しゃベルシネマ

かつて女性も土俵に上がっていたこと、ご存知ですか?『菊とギロチン』

【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第440回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、7月7日に公開した『菊とギロチン』を掘り起こします。


構想30年、瀬々敬久監督渾身の企画がついにスクリーンへ。


『64-ロクヨン-前編・後編』などで知られる名匠・瀬々敬久監督が温めてきた作品が、構想30年を経てついに公開となります。その名も『菊とギロチン』。

舞台は、関東大震災直後の大正末期。世の中から自由が失われていく時代に実在した、理想的な社会を夢見るアナキスト集団“ギロチン社”の若者たちと、女であるだけで閉塞感ある生き方を強いられた社会情勢の中、強くありたいという思いから女相撲に挑む女性たちの姿を描いた青春群像劇です。


瀬々監督が「やるなら今しかない!」と一念発起し、大手映画会社に頼らず自己資金やクラウドファウンディングを通じて資金を調達し、ようやく劇場公開に漕ぎ着けた本作。決して潤沢とは言えない環境下にもかかわらず、瀬々監督の情熱に共鳴した一流のキャストが集結しました。

ヒロインの新人力士・花菊役には、オーディションで300人の中から選ばれた木竜麻生。夫の暴力に耐えかねて家を飛び出し、強く自由に生きる道を模索する女性を瑞々しく演じています。

一方、“ギロチン社”のリーダーで実在した詩人・中濱鐡を演じるのは、東出昌大。破天荒なようでいて実は結構情けない、そんな人間臭いキャラクターに母性をくすぐられる女性も多いかもしれません。

ほかにも“ギロチン社”の中心メンバー古田大次郎役に寛一郎、朝鮮出身で元遊女の女力士・十勝川役に韓英恵、さらに渋川清彦、山中崇、井浦新、大西信満、嘉門洋子、大西礼芳、山田真歩、嶋田久作、菅田俊、宇野祥平、嶺豪一、篠原篤、川瀬陽太など、いまの日本映画界に欠かせない俳優たちが渾身の演技で、自由と希望を追い求める姿を体現。彼らの気迫あふれる表情に、目が釘付けになること間違いなしです。


本作に登場する女相撲は、当時、庶民に人気の娯楽でした。女性が相撲を取るということで猥雑だと蔑視する人もいましたが、彼女たちは相撲を取るだけでなく歌や踊りを披露するなど、現代でいうところのエンターテイナーのような存在でした。

面白いのが、女相撲には横綱は存在せず、「男相撲に気を使って」最高位は大関だということ。もちろん、女人禁制である男相撲の土俵に上がることは許されません。しかし、昭和32年に高砂親方(第39代横綱前田山)は名大関だった若緑という花形力士の引退相撲を計画。なんと、女力士を男相撲の土俵に上げてしまったのです。

長い相撲の歴史の中でも、現在にいたるまで、男土俵に上がった女性は若緑のみなのだとか。大相撲における女人禁制にまつわる議論は、数ヶ月前にも話題になりましたが、実は女相撲は歴史あるものなんですね。


女力士とアナキスト、立場は違えども“自由な世界に生きること”を願う彼らが挑んだ闘いの果てにあるものとは…。暴力と性、希望と弾圧、混沌とした世の中を背景に、そこにはパワフルで鮮烈な“生”が宿っています。


菊とギロチン
2018年7月7日からテアトル新宿ほか全国順次公開
監督:瀬々敬久
脚本:相澤虎之助、瀬々敬久
出演:木竜麻生、東出昌大、寛一郎、韓英恵、渋川清彦、山中崇、井浦新、大西信満、嘉門洋子、大西礼芳、山田真歩、嶋田久作、菅田俊、宇野祥平、嶺豪一、篠原篤、川瀬陽太 ほか
ナレーション:永瀬正敏
©2018 「菊とギロチン」合同製作舎
公式サイト http://kiku-guillo.com/

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