1242 ニッポン放送
つかちゃんコラム
塚越孝
塚越孝
column
8月20日

百家争鳴。
ひと度ブーム来たりなば、こうなることは望ましい。
落語ブーム、のようなものが活字にまで普及してきた。

放送は送りっぱなしですから〜、
なんて無責任なことを言っていたのは昔のことで、
今や、片言隻句に文句つけられる時代、
大先輩の活字メディアにおいておや。
まぁ、小山ゆうえんち。
まだあるってね、栃木に。
温泉施設も充実して地元じゃ大人気と聴取者が教えてくれました。
文句も含め受け手の当初は大事。

特に、活字は後々、孫引きされるので、主張と事実を混同しないで、
読み取らなければなりません。
まして、権威あるものとなるとなおのこと。
「文学界」(文芸春秋)の九月号が、表紙にでかでか、
落語の探求と中村文則の活字で、目を引きます。

小谷野敦という気鋭の評論家が、わたくし、これまでこの人、
こやつい奴、面白いと読んでいたのですが、がっかり。
まず、目次の真ん中、特集・落語探求の囲みの中に、
「落語を聴かない者は日本文化を語るな」と、
思わず、頬ずりしたくなるよな小谷野論文。
いいぞいいぞ、我が意を得たりってなもんです。

近頃、ヨイショばかりの落語評論が目立つ中、
実に辛口で、気持ちいいくらい、ヒリヒリするのですが、
なんだか甘い。
妙なものを食わされた感じ。
文末に、とんでもない事実誤認。
九仞の功を一き(※たけかんむりに貴)に。
これによって、前で展開されてる高説もやっぱ、
たいしたことねぇやということになる。

いわく。寄席に行かない理由は、下手な落語ばかり。
小さんを継ぐ、三語楼が下手なことも、みな、知っている。
円歌のごとき、二流落語家を会長に戴いてと大変な勢い。

今日まで上野・鈴本は、その円歌が昼の主任で連日、札止め。
夜も立ち見の大入り。
私は猛暑の中、二時間、並んで、味わった権太楼の「火焔太鼓」、
さん喬の「火事息子」を生涯、忘れないことでしょう。
二人の会ですが、他も負けじと、志ん輔「小言幸兵衛」、
歌武蔵「親子酒」、三太楼「十徳」も見事。

そりゃ、下手なのも居ますよ。
だからいいのに出くわした時の喜びったらない。
先代・正蔵の、円生の「火事息子」、いい。
「火焔太鼓」は志ん生でしょう。
でもね、満員の客と伴に笑うのが落語のよさ。
書斎から出ましょうや、小谷野さん。

最後に、川柳川柳の「ガーコン」が、
もとは古今亭右朝がやっていたことを教えてくれた李君と、
己の知識の曖昧さを他人のせいにしてるが、
これは川柳の作品であることは、落語を知る者の常識。
次号に訂正を求めたいほどの大間違い。
三語楼の「青菜」(新宿・上席落日)も、主任でたっぷりいい出来。
そして、浅草演芸ホールは、昼過ぎに入ったら座れない超人気。
亡き志ん朝が復活させた「住吉祭り」が、華やかに今日まで。




 
Copyright(c)2004 Nippon Broadcasting System,Inc.All Right Reserved