相撲場も寄席と同じで居ようと思えば、九時間半、居られます。
寄席は狭い空間、堅い椅子、
下手をするとエコノミークラス症候群に陥りますが、
相撲はゆったりしています。
中日過ぎ、朝から、枡席の座布団を二つ折りにして、
ひっくり返って観ていました。
ガラーンとした国技館に、行事の高っ調子の声が、
そして、力士と力士のぶつかり合う体の音が、響きます。
昔、川崎球場の外野席でロッテー阪急戦を観たときのような
寂寥感があって、いいもんだなぁと。
それが、時間とともに、満員の千葉マリンに変わるんですから、
早目に行くと楽しい。
枡席は、大人四人が座れば、たしかに狭苦しいが、
四人そろうのは、どの席見ても、中入り後。
打ち出しまでのせいぜい一時間半ぐらいのもんです。
だから、朝から行って徐々に埋まっていく様を、
力豆を頬張りながら、熱燗を飲りながら、
じっくり味わってください。
今でこそ、缶のけつをベコッと押したり、
ブスッと刺したりして飲む、便利な缶酒ならぬ燗酒がありますが、
熱燗をいきながら、楽しめるライブってのは、
本来、相撲くらいなもんでしょう。
少ぅし酔ってくると、色とりどりの化粧回しの力士入場、
あちこちから贔屓の声が掛かる。
実際の勝負は、あっという間ですが、
こういう美しい過程があるのが、相撲の魅力ですね。
芝居の華麗に、神事の厳粛、格闘の技芸、
これだけ揃ったスポーツは他にない。
だから、勝った負けたと騒ぐじゃないよ、と言いたい。
日本人力士が強くなくても、モンゴルがグルジアがブルガリアが、
みんなが行儀よく、髷を結って、
日本の伝統行事を必死にやってくれるのを、
日本酒飲みながらヨーグルトをデザートに観るなんざ、
けっこうな正月です。
隅田川の川風に吹かれる五月場所もいいが、
でも、そんな時分まで朝青龍が勝ち続けていたら
気分悪いだろうなと思っていた途端、敗れたので、
急遽、行きました。
なんせ、一昨年の九州場所から七場所連続優勝。
当然、一年六場所完全制覇、そして年間八十四勝と
どれも前人未到の大記録を三つ同時に打ち立てた。
その勢いで、「おれは二十五歳、ピークはまだ先、
今年は一年全部、白の九十勝」と、
こっちにとっちゃ、冗談にも洒落にもなんないことを
宣っておいででした。
内心、もう、いっちょ負けるとこを観たいもんだと
出掛けましたが、いやはや強い。
二日目という早くに敗れてかえって引き締まったようです。
早く、上がってきて朝青龍とあたってほしい有望力士を
挙げておきます。
五剣山、貴輝鳳、貴翔馬。そう、すべて貴乃花部屋です。
関ノ山ってのは下関出身ですが、
名前を貴で始まるのに変えたい。
どんなに頑張っても関ノ山じゃねぇ。
外国人勢を倒すのがこの一門になりゃ、
相撲人気も盛りとなるんでしょうが、
今の一番人気は、高見盛でした。
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