しゃベルシネマ

ウディ・アレンが描く、心ざわつく恋愛観『女と男の観覧車』

【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第433回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、6月23日から公開の『女と男の観覧車』を掘り起こします。


50年代ニューヨークで狂い出す、男女4人の運命


1950年代、コニーアイランドの遊園地にあるレストランでウェイトレスとして働いている元女優のジニーは、再婚同士で結ばれた回転木馬の操縦係の夫・ハンプティと、ジニーの連れ子リッチーの3人で、観覧車が見える安い部屋で暮らしている。

実は彼女には秘密があり、夫に隠れて、海岸で監視員のアルバイトをするミッキーと付き合っていた。平凡な毎日に失望し、脚本家を目指すミッキーとの未来を夢見るジニー。

しかし、ギャングと駆け落ちして音信不通だったハンプティの娘キャロライナの出現により、ジニーのすべてが狂い出していく…。


どこか懐かしい遊園地と埃っぽいバー、そして洗練されたジャズのメロディ。ウディ・アレン監督最新作となる『女と男の観覧車』は、彼が幼少期を過ごした“心の故郷”コニーアイランドを舞台に繰り広げられる、男女の恋と欲望をシニカルに描いた人間ドラマ。ウディ・アレン監督だからこその鋭い人間観察眼で、人生の不条理に迫った野心作です。


主人公のジニーを演じるのは、本作がアレン作品初登板となったケイト・ウィンスレット。「私は元女優、今の私は本当の姿じゃないのよ。いつかきっと私のことを分かってくれる人が現れて、もっと輝ける場所に連れて行ってくれるハズ」そんな心の叫びを内在させた、ちょっぴり(かなり?)イタイ中年女性を大熱演。嘆きに満ちたヒステリックな演技には、かのテネシー・ウィリアムズの戯曲をエリア・カザン監督が映画化した『欲望という名の電車』でブランチを演じたヴィヴィアン・リーを彷彿させるものも。繊細で複雑な女性の心の揺らぎを、見事に体現しています。

ジニーと不倫関係となるミッキー役にはジャスティン・ティンバーレイク、ジニーの夫ハンプティ役にジム・ベルーシ。そしてジニーの人生の歯車を狂わせるキャロライン役を演じるジュノー・テンプルが、ジニーの対極にある女性像として登場。憎らしいほど愛らしくセクシーな魅力を振りまき、作品を盛り上げています。


原題にもなっている“Wonder Wheel” = 観覧車。車内から見下ろす景色は華やかだけれども、実のところは同じ空間をぐるりと一周回るだけ。気がつけば地上に降ろされ、どこにもたどり着くことは出来ない。

「熱に浮かされた恋愛なんて、そんなもんだよね」というウディ・アレン監督の達観した“恋愛観”が透けて見える本作。人生は、悲劇のようで喜劇。まだまだ衰えしらずな名匠の手腕に唸ること、間違いなしの一作です。


女と男の観覧車
2018年6月23日から丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督・脚本:ウディ・アレン 撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
出演:ケイト・ウィンスレット、ジャスティン・ティンバーレイク、ジュノー・テンプル、ジム・ベルーシ ほか
©Photo by Jessica Miglio (C)2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.
公式サイト http://longride.jp/kanransya-movie/

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