1242 ニッポン放送
つかちゃんコラム
塚越孝
塚越孝
column
8月19日

「早くも過熱 マニュアル不動産」

これも景気がよくなってきた証しなのか、
矢鱈、おかしな電話がかかってきて、腹を立てたり、抱えたり。
やれ、ナントカ建物、カントカ不動産、
ヘンテコステートと入れ代わり立ち代わり、
でも、中味は判を押しよに
「税金対策のためにマンションを買いませんか」という奴だ。
こんな電話をして来るバカがいるということは、
これを真に受けて1000万円単位の買い物をする
アホがいるということなのか。

フジテレビのアナウンス室にもかかってきて、
軽部アナウンサーは「笠井さんもやってらっしゃいますよ」の一言に、
まさかと思いつつも、身を乗り出しそうになったと。
詐欺の手口は、相変わらず古典的で、
ぺらぺらと鉋っ屑が燃えるよにまくし立て、
相手に考える隙を与えないということのようで、
アナウンサーを狙うんだから、いつも以上にぺらぺら、
ある程度、予備知識を仕込んでおいて同僚の名前を出せば、
即座にガチャンとは切られない。
インタビュー相手に、「すんません、生年月日は?」と
平然と聞く記者やアナウンサーより、ちったぁましか。

この、クソ暑くて思考不能に陥っているときを
狙いすましたように38度まで上がった土曜の午後。
生放送を終え、ビールでかんぱーいなどと、
朝っぱらから飲ってきて、クーラーをガンガンにきかせて、
熟午睡のシェスタ。
♪ピリリー、ピリリと電話のベル。
ベルならベルらしく、どうしてリーンリンと鳴らねぇんだ、
と寝入りばなだし、家族は出払っていて、
誰も出ないことに苛立ちながら、受話器を取ると。

ーヘンテコ建物の新入社員の田中と言いますが…。
(なぜ、申し上げますといえねぇのか。
新入社員だからなんなんだと)思いつつも無言。
詐欺師には、言葉を交わさないのが一番。
ーあのー、ご主人様は、ご在宅でしょうか。
ここで、わたくし、短めの一言。
「いません」と電話を切る。
敵もさる者、引っ掻く者で、すぐに。
ーすんませーん、切れちゃったもんで。
あのー、息子さんですかぁ、お父さんはいついるのー、
と勘違いして、為口を叩くのでこれ幸い、
「うーん、わかんねぇやー」とガチャン。

てんからの大バカか、優秀なセールスマンか、
はたまた希代の詐欺師か、これだけじゃ引き下がらない。
翌日、またまたかけてきて、今度はかみさんが応対。

ーヘンテコ建物の新入社員の田中と言いますが、
孝さんはいらっしゃいますか?
「主人は出かけていておりません」。
ーー「じゃぁ、明日は、お休みですか」とヘンテコ野郎。
「いいえ」と、かみさん。
ーえーっ、なら、いつお休みなんですか?
面倒になったかみさんが、
「いえ、もう、けっこうです」と言い放つと敵は。
ー「そんな答えは求めてません」。

すごいね、この一言。
これ、マニュアルなのかアドリブなのか。
どんな買い物だって山の神の承諾が要るのに。



 
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