「やねせん」に「志ん生博物館」
銀座の落語祭ほど取り上げられない、谷中の落語祭の報告を。
関西では、「彦八まつり」という上方落語の祖、
米澤彦八を顕彰する催しが毎年、行われて、来月、16回目。
前々回は、明石家さんま師も下阪、10万人の客で賑わった。
東京は、8月の第1日曜日、谷中の全生庵。
ここに眠るのが落語中興の祖、三遊亭圓朝。
言文一致運動など近代文学にも大きな影響を与え、
この寺を建立した山岡鉄舟を師として禅を学んだ関係から
墓が鉄舟の隣にある。
「やねせん」、つまり、谷中、根津、千駄木。
東京の真中、二重橋前の駅から地下鉄・千代田線10分、
逆に12分行くと喧騒の原宿。
以前は、圓朝忌として静かに営まれていたが、
上方の影響もあってか「圓朝まつり」となって今年で5回目。
浴衣姿の噺家さんとファンが触れ合う楽しい祭りです。
炎暑の中、本堂の前は黒山の人だかり。
避けて、脇にある、毎年、ゴミ隊を率いる柳家権太楼師の出店へ。
特製Tシャツとともに、私が聞き書きした
「権太楼大落語論」(彩流社刊)が
お蔭様でとぶよな売れ行きであと3冊。
連れに、「買えー」と首をしめ強要。
声を聴いてびっくりして耳を澄ませたのが
盲目のエッセイスト、三宮麻由子さん。
「福耳落語」(NHK出版刊)を著したばかり。
「御神酒徳利」の円生と小さんの算盤の入れ方の違いなど、
彼女の聴き方はとても深い。
「福耳落語も買えー」と後輩に言ったら、
「ここには、置いてないよ」と権太楼師。
でも、この本には師匠も協力、素晴らしい本です。
空が朱に染まる頃、日暮里方面に歩き、
夕焼けだんだんを降りて、谷中銀座商店街へ。
志ん生の声が流れてくるのは、江戸小物の店「TAMARU」。
「志ん朝さんの手拭いが額装してあるよ」と案内していたら、
「塚越さんのCDもある」と後輩。
奥に、志ん生の長女、美津子さんと出した
「お姉さん、つかちゃんの極め付き、志ん生」(ポニーキャニオン)が。
「あれぇ、本物がいるぅ」と大声。
「相変わらず、お元気ねぇ。」
「お姉さんこそ。でも、どして?レジに」
「家に居ても暑いしさ」。
店番がてら涼んでるという図。
やねせん散策の際は、この店へ是非。
私は、志ん生の手拭いを求めました。
私の企画した「三人噺」(美濃部美津子著、扶桑社刊)も、
文庫化された文春文庫も、
「おしまいの噺」(同著・アスペクト刊)もある。
志ん生一家でたった一人残ったお姉さんに会えるかも。
行くたんび、グッズ、本、CDが増えていくので、
「いっそ、志ん生博物館に」と言うと、
「だんだん、いや、どんどん、そうしていきますよ」と
旦那の嬉しい答え。
彦八まつり、圓朝まつりは、年1回。
この店は年中、志ん生まつり。
82歳のお姉さんに案内してもらって、志ん生が通った
「世界湯」の路地を抜けて、
美津子さん行きつけの「鳥吉」で一杯、飲って、
江戸の夜風に吹かれて千駄木から帰りました。
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