1242 ニッポン放送
つかちゃんコラム
塚越孝
塚越孝
column
5月27日

一泊が二泊にも三泊にも思える、濃い旅でした。
七時半丁度のあずさ3号。
二日酔いで這うように。
乗り込めば寝ていける、なんとかなると、
フジテレビ近くの大江戸温泉での朗読会「みにら」を観て、
打ち上げで飲みすぎた。
OBの野間脩平さんも入って、語りについて、朗読について談論風発。
喋りに対する思いはラジオもテレビも一緒だと大いに意気投合、
グレート東郷なんて古い洒落をとばしながら杯を重ねました。
次回は出ろよと向坂、てんこ、あべちよ、川端、笠井、藤村さおりアナと
旦那の小林さんにまで促され、「最初は前座で」と酔いに任せて二つ返事、
何処をどう帰ったか所々、記憶がなく、
起床時間まで四時間、バタンキュー。

起きてから慌てて山歩き、防寒の支度、新宿までは遠かった。
でも、信濃大町までは熟睡してたんで近かった。
りんごの受粉をする光景など観ながら上がっていき、
扇沢のトロリーバスが起点。
今じゃ日本で、ここだけだってねトロリーも。

ここで立山黒部アルペンルートの乗車券購入、
山も高いが値段も高い。
宇奈月温泉までの片道が一万とんで百円。
「ぼるねぇ」と同行三人とぼやきながら行きましたが、
黒四ダムの迫力、こんなとこに造った、通した苦労にだんだん、納得。
更に、ぼってるこの会社の名前をよく見てにっこり。
「立山黒部貫光」。
「観」でなくて「貫」。
「貫光」なんて日本語はもちろんない。
掘って掘ってまた掘って、汗と涙とセンスが光るいい社名です。
ケーブルカー、ロープウェーと乗り継いで、絶景・雪の大谷へ。
今年はよく降ったので十八メートルもの雪の壁が。
幾重にも筋がついているのは、降っては止み、雨やら霙、
時には黄砂も降り積もったためと。
まるで洋菓子のよう、「雪のミルフィーユ」。

雪を上からブルドーザーで掘り進んで、
何故、ドンピシャ道路のとこに?
GPSで三センチとたがわないそうです。
で、この掘る手間も料金に含まれてると
トラメガ片手の駅員さんの説明に疑問は完全氷解。
前夜の酒もすっかり抜けて、宇奈月のいい湯につかり、
また、気持ちよく飲んだのです。

翌日、黒部が発祥、世界のYKKを見学。
私は、立山黒部吉田ルートを提唱します。
創業者の吉田忠雄記念室も観れば、運賃、おつりが来ます。
吉田は地元で奉公の後、上京、勤めた工場が倒産。
その会社がチャックを扱っていた縁で戦後、アメリカ人に売りに行ったら、
逆に安くて質のいいファスナーを売りつけられそうに。
昭和二十二年、千二百万円もの莫大な金を興銀から借り、
中古の機械をアメリカから輸入。
その機械をそっくりに作っちゃって大量生産、世界進出。
日本のモノづくりの技術と心がわかります。

もともと、一八九〇年代、ジャドソンというアメリカ人が考案したもので、
巷間言われるようにチャック・ファスナーさんが造ったのではない、
チャックとは巾着、日本語ということもわかった旅でした。




 
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