「早くも過熱 マニュアル不動産」
これも景気がよくなってきた証しなのか、
矢鱈、おかしな電話がかかってきて、腹を立てたり、抱えたり。
やれ、ナントカ建物、カントカ不動産、
ヘンテコステートと入れ代わり立ち代わり、
でも、中味は判を押しよに
「税金対策のためにマンションを買いませんか」という奴だ。
こんな電話をして来るバカがいるということは、
これを真に受けて1000万円単位の買い物をする
アホがいるということなのか。
フジテレビのアナウンス室にもかかってきて、
軽部アナウンサーは「笠井さんもやってらっしゃいますよ」の一言に、
まさかと思いつつも、身を乗り出しそうになったと。
詐欺の手口は、相変わらず古典的で、
ぺらぺらと鉋っ屑が燃えるよにまくし立て、
相手に考える隙を与えないということのようで、
アナウンサーを狙うんだから、いつも以上にぺらぺら、
ある程度、予備知識を仕込んでおいて同僚の名前を出せば、
即座にガチャンとは切られない。
インタビュー相手に、「すんません、生年月日は?」と
平然と聞く記者やアナウンサーより、ちったぁましか。
この、クソ暑くて思考不能に陥っているときを
狙いすましたように38度まで上がった土曜の午後。
生放送を終え、ビールでかんぱーいなどと、
朝っぱらから飲ってきて、クーラーをガンガンにきかせて、
熟午睡のシェスタ。
♪ピリリー、ピリリと電話のベル。
ベルならベルらしく、どうしてリーンリンと鳴らねぇんだ、
と寝入りばなだし、家族は出払っていて、
誰も出ないことに苛立ちながら、受話器を取ると。
ーヘンテコ建物の新入社員の田中と言いますが…。
(なぜ、申し上げますといえねぇのか。
新入社員だからなんなんだと)思いつつも無言。
詐欺師には、言葉を交わさないのが一番。
ーあのー、ご主人様は、ご在宅でしょうか。
ここで、わたくし、短めの一言。
「いません」と電話を切る。
敵もさる者、引っ掻く者で、すぐに。
ーすんませーん、切れちゃったもんで。
あのー、息子さんですかぁ、お父さんはいついるのー、
と勘違いして、為口を叩くのでこれ幸い、
「うーん、わかんねぇやー」とガチャン。
てんからの大バカか、優秀なセールスマンか、
はたまた希代の詐欺師か、これだけじゃ引き下がらない。
翌日、またまたかけてきて、今度はかみさんが応対。
ーヘンテコ建物の新入社員の田中と言いますが、
孝さんはいらっしゃいますか?
「主人は出かけていておりません」。
ーー「じゃぁ、明日は、お休みですか」とヘンテコ野郎。
「いいえ」と、かみさん。
ーえーっ、なら、いつお休みなんですか?
面倒になったかみさんが、
「いえ、もう、けっこうです」と言い放つと敵は。
ー「そんな答えは求めてません」。
すごいね、この一言。
これ、マニュアルなのかアドリブなのか。
どんな買い物だって山の神の承諾が要るのに。
|