帝国劇場、コマ劇場、国立劇場に、
最近では小泉劇場なんてのもありますが、嘉穂劇場は、
「わたくし、しょっちゅう、お芝居観てます」という人も知らない。
まして、行ったことのある人となると、さっぱり。
福岡県にあるんですが、博多から奥に入った飯塚なので、
地元の人でも存在は知っていても、行ったことな〜いと、
若いのは言い、中高年でも「昔、ひばりを観に行った」
「加山雄三ショーを観た」という人はいても最近は、
となると、税金で建てた豪華なホールには出向いても、
この伝統ある小屋にはほとんどご無沙汰で、むしろ県外、
九州外から観光バスで来る人が多い。
地元に人口増が見込めないこれからは、
観光名所として生き残るしか道はないので、
先日、初めて行って観て吃驚してるわたくしが、
ついででいいから九州に行ったら、寄ってみてくださいと
呼びかける次第です。
まず、その広さに、贅沢な空間に声を挙げます。
外観は正直、歌舞伎座、中座、南座、御園座といった
大都市に残る各座にとてもかなわない、
大きな木造倉庫という感じですが、中に入ると唸ります。
間口十間、ってことは、18メートル、柱が一本もない。
そこに、一、二階、千四百の、それも全部、桟敷の席が広がる。
橋や鉄塔を造るときに用いるトラス形式と呼ばれる構造で、
大きな梁を構成することで柱を使わず当時、
最高の技術を駆使して建てられたのは、
今は静かな一地方都市のこの辺り、福岡県嘉穂郡、筑豊地方が
炭鉱で大いに盛った街であった何よりの証です。
外へ出て飯塚市のぐるりを見渡せば、
かつてのボタ山には緑が生い茂り、実に長閑な風景。
石油価格の高騰、ガス田開発が問題の今、
時代の変遷を感じざるを得ません。
炭鉱主が建てた立派な町家建築も残り、これで温泉でもありゃ、
新しいリゾート地になるんでしょうが、
九州新幹線で賑わう沿線と違って忘れ去られた感があります。
この夏、襲った水害はアメリカでも日本でも忘れられませんが、
一昨年、七月の九州北部豪雨を、憶えているでしょうか。
実は、この嘉穂劇場、この時、壊滅的打撃、
水位が舞台上、1.5メートル、升席も花道も完全に水に浸かり、
修復不可能といわれました。
しかし、ビッグタレントから裏方さん、
さらに全国の伝統芸能を愛する人々の力で、奇跡の復活を遂げました。
しかし、大都市の劇場のように、客の入りは、必ずしもよくない。
23日の日曜日、ここで初めて世界のナベサダ、
渡辺貞夫のライブ、とっくにチケット完売と思ったら、そうでもない。
16日は、山田邦子、原田大二郎、京唄子、沢田雅美、青空球児の松竹歌劇、
12月には、岡林信康のコンサート、第九の演奏まであります。
台風、ハリケーンは、はずれてほしい、
これからの旅はちょっと、外してほしい。
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