1242 ニッポン放送
つかちゃんコラム
塚越孝
塚越孝
column
3月25日

ミラノからパリへの機内で、
なぁんて言うと世界を股に掛ける国際人のようですが、
わたくし、この歳でヨーロッパ初めてという日本人です。

アメリカ文化圏に比べ、なんと落ち着いた歴史と伝統の国々。
そこかしこにある見事な宗教建築に唖然としたり、
考えさせられたりの連続ですが、ここは万国共通、笑いの話。

アルプスの山越え、国境越えながらミラノーパリ間は
パスポート無しの1時間ちょっと。
天井から小さな画面が降りてきて、
緊急時などの諸説明が済むと、映画が始まった。
わからないだろうからと目を閉じていたら、
前席のイタリア人が、ウワッハッハと声を上げている。
音は出ていない。
ってことは観るだけでわかる短編を続々上映しているようだ。
合間に出てくるタイトルには「GAGS」。
そう、つまり、コント集なのです。

こいつぁ面白い。
思わず私もグワッハッハ。
簡単に言うと、どっきりカメラの類で、
人にいたずらして、困ってる姿を盗み撮りというやつです。

まずは、賑わうゲームセンターのでっかいUFOキャッチャー。
人間同様の大きな人形、実はこれ、人間が扮装しているのですが、
ゲーム機の前に立つ人には大きなピンクのピエロと、
周りに山と積まれたぬいぐるみにしか見えない。

ゲームをスタートさせるとピエロ人形の人間が、
わざとぎこちない動きで一体の人形を手にし、
うまい具合に取り出し口の上まで。
しめた、ゲットと思った瞬間、
ピエロは人形を乱暴に引きちぎる、
なんだこりゃと目を剥いてるとぽとりと落とす。
外に出た人形を取り上げると無残にもバラバラ。

多くの人が行き交い、談笑する空港カフェ。
DFS(免税店)で買った大荷物を抱えた人の中に、
車いすの老人。
肘掛部分を利用して、長ーい絨毯のようなものを載せている。
これがカフェのテーブルと丁度同じ高さで、
車いすで動くたんび、コーヒーやケーキ皿をなぎ倒して行く。

以前、海外に出かけた車いすの人が、
日本では誰もが遠巻きにするけど物乞いの人でも寄ってくる、
それが逆に嬉しかったという話を聞いたことがあるが、
ハンディキャッパーも分け隔てなく
コントに参加させるこのセンス、
さ、あなたは目を細めるか眉を顰めるか。

パリに着いて地下鉄で。
各駅のホームに、巨大な裸婦画。
巨匠・アングルの展覧会の広告のようです。
背中からお尻を観せ振り向いた顔が美しい、
絵画通には有名なオダリスク。
全ての駅にあるので、芸術の都、パリにあって
相当な評価ということが私にも分かります。
乗換駅で、目を奪われました。

背中と尻の中間、実に巧い芸術的な位置に、
大きなサロンパスのような湿布が貼られていたのです。
だぁれも剥がそうとしません。
私は、かみさんの制止を振り切って、
ペンで小さく「Hisamitsu」と書いておきました。




 
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