作家陣含め、全て東京人で作られたC-C-B「Romanticが止まらない」

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【大人のMusic Calendar】

6月19日は619=ロマンティックということで、日本ロマンチスト協会が本当に大切な人と極上の一日を過ごすことを推奨し、「ロマンスの日」と設定している。…ロマンティックと言えば、C-C-B「Romanticが止まらない」である。

「Romanticが止まらない」は中山美穂主演ドラマ「毎度おさわがせします」のテーマ曲として大ヒット。30年以上が経った現在でもカラオケ等で親しまれ続ける80年代ポップスの金字塔。C-C-Bは前身の3人組“ココナッツボーイズ”からメンバーを補充して改名、このタイアップ企画に命運を委ねることとなった。担当プロデューサーは筒美京平の実弟である渡辺忠孝で、作詞の松本隆とメンバ-5人を含めて全員が東京出身というチーム構成となった。これは当時なにかとライバル視されたチェッカーズとの対比の面でも興味深い。

「Romanticが止まらない」では船山基紀とバンドの共同編曲によるテクノ風サウンドが耳を引くが、イントロのシンセによるフレーズは筒美のデモテープに元からあったものという。船山は別の形にアレンジしようとしたが、メンバーの提案を受けてそのまま残したとされる。この半拍休んでから8分音符を連打するパターンは典型的な京平節とも言えるもので、「ブルーライト・ヨコハマ」から「スニーカーぶる~す」まで枚挙にいとまがない。実際のところ歌詞やサウンドのもたらすイメージを抜きにすれば、「Romantic~」のメロディそのものには近藤真彦の「ブルージーンズメモリー」に通じるものがある。

つまり筒美としてもグループのキャラクターや方向性を十二分に把握する前に楽曲を仕上げた可能性があったと推定されるが、このどことなくせわしないサウンドがドラマのムード(特にエンディグのドタバタ映像)にピッタリはまったことは間違いない。一方の松本はこのデビュードラマの時点から(やがて作詞を担当する)中山に注目していたというが、こちらもタイミング的にドラマの内容を熟知して詩を書いたとは考えにくいものの、見事にその本質を象徴するようなタイトルとフレーズを紡ぎだしたのはさすがである。

C-C-Bの次曲「スクール・ガール」はアルバム曲を改詞・改題したものだが、筒美が本領を発揮するのは3曲目の「Lucky Chanceをもう一度」から。髪をカラフルに染めたメンバーのビジュアルに呼応するかのようにカジャグーグーの「君はTOO SHY」の曲想を巧みに取り入れ、さらに次の「空想Kiss」ではデヴィッド・ボウイの「チャイナ・ガール」といった具合に英国系ニューウエイヴを意識したサウンドを聴かせた。翌年以降もヒップホップ、ユーロビート、メタル+エレポップと先端の洋楽を大胆に翻案する姿勢を極めていった。

さて「Romanticが止まらない」大ヒットの勝因として忘れてならないのは、ドラマー笠浩二の甘い声質に着目してリード・ヴォーカルに抜擢した点であろう。ただし本人としてはテレビの歌番組などで打ち込みのクリックをモニターしつつ、慣れないシモンズ(電子ドラム)を叩きながら歌うのには相当苦労したようだ。この面でも京平先生の慧眼は冴え渡っていたのだが、次第に本来のメイン・ヴォーカルだった渡辺英樹やシブい低音を聞かせた関口誠人をフィーチャーして3人の対比の妙を打ち出すことも忘れてはいなかった。

【著者】榊ひろと(さかき・ひろと):音楽解説者。1980年代より「よい子の歌謡曲」「リメンバー」等に執筆。歌謡曲関連CDの解説・監修・選曲も手掛ける。著書に『筒美京平ヒットストーリー』(白夜書房)。
作家陣含め、全て東京人で作られたC-C-B「Romanticが止まらない」

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