1242 ニッポン放送
つかちゃんコラム
塚越孝
塚越孝
column
2月25日

ラジオ番組を足掛け三十年もやってると、
うそや、創り葉書は簡単に見破ることが出来ます。
わたくしの番組は、メール、携帯電話全盛の時代、
堂々「葉書重視」を謳っています。
もっと言やぁ、お便りだけが頼り、
葉書こそが生命線です。

なんでもかんでもお手軽な時代に、
わざわざ葉書を買ってきて、机や卓袱台、
食卓で思いついたことや物申したいことを
さらさらっと綴り、表へ出てポストを探し、投函する。
この一連の作業に感謝し、時間の関係で、
その大半をボツにせざるを得ないことを詫びながら
葉書選びをしています。
生放送中が一番、楽しいのは理想ですが、
葉書を読んでる時間も同じくらい楽しいものです。

中には、厳しいご意見、批判もありますが、
これまた、楽しく、時には、オンエアーして
当方の間違いを聴取者全体で共有することがあります。
こうして、朝のラジオは絆ができる、
知らぬ同士が葉書を認め、仲良くなる。

ところが、中に、ばれないと思っているのか、
ひどいのがある。
毎週、性懲りもなく書いて来る。
個人情報とやらが小やかましいので伏字にしますが、
緑区××町の千佳子(50)と中区××町の蛍子(55)は同一人物。
消印が同じ。
プレゼント商品目当てに、毎週、同じ字体、
色鉛筆の使い方を少しと文章の書き出しを少し変えただけ。
ご苦労なこってす。
他の番組や余所の局では通用しているんでしょうか。
私には通りません。

ただ、残念ながら二重投稿だけは防ぎようがない。
書くほうの気持ちは、わかります。
書いたら採用されたい。
確率を高めるため、あちこち出す。
あっちでもこっちでも採用され、プレゼントが贈られてくる。
こういう「葉書職人」は、どうぞ、プロの放送作家に
お成りくださいまし。

実際、番組では、呼び水となるような葉書を創ることがあります。
これが、度を過ぎると「創り」から
「やらせ」ということになります。
自然でなくなります。
昔、放送作家が創った葉書を見せられ、
住所が、世田谷区自由が丘になっていたのです。
あそこで遊んでいると、世田谷のような気になるんでしょうが、
本当は目黒区です。

保守合同を成し遂げた三木武吉翁は、
「誠心誠意うそをつけ」と言ったそうですが、
できないならやらないほうがいい。
また、できない時代になったのです。

葉書で書ききれないことを封書でという方もいますが、
先日、分厚い現金書留が届きました。
住所、名前を見ると私の番組の二十年来の常連のご夫人です。
「たいした額ではありませんが、
ラジオチャリティ・ミュージックソンに役立ててください。
名前公表しないで。」と嫋やかな字で綴ってありました。
一万円札で丁度、百枚ありました。
震えました。
手はもちろん琴線も。




 
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