IoTか移民か?【イイダコウジ そこまで言うかブログ】

 近年、IoTという言葉がメディアを賑わせています。訳語として『モノのインターネット』という言葉が当てられていますが、今一つ分かったようなわからないような感じです。調べてみると、今までネットにつながっていなかった様々なモノにセンサーをつけてデータを取り、それをネットで流して蓄積し分析。分析結果を基にしてつながったモノを制御したりするものとのこと。
『「IoT」とは何か、今さら聞けない基本中の基本』(4月19日 東洋経済オンライン)
 このセンサーを工場の機器に付けてデータを取れば、より効率的な運用ができるようになるかもしれません。さらに、データを蓄積・分析したうえでモノの制御を自動でやるようになれば、ロボット産業にも新たな時代が到来します。今までは与えられたプログラムを粛々とこなすのがロボットでしたが、これからは自律的に動くようになるわけです。
 というわけで、IoTの行きつく先のロボット産業。先日、ロボット産業にまつわるシンポジウムを見に行ってきました。都内の会議室に官業報の関係者200人以上が集まり、熱気をはらんでいました。
 そこで議論されていた中で、私なりにキーワードだなと感じたのは「サービス産業」と「人手不足」。これがIoTと出会った時に、この国は爆発的なイノベーションを生み出せるのではないかと希望を感じました。
 まず現状として、バーチャルデータを使ったIoTについては、すでにアメリカなどがずいぶんと先行していて、ここからキャッチアップして巻き返すのはもう難しいのではないかということ。たとえば、キーワード検索についてはご存知の通りGoogleが圧倒的なシェアを握っていて、ここから日の丸検索サイトがシェアを伸ばすのは難しいのは自明でしょう。
 一方で、リアルデータを使ったIoTにはまだまだチャンスがあるということが議論されました。健康分野であったり、工場の機器にセンサーをつけるといった想像しやすいIoT以外にも、サービス産業も未開の荒野であると紹介されました。この点について、メーカー側のパナソニックのロボティクス推進室長本間義康氏は、高齢化、労働力不足で第一次、第三次分野で伸びしろが大きいと指摘します。今後、5倍から7倍のニーズが生まれると想定しているようです。すでにトマトを自動で収穫するロボットや、病院で注射や薬品を自動搬送するロボットが実用段階に来ているとのことです。
 さて、これから伸びるとされている第一次、第三次産業に共通するのは、労働生産性の低さと人手不足が深刻化しているということです。もちろん、労働生産性そのものは、より少ない人数でより多く稼げば向上する数字だということは押さえておかなくてはいけません。従って、人を絞って人件費を減らすブラック企業的なやり方でも数字が良くなっていくので、この数字の向上だけを目指すのは非常に危険です。一方で、人手不足の深刻化は業界によってはすでに事業が立ちいかなくなるほど。そういった業界でIoT、ロボットを使った生産性の向上は非常に有効です。
 すでに、飲食・宿泊業界は介護・医療業界を抜いて日本で一番人手不足が深刻な業界となりました。そこでメディアでよく言われるのが、移民。人手不足の分野には海外から移民を入れて賄えばいいではないかという議論です。日本人ではなくわざわざ海外から移民を呼んでくるわけですから、経済の論理で言えば日本人よりも人件費が安くなくてはいけません。そうして人手不足が解消すれば経営者としては万々歳だと思いますが、労働者側としては雇用が奪われるだけでなく、賃金全体にも下押し圧力がかかります。人手不足の内はまだいいんですが、これが不景気になると移民と日本人が雇用を奪い合い、社会不安が高まります。今まさにヨーロッパで起こっていることがこれです。
 IoT、ロボットは人手不足を移民に頼らずに解消することができる政策です。経済産業省の関係者は、海外でIoTの事例を取材するときに必ず「この政策は雇用を奪う。そこを批判されることが多いのだが、その手当はどうするんだ?」と聞かれるそうで、現状人手不足の日本は、その心配がない分アドバンテージがあります。
 ちなみに、インダストリー4.0を掲げてIoTを引っ張っていると日本ではよく報じられるドイツは、現在この雇用の問題でスタック気味とのことです。移民の受け入れが回りまわって今後のドイツを左右するインダストリー4.0の足を引っ張っているわけですね。これは皮肉です。
 話を戻すと、まさにここが日本の希望であって、人手不足を逆手に取ってIoT、ロボット産業に投資を集中させることができれば景気浮揚に一役買うことができるわけです。第二次産業だけでなく、第一次、第三次産業まで裾野も広いわけですし、移民と違って資金が海外に出ずに国内で還流しますから、内需振興になるんですね。
 ここでキーとなるのが中小企業の資金繰り問題。どんなに効率化が出来て、世界最先端のロボットであっても、1000万も2000万もするものをおいそれとは入れられない。特に、サービス産業や農業では小規模なところも多いので、多額の投資をする資金的余裕がないケースが多く見られます。そこで現場のニーズをくみ取りながらスペックダウンした廉価版を作ったり、販売ではなくリースで安価にユーザーに提供したりする工夫が求められますんですね。前述のメーカー側、パナソニックの本間氏は、数が出ればコストは下げられると語っているのですが、ユーザー側はそのまとまった数を発注するのは資金面から至難の業。まさにニワトリが先か卵が先かという話になってきます。
 潜在的なニーズはあるのですから、最初の一押しがあれば動き出すのです。ここは、金融機関が本来の仕事をして、資金を融通すべきでしょう。マイナス金利で運用先がないと嘆くより、こうした潜在的な需要を掘り起こすべきなのではないでしょうか?
 いずれにせよ、人手不足をIoT、ロボットで解決すれば社会不安のリスクなく内需が浮揚します。安易に移民をいれて社会不安を呼び起こすよりも100倍ましなのではないでしょうか?
Fotolia_114125876_Subscription_Monthly_M

TAGS: