なるほど納得!オリンピックの経済価値 【ひでたけのやじうま好奇心】

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画像はWikipediaより:エスタジオ・ゴベルナドール・マガリャンイス・ピント “Mineirão(ミネイロン)”

リオデジャネイロ五輪が近付いてきています。
今回の開催はジカ熱や治安の問題もあって波乱含み。
6月中旬には財政難による非常事態宣言がなされ、リオデジャネイロ州がブラジル連邦政府に泣きつくという事態も起こりました。
そういえば、地元の警察や消防の人たちが何度もデモをしていましたよねー。
結局、連邦政府が約890億円の支援をすることになった※ようですが、いつの時代も五輪開催はお金がかかる。それは変わらないんですね。
※(産経ニュース 2016.6/22刊)

そこで過去をさかのぼってみてみると、五輪開催で莫大な赤字を出してしまった大会がありました。
1976年開催の「モントリオール大会」。赤字額は今の貨幣価値で1兆円!
この赤字額は、そのままカナダの連邦政府とモントリオール市、そしてモントリオール市のあるケベック州で負担していくことになるんですが、返済が終わったのは、なんと開催から30年後の2006年! わずか10年前!
市民たちは、30年間オリンピックの負債を払っていたのです。

莫大な赤字の原因は、まずは時代背景。
オイルショックの影響で石油が高騰。建築資材や人件費なども跳ね上がり、どうしても予算を増やさないと大会を開催できない状態になっていたんですね。
また前回のミュンヘン大会でテロ事件が発生したこともあり、セキュリティに予算を割く必要も出てきた。そうした時代背景があったんです。
さらに当時の市長のコスト感覚のなさ、組織委員会の官僚的な運営なども重なり、予算はどんどん膨らんで、結局赤字総額1兆円となってしまったのです。

負債の象徴と言われたのは、巨大なメインスタジアム。
当初は、世界初の開閉式の屋根を持つスタジアムになる予定だったんですが、予算不足や工期の遅れで、結局は屋根なしのスタジアムになってしまい、屋根が付いたのは12年後の1988年になってから。
大会後、大リーグのモントリオール・エクスポズのフランチャイズ球場になったり、去年には女子サッカーのワールドカップも行われているので、観光名所にもなっているんですが、オリンピックの負の遺産であったことは確かです。

そして1兆円の負債を完済した方法ですが…これがほぼ税金なんですね。
モントリオール市は不動産税を増税して赤字返済に充てたり、連邦政府は宝くじを発行したり、ケベック州では煙草税の増税などを行って、2006年まで、30年をかけて赤字を返済し続けたんですね。

さて、そんな大赤字を出してしまった1976年のモントリオール大会。
その失敗を見た世界各国は、翌年に行われた1984年の五輪招致に尻ごみをしたんですが、唯一手を挙げたのがアメリカ・ロサンゼルスでした。

それまでオリンピックでは あまりスポンサーを重要視しておらず、開催にかかる費用のほとんどを、国や自治体が負担していたんですが、ロス五輪では完全民営化!赤字が常であったオリンピックの運営で400億円の黒字を出すことに成功したのです。経済効果はそれ以上でしょうね。

その成功を導いたのが、大会組織委員長のピーター・ユベロスさん。
彼は最初に「既成概念をすべて捨て、まったく新しい視点でオリンピックを見て、大会自体を貴重な商品として考えよう」と言ったそうです。
従来のオリンピックもスポーツ大会としては価値の高い存在だったけれど、そこに「経済的な価値」も加えようとしたんです。

例えば「テレビの放映権」。米国4大ネットワークのうち、最も高い金額を示した企業に放映権を渡すと競争心をあおり、ABCと約450億円で契約。
さらに放映権料は前払いで、利息を稼いで運営資金に充てました。

また、それまでは多くのスポンサー企業が五輪のロゴマークを乱用していましたが、彼は「1業種1社のみ」、さらに「合計30社のみ」と限定。ロゴマークの価値と企業間の競争意識を高め、高額の協賛金を集めることに成功します。

ほかにも「入場料の収入」や「キャラクターグッズの販売」でお金を稼ぎ、さらには、一般市民から「有料聖火ランナー」を集い、1キロ3000ドルで販売。
あらゆる手段で、民間企業等からお金を引き出したんですね。

また徹底的なコスト削減にも努めます。新たに建てた会場は競泳場と競輪場のみ。
メイン会場には52年前の1度目のロス五輪の会場を使用し、選手村にはメイン会場ほど近い、大学の学生寮を使うなど徹底しました。

このような手腕で、彼は400億円の黒字を出すことに成功。
従来とは全く違う、1セントも税金を使わない、新たな五輪のあり方を示しました。
ロス五輪は、「オリンピックを商業化した」とマイナスの方向で語られることも多いですが、オリンピックの大きな転機になった大会であったのも確かです。

このビジネスモデルはそれ以降の大会にも引き継がれ、ロス五輪以降の大会では、表面上は黒字がずっと続いています。
ただ、この黒字というのは基本的に大会運営にかかっているお金。
それに伴うインフラ整備は、また別の話です。

ロサンゼルスの場合は都市環境も整っていたので、さほどインフラ整備を必要としませんでしたが、ほかの国も大丈夫かと言われると微妙です。
2008年の北京オリンピックも表面上は140億円の黒字ですが、インフラ整備に4兆5000億円かかったと言われています。

また新たに施設を作ったとしても、その維持費をどうするかという問題もありますし、2004年のアテネ五輪のように、その反動で景気が落ち、ギリシャの財政が悪化する…なんてことも起こります。開催後のことも考えないとダメなんですね。

オリンピックとお金の関係、大会によっていろいろです。
さぁ、2020年の東京五輪。どんな運営をして、誰がその指揮をとるのか。
きょう告示の東京都知事選では、そこも大きな焦点です。

7月14日(木) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より