地域犬や放し飼い犬からコスプレ犬まで。タイの犬の興味深い生活

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【ペットと一緒に vol.83】

路上のコミュニティ・ドッグから、イベントのファッションショーに参加する犬まで。タイには様々な犬が暮らしています。今回は、筆者が4月に訪れたタイで見た、日本とは違う興味深い犬事情を、ドッグイベントの様子とともにご紹介します。


路上犬や放し飼い犬と誰もが共存

タイの犬事情と聞くと、みなさんはどんなシーンをイメージしますか?

観光客が目にするのは、路上でウロウロとする犬たちかもしれません。それらの犬はソイ・ドッグと呼ばれています。ソイとは、路地を意味するタイ語。

多くのソイ・ドッグは野良犬ではなく、名前も付けられて地域の人々からごはんをもらって路上生活をしている地域犬(コミュニティ・ドッグ)です。

手頃なビーチリゾートを訪れれば、バンガローや商店で飼われている放し飼い犬たちの姿を目にすることもあるでしょう。

たいがいは首輪をしていて、予防接種や避妊・去勢手術なども済んでいる犬も少なくありません。

飼い主さんや従業員からはもちろん、人懐っこい放し飼い犬たちは観光客からもかわいがられています。

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ビーチ沿いの宿泊施設で飼われている放し飼い犬

筆者が2018年の4月にバンコクを訪れた際、実は狂犬病が例年よりも数多く発生しているとのことで、タイ人の友人から「狂犬病ワクチンは未接種だと思うから、ソイ・ドッグとの触れ合いは一応気をつけて」と忠告されました。

日本は狂犬病清浄国のひとつですが、タイやインドや中国などのアジア圏では、狂犬病は過去の感染症ではありません。

感染症などの脅威と隣り合わせで暮らすソイ・ドッグを、路上生活から救い出している人々や保護団体も、タイには多数存在します。

バンコク市内で、犬のデイケア施設Unleashedを運営するイギリス人オーナーのジェンマさんもそのひとり。

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ジェンマさんの愛犬。ソイ・ドッグによくいる「お困り顔」がチャームポイント

ジェンマさんは自身の預かり施設で、ソイで生まれた子犬を育てながら里親募集をしています。

筆者が訪れた際は、生後半年ほどの黒い子犬がいました。

「タイでは黒い色の犬や猫は縁起が悪いと言われて人気がないから、タイ人の家族は見つからないかも。タイ在住の外国人とかで、ステキな飼い主さんが現れるのを待つわ」とのこと。


愛犬家のためのイベントに参入!

3月31日と4月1日に、Unleashed隣接のドッグランスペースで開催されたPet Picnicというイベントに、筆者は参入!

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ドッグフードや愛護団体など、出店ブースも多種多様

そもそもUnleashedは、ドッグプールや無料ドッグランを備えるトンロー・ペットホスピタルという動物病院に隣接する施設で、イベントの主催者はその動物病院とHonestbeeというスーパーマーケット。

会場に到着すると、Honestbeeにちなんで蜂のコスプレをした犬たちが迎えてくれました。

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「ここは、写真撮影コーナーなんだって~」

イベント会場は、愛犬の健康チェック、DOGA(ドッグヨガ)、オビディエンス・トレーニング、犬用カップケーキのワークショップ、ドッグフード・ビュッフェなどのアクティビティが無料とあって、大にぎわい。

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「ほら、見て見て! おやつをもらったよ」

イベントのハイライトは、パンケーキという愛称で親しまれるタレントを招いての、ドッグ・ファッションショー。最後のパンケーキさんと一緒の記念撮影では、会場はおおいに盛り上がっていました。

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ドレス姿のパンケーキさんを囲んで


日本とは違う、バンコクの犬事情

イベントに参加していたような犬たちを、観光客が街中で見かけるのは珍しいかもしれません。

「近所の路上で愛犬を散歩させると、ソイ・ドッグが近づいてきてしまう可能性があるからね。愛犬はリードをつけていても、ソイ・ドッグたちはもちろんノーリードだし、予防接種やノミやダニの予防もしていないから、万が一のことがあると心配で……」と、タイの愛犬家は口をそろえます。

「愛犬と一緒じゃないときは、ソイ・ドッグをかわいがったりもするんだけど(笑)」とも。

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顔のシワと背中のたてがみが特徴的なタイの犬種、タイ・リッジバック・ドッグ

そこで、タイの愛犬家たちは、日本のような路上散歩よりも、私設のドッグラン(無料や有料)やドッグプールを利用して、愛犬に運動させながら楽しいひとときを過ごしているのです。

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「暑い夏はプールに限るね~」

タイの人々が、ソイ・ドッグや自身の愛犬を大切にするには、わけがあります。

プミポン前国王が、ソイ・ドッグをご自身の愛犬にされ、とても大切にされたからです。

(プミポン前国王についての詳細は、筆者の過去記事「保護犬とともに歩んだ、タイの王様の犬人生<前編>」「同<後編>」もご参照ください)

トンロー・ペットホスピタルの総合エントランスにも、プミポン前国王と愛犬のトーン・デーンの写真が飾られていました。

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トンロー・ペットホスピタルのエントランス

日本とは文化や事情が異なるタイで、犬たちは今日も、人々に寄り添いながらそれぞれの犬生を歩んでいることでしょう。

連載情報

ペットと一緒に

ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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