介を続けています。
”駅弁生活15年目”、縁あってニッポン放送のサイトで連載させていただくことになりました。
3つの原則で「駅弁」の紹介をしていきたいと思います。

①1日1駅弁
②駅弁は現地購入
③駅弁のある「旅」も紹介

「1日1駅弁」ですので、日によって情報の濃淡はありますが、
出来るだけ旬の駅弁と鉄道旅の魅力をアップしていきますので、
ゆるりとお付き合い下さい。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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