1242 ニッポン放送
つかちゃんコラム
塚越孝
塚越孝
column
5月13日

「笑点」でしか落語を知らない奴、
「笑点」の落語家以外観たことない奴を軽侮する
落語通というのがいて、近年、増える傾向があります。
困ったもんですが、実を言うとわたくしも、その一人です。
他に落語の番組や落語家が出てくるレギュラー番組が
ほとんどないから、そりゃもう、増える一方です。

NHKに「日本の話芸」ってのがありますが、
こりゃ、なんとか残しましょう、保護しましょう。
学術、研究のためにという勉強家にゃいいが、
落語通や落語好きを喜ばすのは、ちと無理。
まして、落語という小さな座布団の上だけの
小宇宙の素晴らしさを、多くの無知なる同胞に伝えるのは
不可能なことです。

三遊亭圓楽さんの引退がちょっとしたニュースになりましたが、
もし、「笑点」無かりせばと、複雑な気持ちになりました。
幅広い世代がテレビを楽しむ日曜夕方に、
20%を誇る視聴率を取り続けているからこそ、
座布団上、着物で、笑いをとるという
珍しい芸能が保ってきたといえます。

「笑点」が始まったのは、丁度四十年前のこの季節。
番組を企画し、初代の司会者であった立川談志さんは、
スタート直前に著した芸談「現代落語論」で、
このままでは「能」と同じ道を辿ると警鐘を鳴らしている。
なんとか、そうならなかったのは、
「笑点」のお陰とつくづく思う。

長続きした、いや、しているのは何故だろう。
右往左往、右顧左眄しなかったからと診る。
多少はあったが、基本的に落語家を大切にしていることがわかる。
前田武彦さん、三波伸介さんの落語通と目される以外は、
司会は談志に圓楽の二人で都合、三十年やってきたことになる。

去年十月、圓楽さんが脳梗塞のため休んだ際も、
レギュラーの落語家が、代わる代わる司会を務め、
この度、もっとも座りのいい長老、
桂歌丸さんに落ち着いたのは大いに頷ける。
新しい一週間が始まる緊張前夜に、偉大なるマンネリ、
安定、安心をもたらしてくれる。

新メンバ−も決まった。
林家こん平さんが病気で休演してから二年近い。
この間、愛弟子として常に、師匠をネタにし、
世間の関心をつなぎとめた林家たい平さん。
そして、「BS笑点」という、
いわばマイナーリーグで昇格を争って、
たい平さんに先を越された春風亭昇太さんが入ったのは
当然の流れといえる。
これで本当に落ち着いた。
おさまりが良すぎて、逆にだれやしないかと心配になるくらいだが、
新緑の季節に新しくなる「笑点」に、
期待したいってのは嘘になるから、なんだろ。
何も望まないから、皆さん、息長く続けてくださいということか。

必ず、観なきゃと思わないし、観はぐって失敗したとも思わせない、
そんな番組が何よりの魅力です。
ただ、明日だけは別、特別。
圓楽師匠引退、見納めです。




 
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