日朝首脳会談~実現するために日本がするべきこと

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6/15  FM93AM1242ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』今日の聴きどころ!②

日朝の担当者がモンゴル・ウランバートルで接触
7:10~お早う! ニュースネットワーク:コメンテーター宮家邦彦(外交評論家)

志水史雄 アジア大洋州局参事官 キム ヨングク 軍縮平和 研究所 所長

関係者と話を交わす外務省の志水史雄アジア大洋州局参事官(左)に視線を向ける、北朝鮮のキム・ヨングク軍縮平和研究所所長(中央)=2018年6月14日、ウランバートル(共同) 写真提供:共同通信社

日朝会談を実現するためには本筋への接触が不可欠

モンゴルのウランバートルで開かれている北東アジア地域の安全保障問題を話し合う国際会議、いわゆるウランバートル対話に出席しているアジア大洋州局の志水史雄参事官は14日、現地で北朝鮮外務省軍縮平和研究所のキム・ヨングク所長と短時間、意見交換した。清水参事官はキム所長に北朝鮮による拉致問題について「すべての拉致被害者の帰国を求める」とした日本の基本的な立場を伝えた。また、安倍総理が北朝鮮との直接対話で拉致問題解決の意向を示していることも併せて伝えている。

飯田)日朝の首脳会談がどこで、いつやるのかということが報道されています。

宮家)ウランバートルでは「トラック1.5」と通常言いますが、「トラック1」が政府官、「トラック2」が民間です。その両方出てくることを「トラック1.5」と言います。こういう形で接触を深めていくのは大事と思います。ただ、北朝鮮の外務省の「○○研究所」というところの人がいったい何を決められるのかと考えた場合、あくまで接触であって、本当に北朝鮮とものごとを決めるのであれば、朝鮮労働党の側近にたどり着かなくてはいけない。これだけ見ていて、これでものごとが決まると考えてはいけない。
このようなことをやっているなかで本筋のチャンネルを模索して、そこから始まるものだと思います。

飯田)北朝鮮のように共産主義国家の場合、政府の機関よりも党のほうが上にいるという形ですよね。

宮家)外務省は政策の実施機関でしかなくて、政策の立案機関ではない。ですから党に入っていかなければ進展は難しいと思います。日本と北朝鮮との付き合いは長いです。少なくとも小泉さんの時代から。その蓄積を持っているところというのは日本では外務省でしかありません。その意味では日本では外務省に任せたほうがいいと思います。かつては北朝鮮に「ミスターX」と言われる人がいたりしました。しかし、そのような人を見つけようとして見つかるものではない。総合的なものですから。北が日本との対話なり、問題の解決を本気で動かし始めようと思ったら、必ず向こうから接触してくると思います。「日本と話さないで、どうやって経済を立て直すのか」ということをトランプ大統領も金正恩委員長に言っただろうと思うし、それについてどのくらい彼らが本気でやってくるか、それは米朝の交渉の進展とも絡んできます。そろそろ張り巡らせたアンテナのどこかにひっかってくる時期だろうと思います。

今後の米朝交渉~トランプ大統領は再び金正恩委員長に会う必要がある

飯田)その米朝の交渉の部分ですが、新しい次元に入ったということです。アメリカは、体制は保証するという形になった。でも核の放棄はあいまいです。この先の交渉はポンペオさんが担うのだということまでは発表されていますが、今後はどうやっていくのですか?

宮家)トランプ大統領にとって、成果としてあるのはものすごく大きな国際的アテンションが注目を浴びた。歴史的に初めてのことをやったという高揚感はあるかもしれません。だけど、それ以外に何があるのですか? 成果ということであれば、北朝鮮はバンバンザイでしょ。国際的な認知を得た上に体制の保証までしてくれたわけです。しかも非核化については何の譲歩もしないのですから。
その意味ではまだ始まったばかりです。この後アメリカがどれだけ我に返って本気でやれるかですが、問題は、アメリカの相手は北朝鮮の外交責任者もしくは外務大臣ではないのです。北朝鮮で対米交渉ができるのは金正恩さんだけなのだから、あの人とやらなければ意味がないと思う。であればトランプさんがもう少しこの問題について関心を持ち続けて金正恩委員長に対して強いメッセージを送り続けない限り、事務レベルでやっても大きな進展はないと思います。

飯田)経済制裁は緩めないと会見でトランプ大統領は言いましたが、それだけではなくてメッセージとしても出し続けなくてはいけないということですか?

宮家)メッセージどころか、もう1回か2回会って、「この間の宿題はどうなったんだ」というようなことを言わないと、中国も韓国も本当はそろそろ経済制裁を緩めたいという本音があるかもしれない。そういう動きが表面化してくる可能性もあります。それが始まってしまったらなかなか止められません。北朝鮮への経済制裁は国連の安保理決議の内容なのですから、やらなくてはならないはずなのに、実質的には空洞化していく危険が出てきているわけですから、ここはトランプ大統領がもう1回ネジをまかないといけないのではないかなと思います。

日本は安全保障政策を見直す時期に来ている

飯田)日本を取り巻く環境についても考えたいと思うのですが、会見のところでトランプ大統領が米韓合同軍事演習も対話をしている間はやめる、あるいは在韓米軍も削減するということも言っています。これは下手をするとパワーの均衡点が38度線からもっと下がってきて日本が矢面に立つ可能性が出てくるのではないですか?

宮家)それは、私がいつも心配している1953年の休戦協定のシステムが変化していく可能性があるということです。トランプさんは米軍の最高司令官なのですから、もっと考えてから発言する必要があります。軍事共同演習はアメリカ兵を守るためにもやっているものですから、ちょっと早すぎたかなという気もしないでもないですね。

飯田)小野寺防衛大臣も東アジアの安定について不安だというコメントも出していますが、日本としてはどう対応していけばいいですか?

宮家)最も驚いたのはおそらく韓国ですね。韓国も都合のいいときはアメリカを使いますから、そのアメリカが変なことを言い出したので驚いていると思います。日本の場合は直接在日米軍に関わる話ではないから、すぐに対応しなくてはいけないということではないのですが、これが大きな変化の始まりだとしたら、中長期的にどのようなインパクトがあるのか、日本の安全保障政策そのものをもう一回見直してみるいい機会だと思っています。そのくらい大きな話だと思います。

飯田)これは突き詰めれば憲法の話にもいくかもしれないということですか?

宮家)しかし、憲法の枠内でもっとやれることはたくさんありますから。自衛権を行使しなくてはいけないという、そのシステムをきちんと準備しておかなくてはいけない、その上で外交交渉をやるという時期ですね。変化に備えて現実的な対応を本気で考える時期ではないでしょうか。

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