報道部畑中デスクの独り言

AIはハイテク? 現実は意外と…

【報道部畑中デスクの独り言 第62回】

セブンドリーマーズ 芝公園 ラボ

芝公園駅から歩いて数分 セブンドリーマーズ「芝公園ラボ」

最近はAI=人工知能という言葉を聞かない日はありません。多くの人が持つイメージは「最先端」「デジタル」「スマート」「ハイテク」「クール」「無機質」…そんなところでしょう。しかし、実態は果たしてどうでしょうか。

「世の中にないものをつくり出す技術集団、セブンドリーマーズ(Seven Dreamers)へお越しの方はこちらでお降り下さい」

都営地下鉄三田線で芝公園駅に近づくとこんな案内音声が聞こえてきます。セブンドリーマーズ…この新進企業は、いびきや過呼吸症候群を治す「ナステント」という商品を販売しています。これだけでも不思議な会社ですが、ここが現在、開発しているのが「全自動衣類折りたたみ機」なる機械。商品名は「ランドロイド」、ランドリーとアンドロイドを合わせた造語のようです。

「本気かよ…」

3年前、2015年の家電製品の見本市「CEATEC」でこの機械を見て衝撃を受け、思わずこうつぶやいたことを思い出します。ブースではコンパニオンのお姉さんが大真面目に紹介していました。

目の前にはシステム家具のような壁がありました。おもむろに扉の一つを開けて、くしゃくしゃになったTシャツを取り出し、“プロトタイプ”と称する機械の中に入れていきます。頭上のプロジェクターには、2つの画面が映し出されています。左側はいかにもコンピュータのプログラムっぽい、刻々と変わる英文字や数字。その上に、衣類の形を認識する「画像認識装置」のシミュレーション、そして右側には機械の内部、ロボットが認識した衣類を的確にたたむ画像が出ています。当時、たたむシーンは「企業秘密」ということでモザイクがかけられ、詳細を見ることはできませんでしたが、折りたたみ作業は複数のロボットアームで行われているということです。

全自動衣類 折りたたみ機 ランドロイド セブンドリーマーズ

全自動衣類折りたたみ機「ランドロイド」(セブンドリーマーズ提供)

作業終了、「どうでしょう。裏も見事にたたまれています!」コンパニオンが緻密な制御をアピールします。その時間、およそ3分!(これはTシャツ専用のデモの場合。現在の試作機では1枚の衣類をたたむのに約10~15分かかるらしい)手でたたんだ方が早いじゃないか…そんな突っ込みが聞こえてきそうですが、セブンドリーマーズによると、人が一生のうちに洗濯物をたたみ、仕分けし、運ぶ時間は9,000時間、日にちにして375日分だといいます。1年ちょっとに相当します。まさにチリも積もれば山となる、この時間をもっと有効に使えないか…そんな触れ込みなのです。例えば、寝る前にこの機械に衣服を放り込んでおけば、翌朝にはすべてたたまれているという…。

セブンドリーマーズ 本社

セブンドリーマーズ本社の入るビル

世の中の数多ある便利な機械は面倒なことを、時間のかかる作業をいかに省いていくか、簡略化するかの戦いの末に生まれると言っても過言ではありません。大げさに言えば、文明の原点がそこにあるような気もします。洗濯機も乾燥機も掃除機も食器洗い機もすべてはそこから始まりました。そう考えると、このような機械もあながちナンセンスとは思えません。その後、ランドロイドはパナソニックと住宅メーカーの大和ハウス工業の共同プロジェクトになります。ゆくゆくは洗濯機、衣類乾燥機とセットで、つまりひとたび服を放り込めば、洗濯→乾燥→折りたたみまで機械任せ…そんな時代が到来するかもしれません。初めから住宅に設備として組み込む…そんなことも考えられます。CEATECでは近くにパナソニックのブースがあり、そのスタッフは「人間にどこまで近づけるかねえ」と話していました。

そして、この機械は2018年度末までには出荷にこぎつけるそうです。もうすぐ?…驚きを禁じ得ませんが、それを可能にした工夫の中に、やはりAIの存在があります。

セブンドリーマーズ

セブンドリーマーズ

前置きが長くなりました。そのAIですが…キモとなるのは膨大な“ビッグデータ”、これによって様々なパターンを認識し、人間のような、時に人間を超える「仕事」をすることができます。ランドロイドの場合は、AIがいかにたたむものを「衣類」と認識し、袖や襟、あらゆる部位がどこにあるかを判断して「折りたたむ」行為にもっていくかということになります。そのために何をするのか? この会社ではTシャツや靴下などあらゆる衣類を入手し、その画像を様々な角度から撮影して覚え込ませていく…そしてデータを蓄積するという作業を重ねていきました。その画像の数は衣類1種類ごとに何と約25万枚! そこにはAIのイメージとはかけ離れた地道な“人海戦術”が展開されているわけです。こうした作業は現在も続いているということです。当たり前と言えばそうですが、人工知能はまさに「人工」=人がつくるのです。

そんな全自動衣類折りたたみ機、ちなみにお値段は想定で約185万円! 車が買えそう…まだまだ普通の人が手の出る値段ではありませんが、パソコンや液晶テレビの例を考えると、「価格破壊」は決して夢物語ではないと思います…さあ、あなたはいくらなら手が出ます?

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