1242 ニッポン放送
つかちゃんコラム
塚越孝
塚越孝
column
7月29日

「食えねぇ アホガキの放し飼い」

礼を言われるこっちゃないんですが、
大手スーパーの店員さんにとても感謝されました。
遠出した帰り、助手席のかみさんが看板を見て、
「あのお店、ウチの近所にないから寄ってみない?」。
即合点、ハンドルを切りました。
駐車場が3フロアという大店舗ですが、
まわりは畑にマンションという地域で、
店なんぞないのでこれも立派な小売店なのです。

このスーパー、全国展開をしていて、私の通勤途中、
バス停「フジテレビ前」の2つ手前の停留所にあって、
ずっと気になっていました。
けれど、私が趣味とする糠味噌漬の素材である
茄子、胡瓜、蕪、セロリ、近江生姜などの夏野菜を買うため、
下車する程でもないだろう。
まして、帰りにスーパーのビニール袋ぶら提げてるのを
女子アナにでも見られたらなんて思っていて、行ったことがない。

なんでも創業者は、地方で江戸時代から続く質屋で、
その屋の家訓は「大黒柱に滑車をつけて」なんだと。
つまり、時代と共に動け、客の好みを見て動かせということ。
先日、小欄で、帆立の稚貝について書きましたが、
今度は大帆立。
どうも、酒呑みの習性で魚介売り場に足が向きます。
清潔、整然、静寂すら感じる一角です。
魚を売る所によくある臭さ、騒がしさがまるでない。
そこに現れたちびっこギャング。
別に泥棒、かっぱらいじゃないんですが、もう、振る舞いが
あまりに酷いので張り倒してやろうかと思いました。

学齢前の坊主が、美味そうな、
プリプリした蛸のパックを指で突っついてる。
ピンと張ったラップをつんつんしちゃぁ、
ギャーギャー騒いで喜んでる。
脇に母親と妹の乗った乳母車を押してるおやじ。
「ぼく、だめよ」と、見かねたうちのかみさんが注意した。
両親は知らんぷり。

白い上っ張り、白い帽子の係のお兄ちゃんも心配そうに見てる。
このままだと、ガキの指はラップを破り、蛸に到達する。
「こらっ、やめないかッ」怒りの声を発したのはわたくしです。
そうしたら、母親が「ほうらほうら」と言い、
おやじはというと、いい歳してにこにこしてるだけで、
すみませんでもごめんなさいでもない。
何事もなかったかのように次の売り場に進んでいきました。

怒りの持って行き場のない私とお兄ちゃん、目があいました。
ぺこりと頭を下げて、
「なかなか、お客様ですから、言えないんですよねえ」。
「買わなくても客かぁ」と口には出さず、
私は、帆立を袋に5つ詰めました。
するとお兄ちゃん、「レジにドライアイスがございます。
でも、帆立は鯖と同じで生き腐れと言いますから、
ちょっとお待ちください」と袋を引っ手繰って奥に行き、
細かく砕いた氷をたっぷり、
なおかつ袋に空気を入れて膨らませ、持ってきてくれました。

一個68円なのに、バカ親、アホガキのおかげで、
顧客第一主義の店の姿勢が、よくわかりました。



 
Copyright(c)2004 Nippon Broadcasting System,Inc.All Right Reserved