ラジオ番組を足掛け三十年もやってると、
うそや、創り葉書は簡単に見破ることが出来ます。
わたくしの番組は、メール、携帯電話全盛の時代、
堂々「葉書重視」を謳っています。
もっと言やぁ、お便りだけが頼り、
葉書こそが生命線です。
なんでもかんでもお手軽な時代に、
わざわざ葉書を買ってきて、机や卓袱台、
食卓で思いついたことや物申したいことを
さらさらっと綴り、表へ出てポストを探し、投函する。
この一連の作業に感謝し、時間の関係で、
その大半をボツにせざるを得ないことを詫びながら
葉書選びをしています。
生放送中が一番、楽しいのは理想ですが、
葉書を読んでる時間も同じくらい楽しいものです。
中には、厳しいご意見、批判もありますが、
これまた、楽しく、時には、オンエアーして
当方の間違いを聴取者全体で共有することがあります。
こうして、朝のラジオは絆ができる、
知らぬ同士が葉書を認め、仲良くなる。
ところが、中に、ばれないと思っているのか、
ひどいのがある。
毎週、性懲りもなく書いて来る。
個人情報とやらが小やかましいので伏字にしますが、
緑区××町の千佳子(50)と中区××町の蛍子(55)は同一人物。
消印が同じ。
プレゼント商品目当てに、毎週、同じ字体、
色鉛筆の使い方を少しと文章の書き出しを少し変えただけ。
ご苦労なこってす。
他の番組や余所の局では通用しているんでしょうか。
私には通りません。
ただ、残念ながら二重投稿だけは防ぎようがない。
書くほうの気持ちは、わかります。
書いたら採用されたい。
確率を高めるため、あちこち出す。
あっちでもこっちでも採用され、プレゼントが贈られてくる。
こういう「葉書職人」は、どうぞ、プロの放送作家に
お成りくださいまし。
実際、番組では、呼び水となるような葉書を創ることがあります。
これが、度を過ぎると「創り」から
「やらせ」ということになります。
自然でなくなります。
昔、放送作家が創った葉書を見せられ、
住所が、世田谷区自由が丘になっていたのです。
あそこで遊んでいると、世田谷のような気になるんでしょうが、
本当は目黒区です。
保守合同を成し遂げた三木武吉翁は、
「誠心誠意うそをつけ」と言ったそうですが、
できないならやらないほうがいい。
また、できない時代になったのです。
葉書で書ききれないことを封書でという方もいますが、
先日、分厚い現金書留が届きました。
住所、名前を見ると私の番組の二十年来の常連のご夫人です。
「たいした額ではありませんが、
ラジオチャリティ・ミュージックソンに役立ててください。
名前公表しないで。」と嫋やかな字で綴ってありました。
一万円札で丁度、百枚ありました。
震えました。
手はもちろん琴線も。
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