1242 ニッポン放送
つかちゃんコラム
塚越孝
塚越孝
column
2月 4日

いい言葉に出合うと、すぐに自分で使えるかどうかは
別にして、嬉しくなりますね。
いつかは、これを使いこなしてみようと、
大事に言葉の抽出に入れます。

「いらっしゃいまし」
店に出ることがめっきり減ったおやじさんが、
「倅が直に河岸から戻りますんで」と、
前掛けを結びながら、軽く膝を折って膝を屈めて言った挨拶。
昼過ぎの鮨屋で聴いた「まし」という言葉に痺れましたね。
この店にはせいぜい通おうと。

これ、江戸言葉というか、東京下町の言葉ですね。
「いらっしゃいませ」だと丁寧だけど堅い。
「まし」と来るから謙る。
いい響きです。
「やっぱし」「ちっとばかし」なんてのも
「り」でない方が柔らかい感じがする。
こういう言葉を成る丈、使おうじゃぁありませんか。

わたくし、永年、喋くりをもって
なりわいとさせてもらっておりますので、
抽出にじゃんじゃん入れて、ぱぱっと使おうと
常に適当な場所をうかがっております。
そこで。
憶えておいででしょうか。
「生える」という言葉。
あの9.11選挙の前日に、短時日におやかし、
おやかされた人の結果が明日、出ると書きました。
すると投書で英語も「r」と「l」の違いで
勃起する、立候補するとほぼ同じように使えると。
面白い言葉です。
含蓄のある言葉です。

さぁ、今こそこの「おやかす」の出番。
おやかしたのは、マスコミ、金融庁、大臣、自民党、
幹事長、若者その他大勢。
おやかされたのは、ホリエモン。
「おやかす」が、こんなにわかりやすく、
ピタッと来る状況は、またとないでしょう。
せいぜい使って、自家薬籠中の言葉と致しましょう。

流行語にもなった「想定外」のやりかたで世間を騒がせ、
テレビに出まくり、知名度を上げちゃ、
本を出しベストセラー、ほんとの狙いは、
ライブドアの株価アップ。

おやかしてる側は、うまく乗せられてたわけで、
ここは、おやかし組は、皆、
等しく頭を垂れるべきでしょう。
わたくしなんざ、おやかす余裕などまるでなく、
口開けてあんぐりの日々、そして不安、疑心暗鬼の日が続いて、
春の柔らかな日差しを感じる頃になって、
ようやく腹を括るという気持ちになったものです。

この間、社を去った人、去る準備をしていた人の顔、
円形脱毛症になった人の顔も思い起こします。
そんなさなか、作家の荻野アンナさんが、
いつもの調子で駄洒落を言いながら、
「あんなこともあったよねーって時がきっと来ますよ」と
明るく励ましてくれたのをよく憶えています。
深刻な時こそ、笑いに助けられます。

おやかされた人は、今頃、小菅の独居房で
何を思っているのでしょうか。
結局は、自分がそうしてたんですよ。

そこで、今一度、あの古川柳を。
しみじみと おえたるをみる ひとりもの




 
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