文学と映画の幸せなコラボレーション『四月の永い夢』

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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第409回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、5月12日から公開の『四月の永い夢』を掘り起こします。


日本映画界の新鋭・中川龍太郎監督が描く、喪失と再生の物語

文学と映画の幸せなコラボレーション『四月の永い夢』
27歳の滝本初海は恋人を亡くした3年前に中学校の音楽教師を辞め、いまは近所のそば屋でアルバイトをしながら暮らしている。

ある日、彼女のもとに1通の手紙が届く。送り主は亡くなった恋人の母親で、中には彼の最後の手紙が同封されていた。

この手紙をきっかけに、初海の変わらない日常が再び動き始める…。

文学と映画の幸せなコラボレーション『四月の永い夢』
日本映画の新鋭として世界的に注目が集まる中川龍太郎監督は、1990年生まれ。まだ若い監督さんといった印象を受けるかもしれませんが、大学在学中に監督を務めた『Calling』がボストン国際映画祭で最優秀撮影賞を受賞したのを皮切りに国内外の映画祭で上映されるなど、そのキャリアは充分。詩人としても活躍するユニークなフィールドを持つ映画監督です。

最新作となる『四月の永い夢』は第39回モスクワ国際映画祭で、国際映画批評家連盟賞とロシア映画批評家連盟特別表彰をダブル受賞。邦画史上初の快挙を遂げた本作が、いよいよ日本のスクリーンに登場します。

文学と映画の幸せなコラボレーション『四月の永い夢』
恋人を亡くしたことがきっかけで“止まった時間”の中で暮らしているヒロイン・滝本初海を演じるのは、朝倉あき。“大切な人の死”という苦しみからゆっくりと解き放たれていく初海の心の機微を瑞々しく演じています。

そんな初海に思いを寄せる青年・志熊役には、三浦貴大。好青年役を演じさせたら右に出る者はいないほど各作品でその実力を発揮している彼ですが、本作でも朴訥とした誠実さが観る者の胸を打ちます。

共演には高橋由美子、志賀廣太郎、高橋惠子、川崎ゆり子らが存在感を放ち、温かみのある演技も見応えありますよ。

文学と映画の幸せなコラボレーション『四月の永い夢』
さまざまな魅力に溢れる本作の中で、特に注目に値するのが言葉の美しさ。詩人としての顔を持つ中川監督が紡ぐセリフは、端正であると同時に、そこに込められた心情がリアルに伝わってくる力強さも秘めています。

決して多くを語りすぎない、しかし観るうちにじわじわと感動がこみ上げてくる喪失と再生の物語です。

文学と映画の幸せなコラボレーション『四月の永い夢』
四月の永い夢
2018年5月12日から新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督・脚本:中川龍太郎
挿入歌:赤い靴「書を持ち僕は旅に出る」 
出演:朝倉あき、三浦貴大、川崎ゆり子、高橋由美子、青柳文子、森次晃嗣、志賀廣太郎、高橋惠子 ほか
©WIT STUDIO / Tokyo New Cinema
公式サイト http://tokyonewcinema.com/works/summer-blooms/

連載情報

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シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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