言葉による世代の断絶を感じました。
仕事柄、言葉には敏感かつ柔軟なんですが、
許容範囲を超えるってやつです。
十代の男が、「せけぇ」と。
なんだそりゃ?
文脈を考えると「せこい」でした。
ひどいもんだと慨嘆してると、十代の女、「やべぇ」と来た。
怒りを鎮めりゃ、合点がいく。
この伝で行けば、「せけぇ」となりぬる。
しかし、まぁ、せこいも、やばいも、
少し前まで堅気の使う言葉じゃなかった。
言葉の自由化は、かなり進んでいます。
一方で、淘汰され行く、死語となりつつある言葉もたくさんあって、
てっきり、芸人さんたちの符丁だとばっかり思っていた言葉が、
広辞苑に、きちっと載っているので意外でした。
裏の世界の言葉が、表舞台で使われるようになる半面、
隠語になっていく言葉もありそうです。
「おやかす」って言葉。
日頃使ってるよって方は、語彙豊富な言葉大臣。
芸人さんと喋ってると、たまに出てくるので、
業界用語みたいなものかと思ってました。
「野郎、さんざ、おやかされて、あんなんなっちゃったよ」
「また、周りも、めいっぱい、おやかすからねぇ」と使うことが多い。
会話の雰囲気から褒め言葉じゃぁ、無いとわかりますよね。
おだて、ほそめやす。
おだてもっこに乗っけて、ほめはやす。
囃し立てる。
そうすりゃ、豚も登るよ、木でもどこでも、
あぁ、こりゃこりゃ、ってなもんです。
しかし、芸界には、「化ける」て言葉もあって、
ある時、突然、芸がよくなる、突如、面白くなることを言う。
「野郎、そのうち、化けるかもよ」
「きっと、化けるよ」と妙な期待をこめて使う。
ですから、「おやかされてるうちに、あれよあれよと、
化けちゃった」という例もあるくらいで、
おやかし連も、こうなるとありがたい。
また、誰からもおやかされないようでは、はなから見込みがない。
辞書には、「生(お)やかす」=大きくする。おやす。
更に「生やす」を引くと=生(は)えるようにする。はやす。
大きくする。おやかす。
大きくする、で思い出したのが、
井上ひさしの青春小説「青葉繁れる」。
たしか、妄想に耽りながら「おえてきた」という科白があった。
つまり、大きくなるのは、あそこ。
私が新人アナウンサーの年に発行された
「現代落語事典」という埃かぶってた書物を引っ張り出してみると、
ありやした。
「おやかる」=動詞、勃起すること。
転じて、持ち上げるところから、人を持ち上げる、おだてることにも使う。
今や、男も女もない。
おやかされた人の内、何人が残り、
誰が乗り乗りで次のステージに向かうことになるのでしょう。
明日、短時間に、おやかし、おやかされた人の結果が出る。
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