北朝鮮が核実験中止せざるを得ないこれだけの理由

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4月23日 FM93AM1242ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』今日の聴きどころ!②

北朝鮮~核実験中止で求める見返りとは
7:10~お早う!ニュースネットワーク:コメンテーター須田慎一郎(ジャーナリスト)

北朝鮮への制裁措置は確実に効いている

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、20日に核実験と大陸間弾道ミサイルの発射中止を打ち出した背景には、国内経済の深刻な状況があるとされている。その実情について、専門家に伺っていく。

飯田)並進路線から経済成長に総力を集中する方向に転換したそうです。この辺は、国連安全保障理事会による北朝鮮への制裁措置がどのくらい効いているのか。北朝鮮の国内情勢に詳しい、アジアプレス・インターナショナル大阪事務所代表、石丸次郎さんに電話が繋がっています。

飯田)まず、北への制裁措置についてです。「効いている」と「効いていない」、両方言われていますが、どうですか?

石丸)「効いている」と「影響が出ている」は、ちょっと分けて考えたいですね。経済制裁自体は北朝鮮に非常に大きな影響を与えていると思います。今年2月の中国への輸出。これが、2017年同月と比べると、中国への輸出が95%減なのです。これは中国の税関当局が公式発表した数値です。北朝鮮一国の、中国への輸出が10億円に下がったのです。そして、中国は北朝鮮貿易の9割を占めるので、ほとんど輸出不能な状態と考えていいと思います。
北朝鮮の外貨稼ぎというのは、貿易で言うと、石炭・繊維製品です。これは中国から材料を仕入れての加工貿易です。それから、鉄鉱石に海産物。これらがトップ4なのですが、これら全部の輸出が止まっています。なので、本当に大変なことになっているのですが、「効果があるか」で言うと、これは「政策を変えさせるパワーがあるか?」で見なければいけない。それは徐々に出始めています。私は北朝鮮がいま非核化に向かいつつあると見ていますが、これは経済制裁の効果が出てきたからではないかと思っています。

経済制裁と米中の軍事的圧力から政策変換した北朝鮮

飯田)いままでの「核も経済もやる」という並進路線から、「核を外して経済に注力する」に変えましたよね。これは北朝鮮国内でインパクトはあるのですか?

石丸)「経済発展させながら核開発も進める」という並進路線を2013年に立ち上げ、ずっと国家目標にしてきたわけですが、これが行き詰まった。それで方針転換したと見ています。つまり、去年11月末までずっと、とにかく核実験と長距離弾道ミサイルの発射実験をわき目もふらず、やってきましたよね。それで、この末に核保有宣言をしました。「核武力完成宣言」というのを去年出しました。ここから交渉に望む形だったのですが、先述した経済制裁は、非常に強力でした。それと、アメリカと中国の軍事圧迫は非常に厳しい物がありますよね。アメリカは「これから先制攻撃するぞ」という構えも見せていたし。中国も、国境付近に人民解放軍の配置を増やしたり軍事訓練をやっていたり、非常に圧迫を強めていました。なので、北朝鮮は「このままでは詰む」となり、政策転換をした。これ以上先が、並進路線では見通せなくなったのではないか、と考えています。

飯田)ある意味、圧力が効いて変わってきたということですね。でも、いきなり核兵器そのものを放棄するわけではないですよね?

石丸)「対話と圧力」という言い方がここ数年あちこちで、国際社会でも日本国内でも言われてきましたが、金正恩氏は見通しを立て、このままでは詰むと考え、早めに方向転換しようとした。ただ、方向転換をすると、対話に向かうときにきっかけが必要になります。それを平昌オリンピック参加に求めて、文在寅政権が非常に上手く引っ張り出した。なので、対話と圧力両方が功を奏したと言えます。

文在寅政権はこの状況を冷静に見極めている

須田)今後の、特に韓国と北朝鮮の関係。先ほどの経済協力の部分で、かなり前のめりで進んでいきそうな気配があるのですが、石丸さんはその辺をどう見ていますか?

石丸)文在寅政権は、国内の雰囲気がどんどん前のめりになるのを、割と冷静に止めています。そして、北朝鮮側にも通告している。ようするに、「核問題が解決に向かい、国連安保理の経済制裁措置が解けない、あるいは緩和されない限り、韓国としてはどうしようもない」と。「国連で決めたことが緩和されて、初めて自分たちはあなたたちにやれることがある」と繰り返しちゃんと言っていて。国内の前のめり意見に対しても、ブレーキをかけています。だから、いまのところ文政権は、政府としては非常に冷静というか、闇雲に北と、いまの対話ムードを進めていく感じではありません。割と、冷静に進められていると思います。

トランプ大統領の妥協によって生じる韓国・日本への脅威

須田)そうした点では、日米と足並みが揃っているということでいいのでしょうか?

石丸)現状は揃って動いていると見ていいです。しかし、心配なのは6月中旬頃と言われているトランプさんと金正恩さんとの米朝首脳会談ですね。このとき、トランプさんが日本と韓国の意向、約束をどこまで守ってくれるのか。ちゃんとふまえて向き合ってくれるか。
1番の焦点は、弾道ミサイルの廃棄についての話が出てくると思いますが、問題は射程距離についての話です。おそらく、金正恩は「グアムに届くような物は廃棄する」と言う可能性が高いと思いますが、韓国と日本は、千数百キロで射程圏内ですから。これをオーケーされると、非常にまずい。心配なのは、アメリカファーストのトランプさんがどの辺で手を打とうとしているのか。その辺は安倍さんも非常に気を使っていたと思いますが、日米会談の結果が伝わってきませんよね。非常にそこが心配です。

飯田)「トランプさんの下手な妥協が心配」だと。

須田)それと、日本にとって大事なのが拉致問題ですよね。この問題に、アメリカがどこまで日本の意を汲み、北朝鮮に対してプレッシャーをかけてくれるか。先週「ポンペオCIA長官が、平壌に行っていた」と流れてきましたが、そのときの金正恩委員長との会談において、実は拉致問題がテーマに出ていたのです。これはCIA情報です。

飯田)日本置いてけぼりではなく、ちゃんと入れるところに入れて、それが金正恩氏の耳にも伝わるようになっていた、と。

須田)これに対して、北朝鮮がどう反応するか、ですね。

日本が持つ北朝鮮へのカード

飯田)須田さんに視聴者からの質問メールです。「金正恩労働党委員長は、核実験と弾道ミサイル試射は中止し、核実験場を廃棄すると宣言しましたね。ただ、これまでの言動を見ていると、そのまま信じることはできません。日本に与える影響は、どのようなことが考えられますか。また、とるべき方策は?」

須田)金正恩氏は、若い頃、スイスのジュネーブに留学していて。ときどき、国境を越えてイタリアへ遊びに出かけていた。そういう人物なのです。だから、世の中的な、常識的な点で言えば、祖父(金日成)や父(金正日)とは違う、普通の人です。だから、常識人としての判断が出てくるのでは、と思います。ただ北朝鮮としても、日本に対する金銭的期待というか、経済協力の狙いがあるわけですから、その辺との、日本との交渉ですね。だから、「日本もカードを持っている」というのを念頭に置いたらいいと思います。

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