1242 ニッポン放送
つかちゃんコラム
塚越孝
塚越孝
column
10月22日

上げ潮のごみ。
その心は、くいにかかってる。
お題は、パーティーの客と掛けて。

立食パーティーってのは、気をつけなくっちゃいけません。
人間の本性が現れると言っちゃ、大袈裟だけど、
その人の、今が出る。
立派な紳士も、着飾った淑女も、乾杯の声を聴くやいなや、
グラスを満たしたと同時に
クラウチングスタートの態勢にあったんじゃないかと思うくらい、
一気に食いにかかる。
ハイエナってのはライオンキングでしか見たことないけど、
劇団四季の演出家が、パーティー会場でひらめいたのでしょう、きっと。

白いクロスのかかった大きなテーブルの向こうの調理人は、
さながら草食動物のように、目を伏せながら、淡々とこなしていく。
最近の傾向として、長年のパーティー一番人気、
ローストビーフ必ずしも主役足りえず、上げ潮さまよい集団は、
バラけて、散っていった。

ところが。先日、一流ホテルで、焼きたらばがにが、大きな角、
第四コーナーと、その反対側の花房下に、デデデーンとお目見え。
黒山の人だかりと言うか、人山の黒だかりというか。
たいへんなことになっていると、わたくしが感じたときは、
既に遅し、周回遅れもいいところ。
白い帽子をかぶったおとなしい人が、口を真一文字に結んで、
鋏を両手で握って、堅い部分を切り刻んでいました。
もう、ぽそぽそのところばっか。

長蛇の列から、ようやく先頭に立った人は、これまでの、
己の来し方も、先方の苦労もすっかり忘れ、
先っぽがグーとパーの形をした毛抜きのおとっつぁんみたいなやつで一回、
でやめるかと思ったら、それじゃ、仏様のご飯と思ったのか二回、
中には、三回もかき集めているのがいて、はらはらいらいらします。

これからパーティーシーズンに入ります。
長いスピーチの間、氷柱の上の生牡蠣がどうなるんだろう、気になります。
「で、ありますからしてー」、話者の息継ぎの度、
かに歩きでそっと移動しましょう。

でも、みんなが、そう思っています。
みんな来ます。かにかにエブリボディです。
なら、いっそ人の行く裏に道有り、なんて格言通りに行ってみて、
おでんに立ち食い蕎麦じゃ、いつもと同じ秋の夕暮れ。

私は、いきなりフルーツに、最近は行くことにしています。
すいてます。いきなりデザート、体にもいいそうです。
赤ワインにパパイア、なんて赤提灯じゃ味わえません。
白ワインにラフランス、けっこうです。
ウィスキーなめながら無花果ってのもおつです。

無花果とか石榴、子供のころ、そこいらでとって食べたものが、
今や高級フルーツ。
柿なんて、昔は、道端にたわわに生っていて、
誰ん家のもんでもないから、勝手にとっちゃ、食い散らかしたもんですが、
立食パーティーは、まさにこれ。
いい大人が、食い散らかして歩きまわる。
抑え気味に食したいものです。



 
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