それゆけ!ドーナツ盤万博

いしだあゆみ『太陽は泣いている』でわかる筒美京平から小西康陽へ継承された「匠の技」

第14回 いしだあゆみ『太陽は泣いている』  

最近、ますます加熱するアナログ盤ブーム。そしてシングル盤が「ドーナツ盤」でリリースされていた時代=昭和の楽曲に注目する平成世代も増えています。
子供の頃から歌謡曲にどっぷり浸かって育ち、部屋がドーナツ盤で溢れている構成作家・チャッピー加藤(昭和42年生)と、昭和の歌謡曲にインスパイアされた活動で注目のアーティスト・相澤瞬(昭和62年生)が、ターンテーブルでドーナツ盤を聴きながら、昭和の歌謡曲の妖しい魅力について語り合います。

チャ:「玲子さん、今、どこにいるんだっ!?」「ドカーン!」「キャーーッ! 小野寺さん、私のことはかまわず、ジュネーブへ!」……あゆみさん、名演技だったなー。こんにちは、チャッピー加藤です。

相澤:……それはもしや、映画版『日本沈没』ですか? こんにちは、相澤瞬です。

チャ:正解! あ、瞬くんも観たことある? 河崎実監督の『日本以外全部沈没』じゃないよ(笑)。

相澤:どっちも観ました! どっちも最高です!(笑)実は、大変恐縮なのですが、河崎監督に良くしていただいてて…!(汗)

チャ:マジで!? 吾輩ファンなんで、よろしくお伝え下さい(笑)。……で、『日本沈没』だけど、主人公が、名前に「、」が付いてないときの藤岡弘さんで、その婚約者が、いしだあゆみさんなんだよね。

相澤:ラブシーンもありましたよね?

チャ:そそ! 海辺でキスするんだけど、黒いビキニ姿のあゆみさんがナイスバディでねー。当時小1だったけど、オレん中の日本海溝が動いたね(笑)。

相澤:(笑)。チャッピーさんの少年時代って、けっこうあゆみさんに支配されてますね〜。

チャ:そうなのよ!『あゆみさんに全部沈没』ですよ(笑)。てなわけで今週も、高円寺「彦六」で、あゆみワールドにひたろうか。

相澤:そういえば先週、「僕の大好きなアーティストに影響を与えた曲」を取り上げる、って言ってましたよね? どんな曲か気になるんですけど!

チャ:さっそく聴いてみよう!


■小西康陽経由、筒美京平

チャ:さて、今回取り上げる曲はこちら! 1968年6月10日発売、いしだあゆみ・コロムビア移籍第1弾、『太陽は泣いている』。

相澤:あー、これですか!

チャ:作詞・作曲は『ブルー・ライト・ヨコハマ』と同じ、橋本淳・筒美京平コンビなんだけど、タイトルのロゴからしてサイケ色満点でイイよねー。さっそく聴いてみよう。

(♪ターンテーブルに乗せて演奏)

相澤:これ、最初聴いたとき衝撃でした。「ピチカート・ファイヴの『モナムール東京』じゃん!」って。

チャ:あ、この曲へのオマージュだってのは知らずに、『モナムール東京』を先に聴いたんだ?

相澤:そうなんです。僕、小西康陽さんにメッチャ影響受けてるんですけど、小西さんは筒美京平さんをリスペクトしていて、小西さんが「京平チルドレン」なら、僕は「孫」だなと(笑)。

チャ:小西康陽を通じて、筒美京平を知るって、「匠の技」の継承みたいで、なんかイイなー。で、「モト曲」を聴いた感想は?

相澤:『モナムール東京』ですね!(笑)僕、この旋律が好きなんですけど、ベースは京平さんにあるんだなーって、改めて思いました。

チャ:小西さんからは、具体的にどういう影響を受けたの?

相澤:僕、ピチカートの存在、楽曲はもちろん、作品に対する録音への姿勢も大好きで。「音の深さ」って言うんでしょうか。

チャ:ふむふむ、その「深さ」って何なのか、もうちょい詳しく教えて。

相澤:昭和の歌謡曲って、テープ録音ですよね。小西さんはテープで録ったときの「リズムの引っかかり」を参考にして、それをふんだんに使ってる気がするんです。その技術と、編曲、プレーヤーの超絶テクが全て合わさることで、「リズムお化け」みたいな音源になるというか(笑)。

チャ:「リズムお化け」かー。言い得て妙だなー。

相澤:歌謡曲ってどんな曲でも、リズムの構造の中で、それぞれの楽器に「ストーリー」が全部あるんですよね。大ベテランの皆様の演奏を僕が意見するなんて100億年早くて大変恐縮ですが……。どの楽器のプレーヤーさんもリズムの理解力が物凄いな、と。

チャ:メリハリの付けかたが明確ってこと?

相澤:そうですね。これはレコーディングワークの話になるんですけど、「オケが歌ってる」ことで、その楽曲のもつ景色に色がついて、更に鮮やかになると思うんです。

チャ:ふむふむ、色がつく……ね。

相澤:いわば、映像の撮影でいう照明さんだったり……。そういう頼もしい職人の方が周りにいてくださると、「主役」にあたる歌であったり、「脚本」にあたる歌詞が、より一層輝きますよね。そこまで手を抜かないことで、一生聴かれ続ける、名曲になるというか。

チャ:なるほどねー。「レコーディング=楽曲に色をつけていく作業」っていう発想は面白いなー。

相澤:この『太陽は泣いている』も、まさにオケが歌ってるし、あゆみさんの声質にもすごくマッチしてますよね。京平さんをはじめ、職人の皆様、さすがです!

チャ:そういうプロの仕事のお陰で、よけいに際立っているんだけど、声のグルーヴってあるじゃない。前回も言ったけど、あゆみさんの声って独特なんだよなー。

相澤:しかも、この人しか歌えない歌い回しですしね! 唯一無二の方が大好きです。

チャ:あゆみさんは、のちに歌手活動を休んで女優業に専念するんだけど、そもそも児童劇団出身だし、歌い方が演劇的なんだよね。王道の歌い方で歌ってないんだよ。だから飽きないんだと思う。

相澤:そうですね。実はものすごくお上手なのに、王道の歌唱法を好む方には「へたウマ」って言われるタイプかも…。

チャ:そうなんだよ。サッカーの大迫じゃないけど、あゆみさんの歌唱力、マジ半端ないって!(笑)


■いしだあゆみ版「一人GS」

チャ:で、改めてあゆみさんの話に戻すけど、この曲ってコロムビア移籍第1弾なんですよ。それまではビクターにいたのね。

相澤:デビューしたのって、これよりもっと前なんですよね?

チャ:そう。あゆみさんは14歳で長崎から上京して、いずみたくさんのところで修行してから、64年にデビューしたんだけど、4年間で20枚以上シングルを出したのに、ヒットしなかったんだよ。

相澤:つまり心機一転、レコード会社を移って、環境を変えたわけですね。

チャ:だから、新進気鋭の橋本・筒美コンビに話が行ったんだと思う。で、橋本淳さんも、ビクターの頃からあゆみさんの才能には注目してたんだって。「オレたちの手で、あゆみをスター歌手にしようじゃないか!」と、そのプロジェクトの第1弾がこれなのよ。

相澤:その頃って、どんな曲が売れてたんですか?

チャ:ちょっと時代背景に触れておくと、この曲が出た1968年はGSブーム全盛の年で、タイガース・テンプターズの絶頂期。雨後のタケノコのように、どんどん新しいGSが出てきてたの。

相澤:バンドブームのときと同じですねー。

チャ:レコード会社って、すぐブームに乗っかるからさ(笑)。そのうち、女性シンガーにGSっぽい歌謡曲を歌わせるのがハヤるわけ。いわゆる「一人GS」ってやつ。

相澤:そうか、この曲も、その流れの一つなんですね。

チャ:そう。あと、これが出る3年ほど前に、湯川れい子さんが英語で詞を書いたエミー・ジャクソンの『涙の太陽』っていう和製エレキ歌謡がヒットしたんだけど、『太陽は泣いている』って、タイトルからして、明らかにそれを意識してるよね。

相澤:でも『ブルー・ライト・ヨコハマ』と同じく、これもイントロにチェンバロ入ってるところは、いかにも京平さんですねー。セールス的にはどうだったんですか?

チャ:オリコン最高18位だから、スマッシュヒット程度だけど、でもこれがあって、『ブルー・ライト・ヨコハマ』の大ヒットがあるわけですよ。……ちょっと別な曲も聴いてもらおうかな。これも京平さんの作品だけど。

チャ:1970年3月25日発売の『あなたならどうする』。作詞は橋本淳さんじゃなくて、なかにし礼さんだけど、歌詞も味わい深いのよ。

(♪ターンテーブルに乗せて演奏)

相澤:あー、これもピチカート感がありますねー。尺八が入ってるのも斬新! そしてやっぱり、あゆみさんの歌がメッチャ上手い!……でも、すごい歌詞ですね。

チャ:「あなたならどうする?」の選択肢が「泣く」か「歩く」か、それとも「死んじゃうの?」だよ。なんて三択!(笑)阿久悠さんもそうだけど、礼さんもさりげなく、歌詞に毒を盛ってくるよねー。

相澤:でも、それを「♪どぉするーン?」とシレッと歌っちゃうあゆみさんも、素敵です!

チャ:この曲はオリコン2位まで行って、『ブルー・ライト・ヨコハマ』に次ぐ代表的ヒット曲になるんだけど、実は礼さんの奥さんって、あゆみさんの妹さんなんだよね。

相澤:あ、そうなんですか!

チャ:あゆみさん、生まれは大阪・池田市で、4姉妹の二女なのよ。長女がフィギュアの選手で、オリンピックにも出た石田治子さん。末っ子の由利子さんは「石田ゆり」って名前で歌手デビューするんだけど、礼さんが作詞した縁で、のちに奥さんになるわけ。

相澤:じゃ、あゆみさんにとって礼さんは、義理の弟さんになるんですね。

チャ:そう。この石田4姉妹の話は、礼さん自身が『てるてる坊主の照子さん』っていう小説にしてるし、NHKの朝ドラにもなったから、ご存じの方も多いかなと。興味のある方は、原作を読んでみてください。

相澤:いしだあゆみさんって、僕の原点でもあるし、チャッピーさんの原点でもあるわけですけど、なんだかんだ言って、われわれがトリコになったのは、やっぱりこの声の魔力に尽きますね。

チャ:そうだねー。あゆみさんは、77年に細野晴臣さんたちティン・パン・アレイと組んだアルバム『アワー・コネクション』というアルバムもあって、復刻CDが出てますんで、ぜひヴォーカリスト・いしだあゆみの魅力を堪能していただきたいなと。

相澤:いやー、今回もいろいろ聴かせていただきありがとうございました。しかし、この「彦六」さん、マジで居心地いいですねー。またここでやりましょう!

チャ:やろうやろう! 織田島マスター、お世話になりました!
この連載、流浪の企画なんで、「ぜひウチに来てください!」というお店からのオファーもお待ちしてます(笑)。

……次回は特別編! 古希を迎えたジュリーの「7/6武道館ライヴ」を二人がナマで観て、その興奮をあれこれ語ります! お楽しみに!

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今回お邪魔したお店:「大陸バー 彦六」
東京都杉並区高円寺北2-22-11-2F
JR中央線・総武線高円寺駅北口より徒歩4分
営業時間:金・土 18:00~26:00 日・月・水・木 18:00~24:00
火曜定休 地図・ライブ予定などはホームページにて
http://www.ukuleleafternoon.com/hiko6/

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▼相澤瞬 おすすめライブ情報はこちら!▼
7月22日(日)吉祥寺シルバーエレファント
◆プラグラムハッチ レコ発&改名10周年記念企画
「TOKYOトレンディナイト」
open 17:30 / start 18:00
前売券 ¥2,500(1D別)/当日券 ¥2,800(1D別)
■前売券のメール予約はプラグラムハッチ official HPにて
http://plugramhatchi.com
■シルバーエレファント店頭でも販売しております。
【出演】
プラグラムハッチ、姫乃たま、弱虫倶楽部、かなまる、オワリズム弁慶、テジナ

8月12日(日)吉祥寺シルバーエレファント(ニュー昭和万博)

◆ニュー昭和万博 レコ発ディナーショウ
「新人類の進歩と調和 2018」……詳細近日発表!!

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【チャッピー加藤/Chappy Kato】

昭和42年(1967)生まれ。名古屋市出身。歌謡曲をこよなく愛する構成作家。好きな曲を発売当時のドーナツ盤で聴こうとコツコツ買い集めているうちに、いつの間にか部屋が中古レコード店状態に。みんなにも聴いてもらおうと、本業のかたわら、ターンテーブル片手に出張。歌謡DJ活動にも勤しむ。
好きなものは、ドラゴンズ、バカ映画、プリン、つけ麺、キジトラ猫。

【相澤瞬/Shun Aizawa】

昭和62年(1987)生まれ。千葉県出身。懐かしさと新しさを兼ね備えた中毒性のある楽曲を、類い稀なる唄声で届けるシンガーソングライター。どこまでもポップなソロ活動、ニューウェーヴな歌謡曲を奏でる「プラグラムハッチ」、 昭和歌謡曲のカバーバンド「ニュー昭和万博」など幅広く活動。
好きなものは、昭和歌謡、特撮、温泉、うどん、ポメラニアン。

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