1242 ニッポン放送
つかちゃんコラム
塚越孝
塚越孝
column
7月 8日

禁句「わて、こんなんだったか」

お上は、いい、いいと、いざなぎ景気を抜くかも
なんて言ってますが、どうだか。
さぁ、出るとこは出て、ある程度出揃っていよいよボーナス商戦、
ここで派手に使えるか。
全体のムードと、個々人の気の持ちようということになりますが、
全体は本誌で掴んで頂いて、わたくしは、
個人のお金に対する意識を考えてみます。

ちょっとだけつきあいのある会社で聴いた嫌な話ですが、
転勤させられた腹いせか、勤務時間中、
人事部長に電話にしてきて、延々と、ボーナスの査定に
文句を並べてたてた男か女か知りませんが、いたんだと。

言って通るなら、上がるなら、言ってもいいが、
そんなことはありえないのに、
言わずにおられないんでしょう、きっと。
いや、そうでない、金額の多寡じゃない、
己の仕事に対する評価の間違いを正したいと言うかもしれない。
しかし、ほんとに仕事のできる奴だったら、
給金のことは言わない。
言うんだったら、予め年俸制を選択すべきで、
そこで交渉すりゃいい。
年俸制のない会社だったら、導入せよという建設的な文句を垂れよ。

実力本位のはずの役者の世界にもあるようで、
一座の中で、誰がどのくらい取ってるのか座長に問う者が。
喜劇王の名を欲しいままにした藤山寛美が放送最後の出演となった、
桂米朝との対談(朝日放送「ここだけの話」・淡交社刊)で
語っている。

誰が何ぼぐらい取っていると聴いて来る。
寛美は、「えぇ、封じ手がおまんねん」と解説している。
〜「あの人があんだけ取っているのに、わて、こんなんだったか」と
言いますやろ。言うとしまへんかいな、お弟子さんの中で。
「ああ、そうか、おまえ、あの男の生活脅かすのか」言いますねん。
〜ええせりふやな。
〜そうですやろ。「あの男が何ぼ取っているのに私がこれか、
あの男が高いと言うのか。そしたら、あの男の給料下げえ言うのか。
あの男とお前の生活は別やないか。
『あの男はこれだけ取ってる』言うのは一言多いのと違うか。
『あの男はあんだけ取っているのに私はこんだけだっか』と言うだけ、
おまえはあの男より値打ちがないねんで。
あの男があんだけ取っているということは結構なことやないか。
喜んだらんかい。
それを盾に取って、おまえ、自分の給料を上げえとは
何ちゅうこと言うね。」と言うて怒った人がおりましたがな。

こうして、後が続かないよう押さえたというのです。
パンピーにおいても、これを自問自答して、
人事部長に電話する前に、自ら抑えたいものですね。
不安定な収入の役者世界ですら、抑制が効いているのに、
このサラリーマンの堪え性の無さは、どうしたことでしょう。

景気が良くても、そうでなくても、
他人の懐が気になって仕方のない時も、
自分に風が吹いているときも、そうでない時も、
同じ機嫌の風車と行きたいもんです。




 
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