しゃベルシネマ

60歳起業家が一目惚れ、配給会社まで作ってしまった映画とは。『最初で最後のキス』

【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第423回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、6月2日に公開された『最初で最後の恋』を掘り起こします。


青春の煌めきと残酷さが交錯する、ビタースイートな青春ストーリー


高齢化が進む現代日本において、60歳を過ぎて起業することは、いまや珍しいことではありません。しかし、まったく経験のない人が映画の買い付けや配給を始めた…という話は、私も初めて耳にしたことでした。

配給会社「日本イタリア映画社」は、60歳を過ぎて定年退職された男性が個人で起ち上げた会社。そこには、ある1本の映画との運命的な出会いがありました。


出会いの場所は、海外へ向かう飛行機の中。長時間のフライト中に観たイタリア映画にすっかり魅入られて、日本での公開を心待ちにしていたものの、待てど暮らせど“その時”はやって来ない。

それならば、自分で買い付けて、その映画を配給しよう! と思い立ち、配給会社を設立。紆余曲折の末、ようやく日本公開へとこぎ着けた映画、それが本作『最初で最後のキス』なのです。


本作はイタリアの高校を舞台に、女子1人&男子2人による恋と友情をビタースイートに描いた青春ドラマ。

里親に引き取られ田舎町の高校に転校してきた同性愛者のロレンツォ、ある噂から“尻軽女”と罵られている少女ブルー、そしてバスケは上手なのに周囲からは“トロい”とバカにされている少年アントニオ。学校内で“浮いた”存在の彼らは意気投合、友情を育んでいく。

ある日、ロレンツォが、自分たちを阻害する生徒に復讐を試みる。それがきっかけで3人の歯車が狂い始めて…。


2008年にアメリカで実際に起きた“ラリー・キング殺人事件”に衝撃を受けたイヴァン・コトロネーオ監督が、事件をもとに執筆した小説を自ら映画化した本作。

インターネットやSNSの登場により、国を違わず、普遍的なイジメや差別がさらに深刻な状況へと子どもたちを陥らせている現代。10代の危うい感性や心の衝動を残酷なまでにリアルに映し出す一方で、カラフルなファッションやポップな音楽を通じて、イタリアンカルチャーを楽しめるのも見どころのひとつです。

ロレンツォ、ブルー、アントニオ、3人の微妙な心模様や抱える痛みを共有しながら、彼らが発信する“いまを生きる若者たち”へのメッセージを受け止めて。


最初で最後のキス
2018年6月2日から新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次ロードショー
監督・原案・脚本:イヴァン・コトロネーオ
原作:イヴァン・コトロネーオ「UN BACIO」
出演:リマウ・グリッロ・リッツベルガー、ヴァレンティーナ・ロマーニ、レオナルド・パッザッリ、トーマス・トラバッキ、デニス・ファゾーロ、アレッサンドロ・スペルドゥーティ ほか
©2016 Indigo Film – Titanus
公式サイト http://onekiss-movie.jp/

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