1242 ニッポン放送
つかちゃんコラム
塚越孝
塚越孝
column
8月15日

真っ赤な郵便集配車を追いかけたら、
信号、タッチの差で逃げられてしまいました。
まぁ、次の郵便ポストの位置は、だいたい分かるし、
先回りして次の次のポストで張ってりゃ、捕まえられるんですが、
こっちもそれほど、暇じゃぁない。

ポストってやつは、郵便を出そうと思うと意外となくって、
どうでもいい時ゃ目について、
どうかすると二、三日、出しそびれる。
すると、六日の菖蒲十日の菊ということになりかねない。
残暑見舞いに突然、暑中見舞いが届いて、
先様の失笑を買う仕儀となる。

郵政民営化論議喧しい中、近況を書いた
五枚の暑中見舞いはがきを携えて車に乗り込んだ。
横浜まで運転する途中、どこかで投函しようと。
片側一車線の国道左側にポストが見えました。

間のいいことに、大きな袋を手にしたおじさんが集配中。
赤い車の後にピタッとつけ、助手席からかみさんが
はがきを手に小走りに駆け寄る。
おじさんは既に作業完了、発進準備。
かみさん右手で窓をノック、左手ではがきひらひら。
窓が開いて、手を伸ばし、受け取るかと思ったら、
かみさん、また、小走り、ぐるっと回って、
車の往来激しい運転席側でようやく、
はがきを出すことに成功しました。

運転席から見ていて、もっと簡単に出せないもんかな、
やれやれと思った瞬間、おやじが、あろうことか、
そのはがきを後部座席になげた。
はがきが、ぱらぱらと、美しくも宙を舞ったのであります。
右手は、窓開けハンドル操作、左手で受け取り、ホイッと放った。
流れるような一連の動きに見とれてました。
しかし、はがきがどこに着地したか、
果たしてうまく郵便袋に納まったのか不安に。
と同時に、なげやがった、舐めていると怒りの気持ちが俄に浮上。
赤い車の追跡を決意したのでした。
ところが、かみさん、車に乗り込んでいる隙に、
敵は、信号を黄色でクリア、右折して消えてった。

配達業務の重要性を改めて考えました。
例えば、同じ大きさ形状の物、文具商が、売るための絵はがきを
ほんなげたたらどうでしょう。
売り物を粗末にする奴と非難されるでしょう。
配達人が手にしたはがきはどうか。
非難じゃすまされない。
売り物以上に大切な、他人様からの預り物です。

後日、かみさんと歩いて帰宅途中、近所の寺の住職と立ち話。
そこを宅配便の軽トラが通り過ぎてった。
家のそばまで来ると、車が引き返してきて、
笑顔で声を掛け、こちらを確認。
届け物を手渡してくれたのです。
赤い車とえらい違い。
配達業務のなんたるかを十分、心得ている仕事ぶりでした。

さぁて、白札、青札、投じた人も残暑見舞いを
心から申し上げたくなる思わぬ解散。
これ以上、舐めるな、なげるな。




 
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