飛行機に乗ると、座るやいなや、ポリ袋をべりべり破いて、
ヘッドホンを耳につける人がいます。
この先の長い退屈をまぎらわすための好みの音を、
早いとこ見つけて安心したい。
そうすりゃ、安眠できるかもという淡い期待。
見つからない場合がある。
あきらめて寝ちまうしかないが、こないだ七時間ほど、
なまじ聴いたが因果で、腹が立って眠れませんでした。
寄席だとか名人会だとか称しているお笑いチャンネル。
ご案内役は、なんとなく華やかだからってんでしょう、
女性二人。
舞台に立っている歴とした有名芸人で、東西一人ずつ。
これが、芸のつながりもないし、喋りもかみ合わないし、
変に譲り合ったりしてどうにも聴き苦しい。
早く本編に入ってくれと願っても、
早送りも巻き戻しもできゃしない。
三席のみ。
最初は、三遊亭歌之介の創作落語で大爆笑、
対照の妙で、主任はぐっと渋く、入船亭扇橋の古典落語。
この二席は、昨年、浅草演芸ホールで収録と
機内誌に書いてある。
さて、間に挟まりまして、これが問題なんですが漫才。
並びとしちゃ、いいんですが、途中から聴いたら驚くよ。
「ちんたれー、られるんっな」
「けったいな唄や、コラッ、池田さんに文句言うたるぞ」
「だぁれ、それ?」
「総理大臣や」
「知っとんのかいな」
これ、二十年前の漫才ブームの最長老で、
ぼやき漫才で人気を博した
「人生幸朗、生恵幸子」の夫婦コンビ。
それからなんとさらに二十年も遡る
昭和三十年代の録音です。
若いころの幸子さん、唄もうまくて声もいいし、
譲ることなくつっこみ鋭い、
なるほど後に一世を風靡するのは納得と、
珍しいものを聴くことが出来たという点は収穫ですが、
なんで今の落語に昔の漫才なのか。
解説のつもりか、件の女芸人。
「人生師匠はお亡くなりになりましたが、
奥様の幸子師匠は、今も、お元気でご活躍されて
いらっしゃいます」と過剰敬語がなんとも耳障り。
つづく落語家を紹介する東方、女芸人。
「この師匠は、とーきょー、おうめ生まれで」ときたもんだ。
なんで、「とーきょー」と、きちんと言えるのに
「おーめ」と発音できないのでしょうか?
「おうめ」は町娘で「お梅」ちゃんです。
そりゃ、国語や地理のペーパーテストでは、
「青梅」は「おうめ」とかなをふらなきゃバツですが、
音声表現は違うってことぐらい、
高座生活何十年なら分かりそうなもん。
ただ、渡された台本を読んでいるだけだと
こういうことになります。
咀嚼せず喋っている悪い見本です。
こういうお粗末なものを旅の始まりで聴くつらさ、
頭来ることに、帰りもやってました。
責任者出て来ーい。
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